講演情報
[O04-04]湧水文化を基盤とした地域振興とジオパークの役割
-Mine秋吉台ジオパーク別府弁天池の事例-★招待講演
谷 直子1、*岩本 双葉1 (1.Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)
キーワード:
ジオガストロノミー、Mine秋吉台ジオパーク、別府弁天池、湧水文化、地域資源、持続可能な地域づくり
Mine秋吉台ジオパーク(山口県美祢市)は、日本の西部に位置し、標高約700m以下の山々に囲まれた盆地からなる地域である。この地域は、石灰石・石炭・銅などの鉱物資源が豊富であり、これらの地質的要素が人々の暮らし、産業、文化の基盤を形づくってきた。当ジオパークは、石灰石の「白」、石炭の「黒」、銅の「赤」をテーマカラーに掲げ、地質地形遺産・無形文化遺産・有形文化遺産・自然遺産の研究・保全、教育・交流、持続可能な地域づくりを通じて地域振興につなげている。
美祢市秋芳町別府に位置する別府弁天池は、直線距離で約3.8 km離れた花尾山の山麓を水源とする河原上川を流れる水が、流路にできた吸い込み穴から地下に流れて地下水に混じるものの、断層にせき止められて行き場を無くし、地表に湧き出た湧水地である。池の水は、透明度の高いコバルトブルーを呈している。これは、水中に不純物が少なく、赤色などの波長が長い太陽光が水にほとんど吸収され、青色などの波長が短い太陽光が池底で反射されるからである。
当地は古来より地域の重要な水源であり、湧水を共同で分配するための仕組みとして「井出」と呼ばれる堰により水路が設けられている。井出は、「矢束(やた)」と呼ばれるメダケの束と石の重石により、下流へ流れる水の量を調節している。一部の井出では、現在も地域住民が協働で年に一度「矢束」を作り直す作業を行い、貴重な水資源を公平に共有する仕組みを維持している。このような湧水管理の慣行は、地質的条件と地域社会の生活文化が長期的に適応・共存してきた事例として注目される。また、別府弁天池周辺においては、水神様に奉納される「別府念仏踊」などの地域行事が毎年実施されており、地質環境に根差した文化的活動が次世代へと継承されている点も特筆される。
別府弁天池では昭和期以降、湧水を利用したニジマス養殖が地域経済の一部を担ってきたが、近年は経済性の低下や担い手不足により事業の存続が課題となっていた。別府弁天池を拠点に活動している堅田地区まちづくり協議会の女性部会員らは、Mine秋吉台ジオパークと連携し、地域資源の新たな活用を目的としたジオガストロノミーの実践を進めた。その成果の一つが、湧水で育成されたニジマスと地元野菜を用いた「ますバーガー」であり、ジオパークのテーマカラーに対応する三色バンズを採用するなど、地域の地質的特色を食文化に反映させた試みである。さらに、「ますスティック」「ますフライ」「かき餅」などの関連商品が開発され、地域の特産品として普及が進んでいる。これらの商品群は、山口大学の学生によって名付けられた「Benten Blue」として展開され、別府弁天池の湧水を象徴する青色を基調とする統一的なデザインにより、地域資源と活動の一体感を明確に示している。堅田地区まちづくり協議会は、Mine秋吉台ジオパークパートナーとしてジオパーク活動を進めており、パッケージ等の助成制度を活用した商品パッケージの開発も行っている。
近年は、別府弁天池の水色を視覚的に再現する試みとして、蝶豆(バタフライピー)でお米を青く色付けした“ブルーライスカレー”や、ドリンク等の開発も行われている。これらは地質的背景を感覚的に体験できるジオガストロノミーの新たな展開例であり、地域観光や環境教育の要素も兼ね備えている。また、ニジマスの骨を再利用した唐揚げなど、資源循環を意識した商品開発も検討段階にあり、持続可能な地域産業の構築に寄与している。
