講演情報
[O12-P109]台風の降水量における衛星データと地上観測データ間の差の要因の考察 ―台風15号(2019年)に基づく分析―
*竹内 周音1、林 楽洋1、山本 菜摘1、品川 航輝1 (1. 渋谷教育学園幕張高等学校)
キーワード:
気象、衛星
1.背景と目的
2019年に発生した台風15号(FAXAI)は関東地方に大きな被害をもたらし、私の祖母も被害を受けた。この経験をきっかけに、気象観測や予測に興味を持った。中でも、地上に観測基地がない地域でも広範囲の観測が可能な気象衛星に着目し、特に台風観測における精度に関心を持った。一方で、衛星データは台風や線状降水帯のように短時間で強い降水が発生する現象に対して精度が低下する可能性が指摘されている。そこで本研究では、そのような状況において気象衛星データがどの程度の精度で降水を捉えられるのかを明らかにするとともに、精度向上の方法について検討することを目的としている。
2.データおよび解析方法
本研究では、地上データとしてアメダス、衛星データとしてGSMaPを用い、降水量の比較を行った。具体的には、単位時間当たりの降水量および台風通過期間における総降水量について両者を比較した。
3.結果
台風通過時間帯(9月8日10時〜9月9日24時)におけるGSMaPとアメダスの総降水量分布図を比較した。その結果、台風の進路から約30 km離れた領域、すなわち台風の右側(アイウォール通過域)において、両データ間の総降水量の差が顕著に見られた。そこで、両データ間の差が特に大きかった館山、牛久、東庄の3地点を対象に、1時間降水量の時系列変化を示した。その結果、台風の右側に位置し、アイウォールが通過したと考えられる時間帯において、両データ間の差が大きくなる傾向が確認された。
4.考察
GSMaPと地上観測の差が生じる要因として、まず分解能の影響が考えられる。GSMaPは約11km×11kmの格子ごとに平均降水量を算出するため、狭い範囲で局所的に強い雨が降った場合、その値は周囲と平均化され、「ぼやけた」形で表現される。このため、台風の「目」や「目の壁」のように、短い距離で降水量が大きく変化する現象では、地点観測と面平均との間に大きな差が生じると考えられる。さらに、全体的な差が生じる要因として、次の2点が挙げられる。1つ目は、センサーの性質による誤認である。GSMaPはマイクロ波放射計などを用いて雲中の雲水や氷粒子を検出して降水量を推定している。そのため、水蒸気量の多い領域や放射特性の影響により、実際よりも強い降水として推定される可能性がある。図3の台風通過時の積算水蒸気量分布と図1右のGSMaP降水量分布を比較すると、完全に一致するわけではないものの、ある程度の対応関係が見られる。2つ目は、地形の影響が十分に反映されていない点である。アメダスは地上観測であり、山地や海岸線などの地形による降水の変化を直接捉えることができる。一方で、GSMaPは衛星による上空観測であるため、地形に起因する局地的な降水分布の違いを細かく表現することが難しいと考えられる。千葉県は比較的平坦な地形であるが、図4と図1左のアメダスの降水量分布を比較すると、両者には一定の対応が見られる。
5.今後の方針
今後の方針として、GSMaPの海上における降水データの妥当性を検証するため、京都大学生存圏研究所が提供するGPVレーダーの合成レーダーデータを用いて、降水分布図の作成を進めている。これにより、アメダスでは観測できない海上においても、GSMaPとの比較が可能になると考えられる。また、GSMaPでは雲の移動に伴うドリフト効果については補正が行われているが、雨粒が降下する過程で風に流される影響(降水粒子の移流)については十分に考慮されていない。この影響は通常の降水では小さいと考えられるが、台風のような強風時には無視できない可能性がある。
そこで、風による雨粒の移流を考慮した補正を行うプログラムの作成途中である。
2019年に発生した台風15号(FAXAI)は関東地方に大きな被害をもたらし、私の祖母も被害を受けた。この経験をきっかけに、気象観測や予測に興味を持った。中でも、地上に観測基地がない地域でも広範囲の観測が可能な気象衛星に着目し、特に台風観測における精度に関心を持った。一方で、衛星データは台風や線状降水帯のように短時間で強い降水が発生する現象に対して精度が低下する可能性が指摘されている。そこで本研究では、そのような状況において気象衛星データがどの程度の精度で降水を捉えられるのかを明らかにするとともに、精度向上の方法について検討することを目的としている。
2.データおよび解析方法
本研究では、地上データとしてアメダス、衛星データとしてGSMaPを用い、降水量の比較を行った。具体的には、単位時間当たりの降水量および台風通過期間における総降水量について両者を比較した。
3.結果
台風通過時間帯(9月8日10時〜9月9日24時)におけるGSMaPとアメダスの総降水量分布図を比較した。その結果、台風の進路から約30 km離れた領域、すなわち台風の右側(アイウォール通過域)において、両データ間の総降水量の差が顕著に見られた。そこで、両データ間の差が特に大きかった館山、牛久、東庄の3地点を対象に、1時間降水量の時系列変化を示した。その結果、台風の右側に位置し、アイウォールが通過したと考えられる時間帯において、両データ間の差が大きくなる傾向が確認された。
4.考察
GSMaPと地上観測の差が生じる要因として、まず分解能の影響が考えられる。GSMaPは約11km×11kmの格子ごとに平均降水量を算出するため、狭い範囲で局所的に強い雨が降った場合、その値は周囲と平均化され、「ぼやけた」形で表現される。このため、台風の「目」や「目の壁」のように、短い距離で降水量が大きく変化する現象では、地点観測と面平均との間に大きな差が生じると考えられる。さらに、全体的な差が生じる要因として、次の2点が挙げられる。1つ目は、センサーの性質による誤認である。GSMaPはマイクロ波放射計などを用いて雲中の雲水や氷粒子を検出して降水量を推定している。そのため、水蒸気量の多い領域や放射特性の影響により、実際よりも強い降水として推定される可能性がある。図3の台風通過時の積算水蒸気量分布と図1右のGSMaP降水量分布を比較すると、完全に一致するわけではないものの、ある程度の対応関係が見られる。2つ目は、地形の影響が十分に反映されていない点である。アメダスは地上観測であり、山地や海岸線などの地形による降水の変化を直接捉えることができる。一方で、GSMaPは衛星による上空観測であるため、地形に起因する局地的な降水分布の違いを細かく表現することが難しいと考えられる。千葉県は比較的平坦な地形であるが、図4と図1左のアメダスの降水量分布を比較すると、両者には一定の対応が見られる。
5.今後の方針
今後の方針として、GSMaPの海上における降水データの妥当性を検証するため、京都大学生存圏研究所が提供するGPVレーダーの合成レーダーデータを用いて、降水分布図の作成を進めている。これにより、アメダスでは観測できない海上においても、GSMaPとの比較が可能になると考えられる。また、GSMaPでは雲の移動に伴うドリフト効果については補正が行われているが、雨粒が降下する過程で風に流される影響(降水粒子の移流)については十分に考慮されていない。この影響は通常の降水では小さいと考えられるが、台風のような強風時には無視できない可能性がある。
そこで、風による雨粒の移流を考慮した補正を行うプログラムの作成途中である。
