講演情報

[O12-P103]スマート望遠鏡による太陽撮影から求めた黒点面積比と宇宙天気予報の各現象との比較

*百瀬 快渡1、*植草 治継1、*小篠 太一1、*重本 直太郎1 (1. 本郷高等学校地学部)

キーワード:

黒点相対数、黒点面積比、高エネルギー粒子、太陽風

1.研究の背景と目的
2025年7月から太陽活動が活発になり太陽フレア活動が極大期に突入した。太陽黒点数は約11年の周期をもって変化しその最大発生時期が極大期、最小発生時期が極小期と呼ばれている。太陽極大期には太陽フレアが頻発しデリンジャー現象などの生活に支障が出る恐れがある。黒点数との各太陽現象の相関を調べ、生活に影響を及ぼす可能性を考察することにした。また、同じような太陽関連の先行研究を基に、独自の測定方法を用いて黒点観測をすることにした。
2.観測方法
2026年1月より、スマート望遠鏡(ZWO-SeestarS30)で毎週土曜日の放課後に太陽の撮影を始めた(写真1、写真2)。光球に対する黒点の面積比を求めるため、画像処理ソフト(ImageJ)を使用したが、二値化する際の誤差が大きいため、手作業で求めることにした。画像をグレースケールにして取り込み、直径25㎝の円に光球の淵を合わせ、B4用紙にプリントアウトする(図1)。直径25㎝の太陽の光球面にある黒点を1㎜方眼のテクニカルペーパーを使い、面積を測定する(写真3)。面積は1㎜×1㎜を1マス目とし、ほぼ、完全に黒い場合のマス目を1とし、不完全なマス目を1/2として数える。個人差がでるので、同じ作業を3回(3名で)行い、平均を求めた。求めた黒点の面積比に対して、宇宙天気予報から得られる太陽黒点相対数(図2)、太陽X線、プロトン現象(図3)、高エネルギー電子影響(図4)、地磁気データ、放射線帯電子、地磁気嵐、デリンジャー現象の各項目と比較した。
3.結果
集計した結果面積比は図5のとおりになった。球形の太陽を観測地点から見た時の円の面積を太陽の見かけの面積とし、黒点面積との比率を折れ線で示した。図5から見かけの太陽面積に対する黒点面積の割合(以下黒点面積比とする)は約0.003~0.07で推移した。また、図5における最も黒点面積比が高かった2月6日について図4と比較した際、図4において高エネルギー電子のフルエンスが通常の10分の1と極端に下がっていた。これ以外にも図3と図4を比較した際、黒点相対数が低かった2月24・25日では高エネルギープロトンが0.2RFU(太陽からの高エネルギープロトンの強度を示す単位)程度増加した。また、黒点相対数に対する黒点面積比の相関関係を表した図6から相関係数r=0.0003と正の相関を示した。
4.考察
地球の近くには高エネルギー粒子が地球の磁場に引き込まれ停留している領域があり放射線帯と呼ばれている。放射線は地球の磁場の影響でトーラス上に分布し内帯と外帯に分かれており、図4は放射線帯中を通過している2つの人工衛星から測定された高エネルギーの量を示している。また放射線帯の電子フラックスは不安定であるため、太陽風などの影響を受けて増減したり消滅したりしやすい。黒点面積比が顕著に高くなった2月6日に図4の高エネルギー電子影響において高エネルギープロトンが減少したことは何らかの作用が高エネルギーに働き消滅した恐れがある。ここで図7から2月4日から5日にかけて太陽風の磁場の強度や速度が増加しておりこれが2,3日かけて放射線帯の高エネルギー粒子に影響し減少したと考えられる。
この考察から実際には2月6日に増加した黒点面積比が地球の放射線帯の高エネルギー粒子の減少に直接的な関係はなく2,3日前の太陽風の活性化が影響を及ぼしたと考えられる。黒点観察は1 週間おきに行っておりその日は黒点観察をしなかったため過去の宇宙天気予報を調べ3日前の2月3日に黒点相対数が169でピークに達していることが分かった(図8)。
5. 結論
太陽風の活性化とともに黒点相対数は増加し高エネルギー粒子の減少につながっている。また、黒点面積比も黒点相対数と正の相関を示しているため間接的な高エネルギー粒子減少につながっている。今後の展望として今回失敗した太陽光球の画像のデジタル化を行うことで黒点の濃さを調べ太陽の各現象との相関を調べる。また黒点相対数や面積比ではなく一つの黒点の形成過程や発達過程を観測することでより詳しい黒点の運動を研究したい。