講演情報

[O04-06]伝統食材や食文化を取り巻く多様な景観保全プログラムの連携可能性~徳島県三好地域のGIAHSとジオパークの例~★招待講演

*殿谷 梓1、大和 勉2、竹谷 大2、内藤 直樹3 (1.三好市役所ジオパーク推進室、2.三好市役所農林政策課、3.徳島大学)

キーワード:

景観保全、農村振興

本発表の目的は,地域に受け継がれてきた伝統食材および食文化の保護・継承に関わる多様な保護プログラムの連携の可能性について考察することにある.そのために,徳島県三好地域におけるジオパークと世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)保全に関する共通の課題と連携の取り組みを明らかする.
GIAHSは,国連食糧農業機関(FAO)により,伝統的な農業システムとそれに付随する食文化,知識,生物多様性および景観を一体的に動的保全し,将来世代へ継承することを目的として2002年に開始された国際的プログラムである.日本国内には,GIAHSサイト(proposed siteを含む)とエリアが重複するジオパークが8か所存在している(梶原,2014).
三好ジオパーク地域は,GIAHSサイト「にし阿波の傾斜地農耕システム」と一部が重複している.本地域では,GIAHSの取り組みが先行して展開されており,2013年に活動が開始され,2018年にGIAHS認定を受けた.一方,ジオパークの取り組みは2017年に開始され,2024年に日本ジオパークネットワーク(JGN)の認定を受けている.両プログラムに共通する価値および保全対象として,四国山地および讃岐山脈の緩斜面に形成された集落における傾斜地農耕の営み,傾斜地環境の中で継承されてきた伝統食や食材,ならびに特徴的な生態系を含む農村景観が挙げられる.
これまでGIAHSにおける「傾斜地」の価値づけは,傾斜地畑の勾配と農具の形態,作物選択との関係性など,人々の営みと農業技術の工夫に着目して進められてきた(北野・内藤, 2020).これに対しジオパークの枠組みでは,同じ傾斜地を大地の形成過程や地質・地形の特徴といった自然科学的視点から捉え直し,地形形成史と人間活動との関係性を明らかにする取り組みが進められている(内藤・殿谷, 2023).近年では,両プログラムが有する異なる価値づけの視点を相互に補完・融合させ,巡検や地域内学習,行政・関係者向け視察ツアーなどにおいて,統合的な地域理解を促す解説や学習機会の提供が行われている.
本発表では,これまでの連携活動の実践を踏まえ,GIAHSおよびジオパークの運営に関わる現場スタッフや両プログラムに関与する生産者が,それぞれの制度の価値や役割ならびに運営上の課題をどのように認識しているのかを整理する.その上で,伝統食材や伝統食の保護・継承をはじめ,担い手不足や地域資源の活用といった地域共通の課題に対し,GIAHSとジオパークがどのように連携し,シナジーを生み出し得るのかについて議論することを目的とする.

梶原宏之(2014)類似制度との比較からみたジオパークと地理学の役割. E-journal GEO. Vol.9(1).
北野真帆・内藤直樹(2020)人間と環境のインターフェースとしての農具-世界農業遺産・にし阿波の傾斜地農耕システムの事例から. 生態人類学ニュースレター.26 : 6-2.
内藤直樹・殿谷梓(2023)崩れ続ける大地での暮らし-徳島県西部における産業資本主義の跡地としての山村景観の力学/動態. 文化人類学.vol.88(2).