講演情報

[O09-P07]2液性発泡ウレタンを用いた火山噴火モデルの開発: 媒体密度の制御によるマグマ貫入から成層圏傘雲、カルデラ形成の再現★招待講演

*千葉 達朗1、杉下 七海1、藤田 浩司1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:

2液性発泡ウレタン、媒体密度の制御、噴火ダイナミクス、カルデラ形成と脱ガス

学校教育における火山分野の実習では、地下の不可視な現象や、時空スケールの大きな噴火ダイナミクスを生徒に直感的に理解させることが課題となっている。従来の食材やワックスを用いた実験手法では、マグマの「発泡による膨張」と「固化による組織形成」を同時に再現することは困難であった。本研究では、媒体密度の調整と気泡の連結性を制御することで、地下のマグマだまり形成からプリニー式噴火における傘雲形成、さらには脱ガスに伴うカルデラ形成までを統一的に再現する実験系を構築した。安価な市販品を用いた「キッチン火山学」のアプローチでありながら、流体力学的・地質学的現象を忠実に再現する手法とその物理的解釈について報告する。

1. 実験原理と基本構成
実験には、2液性硬質発泡ウレタンを使用した。容器内で、ポリオール(主剤)とイソシアネート(硬化剤)の2液を混合すると、約1分で発泡を開始し、数分で20倍~30倍に膨張・固化する。火道の再現には、市販の磁器製一輪挿しを使用した。この器は胴部が広く首にかけて徐々に狭くなるため、マグマだまりから火道への収束による流速増加を再現するのに適した形であり、発泡過程にあるウレタンを効率的に噴出する。その他、実験器材はプラスチックカップやバケツなど、入手が容易なものとした。

2. 媒体密度の制御による噴火ダイナミクスの再現
2種の原液を混合・攪拌した一輪挿し容器を、反応開始直後に異なる密度の媒体(様々な種類の粉体)底部に設置し、みかけの密度差による浮力がマグマの挙動に与える影響を比較した。
(1) 空気中: ウレタンのみかけ密度は空気より大きいため、瓶口から噴出したウレタンは直ちに下方へ垂下し、流動しながら発泡を継続することで、溶岩流に酷似した形態で固化した。
(2) 低密度媒体(スチロールビーズ): ウレタンとスチロールビーズの見かけ密度が同程度のため、ウレタンは浮力を得られず、瓶の出口付近で球体として成長、貫入岩体(マグマだまり)のように固化した。
(3) 高密度媒体(猫のトイレの砂): ベントナイト粒子はみかけ密度が大きく、ウレタンは浮力を得て媒体を押し退けて垂直上昇し、表面に溶岩ドーム状の塊を形成した。
(4) 水中: 水を満たしたバケツの底に一輪挿しを固定。水との密度差により、ウレタンは細い垂直なパイプ流となって急上昇する。水面(密度境界面)に達すると上昇が停止し、水平方向に円盤状に拡大した。これは、プリにアン噴火において噴煙柱が成層圏に達して傘雲を形成するプロセスを再現している。

3. ワックス添加による気泡連結とカルデラ形成
透明なプラスチックカップ内で、混合済みのウレタン原液にさらにベルトワックス(松脂等を含む滑り止め剤)を添加すると、通常の「独立気泡」構造が不安定となり、気泡の連結が促進される。結果、連結・拡大した気泡からが、自重を支えきれずに崩壊(陥没)した。これは、大規模噴火に伴うマグマだまりの減圧と、カルデラの崩壊現象をシミュレートしているように見える。

4. 教育効果と今後の展望
本実験は、物理的な「密度差」と化学的な「発泡・脱ガス」という二つの側面から、火山の形成過程(マグマの発泡、上昇、貫入・噴火・陥没)を連続的に提示できる。また、固化後のウレタンは、パン切包丁などで容易に切断可能で、横断面や縦断面の観察、スライス薄片の観察が可能であり、火山の内部構造や組織形成の理解に寄与する。なお、一輪挿しの出口をコルク栓で閉塞することで、爆発的噴火・火山弾の生成の再現も可能だが、実施には十分な空間と安全管理が必要である。