講演情報
[O05-04]地質学者のように読む神話・伝承−DEEP TIMEとSHALLOW TIMEをつなぐ物語-★招待講演
*天野 一男1 (1.東京大学空間情報科学研究センター)
キーワード:
地球神話学、地質学者、ディープタイム、シャロウタイム
本発表では,「気が遠くなるほど長い地球の歴史」と「私たち人間の比較的短い歴史」をつなぐ新しい見方としての地球神話学を紹介し,神話や伝承が私たちの暮らしや未来の社会とどのように関わっているのかを考える.
地球は約46億年をかけて姿を変えてきた.大陸の移動,山の隆起,海の拡大,火山噴火,氷河の前進と後退などが繰り返されてきたこの長い時間を,地質学ではDEEP TIMEと呼ぶ.一方,人類が文字を持ち,都市を築き,農業や科学技術を発展させてきた歴史は,地球全体から見ればほんの一瞬である.それでも人類はこの短い時間の中で地球環境に大きな影響を与えてきた.このギャップをつなぐのがBig Historyという考え方である.Big Historyは,宇宙の誕生から地球形成,生命進化,人類出現,文明発展までを一つの連続した物語としてとらえ,宇宙と地球の物語の一部としての人類史を描こうとする.この視点を土台に,長い地球の歴史を人々がどのように感じ,語り,記憶してきたのかを神話や伝承から読み解く.
世界各地には地震,洪水,火山,津波,山への信仰などに関する物語が数多く残る.これらは単なる昔話ではなく,実際の災害や環境変化が言葉や物語の形で受け継がれてきた可能性が高い.「山が怒った」という表現は噴火の記憶かもしれず,「海が村を飲み込んだ」という語りは津波の経験かもしれない.文字がなかった時代,人々は物語によって災害の教訓を次世代へ伝えてきたのである.地質学者の目でこうした神話を読み直す.地形や地層,火山の痕跡,津波の到達地形を調べることで,その土地に特定の物語が生まれた理由が見えてくる.
これは現代の課題とも深く結びつく.例えば,原発の放射性廃棄物の地層処分は10万年以上の安全管理が求められるが,私たちの制度や記録はそこまで続かない.遠い未来の人々に「ここは危険だ」と伝えるためには,標識や文書だけでなく,景観づくりや物語,儀式,言い伝えといった文化的手段も考える必要がある.過去の社会が災害をどう語り継いできたかは,未来への重要なヒントになる.また,日本各地のジオパークは地球の長い歴史を体感できる場所である.そこでは美しい景色や地形だけでなく,噴火と共に生きてきた人々の暮らしや物語も紹介される.ジオパークはDEEP TIMEと人間の生活(SHALLOW TIME)を結びつける学びの場である.こうした考えは,日本地質学会編『大地と人の物語』にも通じるものであり,地球の変化と人間の生き方が切り離せないことを示している.
地球神話学は専門家だけのものではない.私たち一人ひとりが自分の住む土地の物語を知り,大地の歴史を想像することが,地球との新しい関係づくりにつながる.DEEP TIMEの中で人類がどう生きてきたかを理解することは,防災,環境保護,エネルギー問題を考える大きな力になる.本発表は,Big History,神話,放射性廃棄物,ジオパークを「大地と人の物語」という一本の糸で結び,私たちの過去・現在・未来を共に考えるきっかけを提供したい.
地球は約46億年をかけて姿を変えてきた.大陸の移動,山の隆起,海の拡大,火山噴火,氷河の前進と後退などが繰り返されてきたこの長い時間を,地質学ではDEEP TIMEと呼ぶ.一方,人類が文字を持ち,都市を築き,農業や科学技術を発展させてきた歴史は,地球全体から見ればほんの一瞬である.それでも人類はこの短い時間の中で地球環境に大きな影響を与えてきた.このギャップをつなぐのがBig Historyという考え方である.Big Historyは,宇宙の誕生から地球形成,生命進化,人類出現,文明発展までを一つの連続した物語としてとらえ,宇宙と地球の物語の一部としての人類史を描こうとする.この視点を土台に,長い地球の歴史を人々がどのように感じ,語り,記憶してきたのかを神話や伝承から読み解く.
世界各地には地震,洪水,火山,津波,山への信仰などに関する物語が数多く残る.これらは単なる昔話ではなく,実際の災害や環境変化が言葉や物語の形で受け継がれてきた可能性が高い.「山が怒った」という表現は噴火の記憶かもしれず,「海が村を飲み込んだ」という語りは津波の経験かもしれない.文字がなかった時代,人々は物語によって災害の教訓を次世代へ伝えてきたのである.地質学者の目でこうした神話を読み直す.地形や地層,火山の痕跡,津波の到達地形を調べることで,その土地に特定の物語が生まれた理由が見えてくる.
これは現代の課題とも深く結びつく.例えば,原発の放射性廃棄物の地層処分は10万年以上の安全管理が求められるが,私たちの制度や記録はそこまで続かない.遠い未来の人々に「ここは危険だ」と伝えるためには,標識や文書だけでなく,景観づくりや物語,儀式,言い伝えといった文化的手段も考える必要がある.過去の社会が災害をどう語り継いできたかは,未来への重要なヒントになる.また,日本各地のジオパークは地球の長い歴史を体感できる場所である.そこでは美しい景色や地形だけでなく,噴火と共に生きてきた人々の暮らしや物語も紹介される.ジオパークはDEEP TIMEと人間の生活(SHALLOW TIME)を結びつける学びの場である.こうした考えは,日本地質学会編『大地と人の物語』にも通じるものであり,地球の変化と人間の生き方が切り離せないことを示している.
地球神話学は専門家だけのものではない.私たち一人ひとりが自分の住む土地の物語を知り,大地の歴史を想像することが,地球との新しい関係づくりにつながる.DEEP TIMEの中で人類がどう生きてきたかを理解することは,防災,環境保護,エネルギー問題を考える大きな力になる.本発表は,Big History,神話,放射性廃棄物,ジオパークを「大地と人の物語」という一本の糸で結び,私たちの過去・現在・未来を共に考えるきっかけを提供したい.
