講演情報
[O12-P14]2025年5月の桜島南岳噴火活動の活発化に先行する温泉水の成分変化
*関 爽太朗1、*川路 眞愛1 (1. 学校法人池田学園池田高等学校)
キーワード:
温泉水中の火山ガス成分、マグマの発泡、B型地震回数
1.研究の目的
桜島においてもマグマの貫入により火山ガスが温泉水に溶ける可能性が高く,太田1),井口ら2)は桜島の温泉水の火山ガス成分変動が火山活動に対応すると報告している。
一方,先行文献3)4)の文献から,Fig.1の様に火山体の深い位置でマグマからCO2やSO2が揮発し,火口直下のマグマ溜りでは水と塩素など脱ガスし,噴火するとしている。
そこで,桜島でも同様のモデルを仮定し,火山活動の予測を目指して温泉水中の火山ガス成分観測を始めた。
2.研究方法
2-1 温泉水・海水の測定方法
2024年5月より火口の南の有村温泉(2025年4月閉館,以後古里温泉)と北の白浜温泉で温泉水を,更に両温泉の近くの港で海水を毎月中旬に密閉容器に採取した(Fig.2)。
鉱水分析指針5)を基づいて気温,気圧,水温,電導率,pH,Na+,K+,Ca2+,F-,NO3-,SO42,Cl-,全炭酸濃度を測った。
2-2 簡易全炭酸測定法の開発
水溶液中の炭酸は測定が困難なため,簡易全炭酸測定法(Fig.3)を開発した。校正し検量線(Fig.4)を得た。
3.結果と考察
火山ガスの各濃度と火山活動を比較のため,月毎の噴火回数・爆発回数6),マグマ噴出量の指標として,火口から20km以内33カ所の合計降灰量7)を用いた(Fig.5~9)。またマグマ溜りでの発泡の際に発生するB型地震数8)の月変動をFig.10に示す。
3-1 F-,CO2濃度と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
噴火数・降灰量が増加した2025年5月とその2ヶ月前からF-,CO2濃度が高い(Fig.6)。よってF-やCO2濃度は噴火予測に有効と考えられる。特に全炭酸変動はFig.10と一致し,マグマ溜りでの脱ガスを反映すると考えられる。
3-2 Cl-濃度や[Cl-]/[Na+]と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
Fig.11のように海水や天水の影響を受けると考えられ,明確な関係性は見られない。そこで [Cl-]/[Na+]のモル比を求め,影響を補正した(Fig.12)。[Cl-]/[Na+]は噴火・降灰量が増加する4ヶ月前から増加が見られ,最も火山活動が活発な5月には減少した。これは噴火のために,マグマ溜りの水蒸気が減少し脱ガス量が一時的に少なくなったためと考えられる。
3-3 SO42-濃度と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
噴火数・降灰量が増加すると,上昇する傾向が見られた。しかし2025年6月に上昇した。これはFig.10と同様の結果となり,マグマ溜りでの脱ガスの反映と考えられる。
3-4 B型地震と火山ガス成分の比較と5月の噴火に先行する桜島熱水系変動モデルの提唱
マグマ溜りでの発泡における各火山ガス成分への寄与を考えるために,各期間のB型地震数との時間差相関分析を行った(Table6,7)。
この表と文献9~14)を参考に,Fig.11を提唱する。また,火山活動活発化の前にB型地震数が増え,火口直下のマグマから脱ガスし熱水溜りに供給され,温泉水の各濃度が上昇すると仮定すると,まず噴火の30~15日前に白浜温泉の下の熱水溜りへ❶CO2が供給され始める。次に,噴火の20~10日前に,有村温泉の下の熱水溜りに❷HCl,❸SO2の供給も開始され,15日前から❹CO2も供給される。そして,白浜温泉の下の熱水溜りに供給される❺SO2やHClは,B型地震との相関が低いため,姶良カルデラのマグマ溜りやその流路から揮発し,熱水溜りに供給される。❻両温泉のHFは,B型地震との相関が低いため,火山活動の活発化に伴い,マグマの温度が上昇し,周辺のマグマから脱ガスし,熱水溜りに供給される。その後,連続噴火が起きると考えた。
4.結論及び今後の展望
簡易全炭酸濃度測定法を始めとした温泉水の分析を確立できた。
今年5月の噴火活動活発化に先行した全炭酸濃度の上昇,[Cl-]/[Na+]やF-濃度上昇の後、火山活動が活発化するという事象を見いだすことができた。
また火口直下のマグマ溜りの脱ガスと関係性の深いB型地震数の変動を基に桜島熱水系変動モデルを提唱できた。
今後はさらに観測を続け,モデルの検証や火山ガスによる桜島の火山活動予測を実現したい。
5.参考文献
1) 太田一也,第5回桜島火山の集中観測報告書1986,103-114
2)井口正人ら (2014):「桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究」,93-96
3)N. Spilliaert et al. S–Cl–F degassing pattern of water-rich alkali basalt: Modelling and
relationship with eruption styles on Mount Etna volcano,Earth and Planetary Science Letters 248 2006, 772–786
4)M. Edmonds et al,Volatiles and Exsolved Vapor in Volcanic Systems,Elements Volume 13, 1, 29–34, 2017
5) 環境省,鉱泉分析指針(2014)
6) 鹿児島地方気象台Web,桜島噴火観測表
7)鹿児島県公式Web, 桜島降灰量観測結果
8)九州管区気象台,桜島火山活動解説資料(2025年5月),1-14
9)野上健治他,京都大学防災研究所年報47B,2004
