講演情報

[O11-01]西之島が見せるダイナミックな地質現象を海から探る

*吉田 健太1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:

西之島はどのように成長してきたのか、小笠原諸島が持つ地質的な”特異性”、海底火山をどのように調査するのか、大陸地殻が生まれる場

東京から南に伸びる伊豆-小笠原-マリアナ弧は太平洋プレートの沈み込みによって形成される火山フロントであり、数多くの火山島・海底火山が存在している。西之島は東京から約900km離れたところにある火山島であり、最寄りの島である父島列島からも130km程度離れている。
1973年に観測史上はじめて西之島の火山活動が記録された。この火山活動では沖合600mで海底噴火が生じ、溶岩流出により新たな島が形成されたが、やがて元々あった島と接続し一つの西之島となるとともに、活動は1年程度で終息した。2013年に約40年ぶりに活動を再開した西之島は、ふたたび沖合で海底噴火を起こした。このときも溶岩流出により新たな島が形成され、元々あった島と接続すると陸地部分を拡大させていった。2013年からの噴火活動は活動期と休止期を繰り返し、第一期(2013-2015)、第二期(2017)、第三期(2018)、第四期(2019-2020)が主要な活動期として認識されている。第一期から第四期の途中までは比較的穏やかな溶岩流出を起こしていたが、第四期活動の途中、2020年6月に爆発的な噴火が生じ、黒色の噴煙とともに大量の火山灰を放出するバイオレント・ストロンボリ式噴火へと移行した(柳澤ほか、2020)。
1973年以前の旧島、1973-74年噴出物、第一期から第四期途中までの噴出物は、SiO2量が58-60%程度の安山岩で特徴づけられる(小坂,1991; Maeno et al., 2021)。安山岩は大陸地殻の主要な構成物質であり、西之島の地下は海洋地殻が薄いため、マグマが浅いところで形成されて、安山岩の組成になると考えられている。すなわち、西之島のような薄い地殻の上にある海洋火山こそが、大陸地殻が生まれる場所であるという考え方である(Tamura et al., 2016; 2019)。一方で、2020年6月の爆発的な噴火では、噴出物の化学的特徴も大きく異なっていた。主要な噴出物はSiO2量が55%程度の玄武岩質安山岩であり、JAMSTECが噴火直後の2020年12月に実施した海底調査ではSiO2量が64%程度のデイサイトも噴出していたことがわかった(Tamura et al., 2023)。このようにSiO2の少ないマグマと多いマグマの2種類が同時に噴出しているような火山活動はバイモーダル火山活動と呼ばれ、伊豆小笠原弧の海底で見られる巨大なカルデラを形成した大噴火でも見られる特徴である。西之島が今後再び安山岩溶岩を流出する活動に戻るのか、或いは巨大カルデラを形成する破局的噴火へと移行するのかは、地質学的一級課題と言える。
西之島の玄武岩質マグマの活動は2020年の噴火が初めてではなく、周囲の海底調査ではかなり古い時期に噴出しただろう玄武岩が見つかっている(Tamura et al., 2019)。海底広域研究船「かいめい」を用いたKM25-09調査航海では、西之島の北斜面にある側火山から、かんらん石や単斜輝石の結晶を多く含むアンカラマイトと呼ばれる岩石を発見した。アンカラマイトは、西之島以外では、西之島の北約50kmにある土曜海山と呼ばれる海底火山やニュージーランド北東のキブルホワイト海底火山など、限られた場所でしか算出報告がない。西之島で採取されたアンカラマイトは、Mg# (=Mg/[Mg+Fe2+]×100) ~95、Cr# (=Cr/[Cr+Al]×100) ~28の未分化な単斜輝石を含んでおり、マントルから直接出来たマグマの情報を保持している可能性が高い。本発表では、近年の海底調査で見え始めた西之島の過去の活動を踏まえつつ、西之島が持つ地質学的な魅力を紹介する。