講演情報

[O12-P108]外来種の浮遊植生検出:リモートセンシング追跡システム「WARN」

*伊藤 華玲1、*菅原 佳音1、*廖 是暁1 (1. 渋谷教育学園幕張高等学校)

キーワード:

ナガエツルノゲイトウ、Sentinel衛星データ、Google Earth Engine (GEE)

1.研究背景と研究目的

本レポートの目的は、外来水生植物ナガエツルノゲイトウの早期発見に向けて、Google Earth Engine(GEE)とSentinel衛星データを用いた監視手法の有効性を検討することで ある。ナガエツルノゲイトウを始めとした外来水生植物は生態系に害を与え、水質の悪化をもたらす。また、増殖が速いため、早期発見・駆除が求められる。従来の現地調査や目視確認は広域・継続的な監視に不きであるため、より効率的な方法が必要とされている。先行研究として、Sheffield et al. (2022) は航空画像を用いてナガエツルノイトウを有効に検出できることを示したが、航空写真は高精細である一方、広域かつ頻繁な観測には費用面の制約がある。また、Shinohara & Kurita (2025) は衛星データによる可視化の可能性を示したが、衛星ベースの監視はまだ大規模運用や自動警報システムとしては十分普及していない。そこで本研究は、Sentinel-2とNDVI解析を用いて、どの程度の空間スケールで浮遊植生を安定的に検出できるかを明らかにしようとした。

2.研究方法

主にSentinel-2の光学画像を用い、補助的にSentinel-1のSARデータも取得した。解析対象期間は、ナガエツルノゲイトウ確認前の2017年6〜9月を基準期間、確認が報告された2018年6〜9月を事例期間とした。植生判別にはNDVI、水域抽出にはMNDWIを用い、まず水域マスクによって陸上植生を除外したうえで、NDVI閾値、水域への隣接条件、連結ピクセル数3以上という条件を組み合わせ、群落状の水生植生を抽出した。さらに2017年と2018年を比較し、2018年に新たに出現した植生域を抽出したほか、2015〜2019年のNDVI時系列解析によって異常増加の時期も検討した。本システムの検知性能を評価する指標として、実際には水生植物が繁茂していないにもかかわらず陽性判定を下してしまう“False Positive”と、実際には水生植物が繁茂しているにもかかわらず陰性判定を下してしまう“False Negative”を用いる。この指標で一定の精度を保ちながら、システムが検知できる最小の繁茂面積を模索することが、本研究のゴールとなる。調査結果は千葉情報マップに一般公開されている実測データと随時照合して用いた。

3.研究結果

2018年には、2017年と比べて水面植生が明確に増加しており、高NDVI値を示す新規パッチが広範囲で確認された。とくに連結条件を導入したことで、孤立ピクセルではなく群落単位で植生を捉えられるようになり、ノイズも大きく減少した。また、NDVI時系列解析では2018年夏に顕著な上昇がみられ、衛星画像で確認された空間的拡大と整合的であった。以上から、特定地域の特定期間おいて、衛星データのみでも水生植物群落の形成・拡大を自動的に検知できることが示された。


4.考察と今後の課題

考察では、水域に解析対象を限定すること、そしてNDVIとMNDWIを併用することが誤検出の抑制に有効であるとされた。さらに、水域への隣接性や最小クラスタサイズなどの空間条件を加えることで、検出の安定性が高まることも示された。一方で、水位変動、濁度や浮遊物質の影響、他の水生植物との識別困難、Sentinel-2の10m解像度では初期段階の小規模群落を見落としうる点など、限界も残る。今後は、他地域への適用による一般化可能性の検証、群落拡大モデルの導入、ドローン画像や商用衛星など高解像度データの活用、機械学習用訓練データの構築を進めることで、最終的には自動通知機能を備えたリモートセンシング追跡システム(WARN)へ発展させることが期待される。

文献情報

Sheffield, Kathryn J., et al. “Detection of Aquatic Alligator Weed (Alternanthera philoxeroides) from Aerial Imagery Using Random Forest Classification.” Remote Sensing, 14(11), 2674, 2022年6月2日, https://doi.org/10.3390/rs14112674.

篠原健吾・栗田英治(2025):衛星データを用いた千葉県八間川における侵略的外来生物ナガエツルノゲイトウの繁茂状況の可視化,農業農村工学会大会講演会講演要旨集,第74回,講演番号[3-35(P)],pp.255–256.