別府弁天池における一連の取組は、ジオパークの理念である「地質地形遺産等の保全・教育・持続的活用」を体現するものであり、地質的特性と地域文化的価値を結合した地域振興モデルと言える。湧水の分配制度や伝統行事が今日に至るまで継承されている背景には、地質地形遺産に根差した生活文化の持続力と、地域住民の主体的な関与が存在している。本発表では、Mine秋吉台ジオパークの別府弁天池を事例として、地質環境の特性を活かしたジオガストロノミーの展開と文化的持続性の関係を考察し、地域資源を基盤とする持続可能な地域づくりの方向性について報告する。
美祢市秋芳町別府に位置する別府弁天池は、直線距離で約3.8 km離れた花尾山の山麓を水源とする河原上川を流れる水が、流路にできた吸い込み穴から地下に流れて地下水に混じるものの、断層にせき止められて行き場を無くし、地表に湧き出た湧水地である。池の水は、透明度の高いコバルトブルーを呈している。これは、水中に不純物が少なく、赤色などの波長が長い太陽光が水にほとんど吸収され、青色などの波長が短い太陽光が池底で反射されるからである。
当地は古来より地域の重要な水源であり、湧水を共同で分配するための仕組みとして「井出」と呼ばれる堰により水路が設けられている。井出は、「矢束(やた)」と呼ばれるメダケの束と石の重石により、下流へ流れる水の量を調節している。一部の井出では、現在も地域住民が協働で年に一度「矢束」を作り直す作業を行い、貴重な水資源を公平に共有する仕組みを維持している。このような湧水管理の慣行は、地質的条件と地域社会の生活文化が長期的に適応・共存してきた事例として注目される。また、別府弁天池周辺においては、水神様に奉納される「別府念仏踊」などの地域行事が毎年実施されており、地質環境に根差した文化的活動が次世代へと継承されている点も特筆される。
別府弁天池では昭和期以降、湧水を利用したニジマス養殖が地域経済の一部を担ってきたが、近年は経済性の低下や担い手不足により事業の存続が課題となっていた。別府弁天池を拠点に活動している堅田地区まちづくり協議会の女性部会員らは、Mine秋吉台ジオパークと連携し、地域資源の新たな活用を目的としたジオガストロノミーの実践を進めた。その成果の一つが、湧水で育成されたニジマスと地元野菜を用いた「ますバーガー」であり、ジオパークのテーマカラーに対応する三色バンズを採用するなど、地域の地質的特色を食文化に反映させた試みである。さらに、「ますスティック」「ますフライ」「かき餅」などの関連商品が開発され、地域の特産品として普及が進んでいる。これらの商品群は、山口大学の学生によって名付けられた「Benten Blue」として展開され、別府弁天池の湧水を象徴する青色を基調とする統一的なデザインにより、地域資源と活動の一体感を明確に示している。堅田地区まちづくり協議会は、Mine秋吉台ジオパークパートナーとしてジオパーク活動を進めており、パッケージ等の助成制度を活用した商品パッケージの開発も行っている。
近年は、別府弁天池の水色を視覚的に再現する試みとして、蝶豆(バタフライピー)でお米を青く色付けした“ブルーライスカレー”や、ドリンク等の開発も行われている。これらは地質的背景を感覚的に体験できるジオガストロノミーの新たな展開例であり、地域観光や環境教育の要素も兼ね備えている。また、ニジマスの骨を再利用した唐揚げなど、資源循環を意識した商品開発も検討段階にあり、持続可能な地域産業の構築に寄与している。
別府弁天池における一連の取組は、ジオパークの理念である「地質地形遺産等の保全・教育・持続的活用」を体現するものであり、地質的特性と地域文化的価値を結合した地域振興モデルと言える。湧水の分配制度や伝統行事が今日に至るまで継承されている背景には、地質地形遺産に根差した生活文化の持続力と、地域住民の主体的な関与が存在している。本発表では、Mine秋吉台ジオパークの別府弁天池を事例として、地質環境の特性を活かしたジオガストロノミーの展開と文化的持続性の関係を考察し、地域資源を基盤とする持続可能な地域づくりの方向性について報告する。