10) https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/sakurajima/text/exp01-1.html
11) 0190214 01sakurajima_web.pdf
12)https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuunivpress0190214 01sakurajima_web.pdf
13) https://maps.gsi.go.jp
14)井口正人,物理探査60-2(2007),145-154
桜島においてもマグマの貫入により火山ガスが温泉水に溶ける可能性が高く,太田1),井口ら2)は桜島の温泉水の火山ガス成分変動が火山活動に対応すると報告している。
一方,先行文献3)4)の文献から,Fig.1の様に火山体の深い位置でマグマからCO2やSO2が揮発し,火口直下のマグマ溜りでは水と塩素など脱ガスし,噴火するとしている。
そこで,桜島でも同様のモデルを仮定し,火山活動の予測を目指して温泉水中の火山ガス成分観測を始めた。
2.研究方法
2-1 温泉水・海水の測定方法
2024年5月より火口の南の有村温泉(2025年4月閉館,以後古里温泉)と北の白浜温泉で温泉水を,更に両温泉の近くの港で海水を毎月中旬に密閉容器に採取した(Fig.2)。
鉱水分析指針5)を基づいて気温,気圧,水温,電導率,pH,Na+,K+,Ca2+,F-,NO3-,SO42,Cl-,全炭酸濃度を測った。
2-2 簡易全炭酸測定法の開発
水溶液中の炭酸は測定が困難なため,簡易全炭酸測定法(Fig.3)を開発した。校正し検量線(Fig.4)を得た。
3.結果と考察
火山ガスの各濃度と火山活動を比較のため,月毎の噴火回数・爆発回数6),マグマ噴出量の指標として,火口から20km以内33カ所の合計降灰量7)を用いた(Fig.5~9)。またマグマ溜りでの発泡の際に発生するB型地震数8)の月変動をFig.10に示す。
3-1 F-,CO2濃度と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
噴火数・降灰量が増加した2025年5月とその2ヶ月前からF-,CO2濃度が高い(Fig.6)。よってF-やCO2濃度は噴火予測に有効と考えられる。特に全炭酸変動はFig.10と一致し,マグマ溜りでの脱ガスを反映すると考えられる。
3-2 Cl-濃度や[Cl-]/[Na+]と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
Fig.11のように海水や天水の影響を受けると考えられ,明確な関係性は見られない。そこで [Cl-]/[Na+]のモル比を求め,影響を補正した(Fig.12)。[Cl-]/[Na+]は噴火・降灰量が増加する4ヶ月前から増加が見られ,最も火山活動が活発な5月には減少した。これは噴火のために,マグマ溜りの水蒸気が減少し脱ガス量が一時的に少なくなったためと考えられる。
3-3 SO42-濃度と火山活動(降灰量・噴火数)との比較
噴火数・降灰量が増加すると,上昇する傾向が見られた。しかし2025年6月に上昇した。これはFig.10と同様の結果となり,マグマ溜りでの脱ガスの反映と考えられる。
3-4 B型地震と火山ガス成分の比較と5月の噴火に先行する桜島熱水系変動モデルの提唱
マグマ溜りでの発泡における各火山ガス成分への寄与を考えるために,各期間のB型地震数との時間差相関分析を行った(Table6,7)。
この表と文献9~14)を参考に,Fig.11を提唱する。また,火山活動活発化の前にB型地震数が増え,火口直下のマグマから脱ガスし熱水溜りに供給され,温泉水の各濃度が上昇すると仮定すると,まず噴火の30~15日前に白浜温泉の下の熱水溜りへ❶CO2が供給され始める。次に,噴火の20~10日前に,有村温泉の下の熱水溜りに❷HCl,❸SO2の供給も開始され,15日前から❹CO2も供給される。そして,白浜温泉の下の熱水溜りに供給される❺SO2やHClは,B型地震との相関が低いため,姶良カルデラのマグマ溜りやその流路から揮発し,熱水溜りに供給される。❻両温泉のHFは,B型地震との相関が低いため,火山活動の活発化に伴い,マグマの温度が上昇し,周辺のマグマから脱ガスし,熱水溜りに供給される。その後,連続噴火が起きると考えた。
4.結論及び今後の展望
簡易全炭酸濃度測定法を始めとした温泉水の分析を確立できた。
今年5月の噴火活動活発化に先行した全炭酸濃度の上昇,[Cl-]/[Na+]やF-濃度上昇の後、火山活動が活発化するという事象を見いだすことができた。
また火口直下のマグマ溜りの脱ガスと関係性の深いB型地震数の変動を基に桜島熱水系変動モデルを提唱できた。
今後はさらに観測を続け,モデルの検証や火山ガスによる桜島の火山活動予測を実現したい。
5.参考文献
1) 太田一也,第5回桜島火山の集中観測報告書1986,103-114
2)井口正人ら (2014):「桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究」,93-96
3)N. Spilliaert et al. S–Cl–F degassing pattern of water-rich alkali basalt: Modelling and
relationship with eruption styles on Mount Etna volcano,Earth and Planetary Science Letters 248 2006, 772–786
4)M. Edmonds et al,Volatiles and Exsolved Vapor in Volcanic Systems,Elements Volume 13, 1, 29–34, 2017
5) 環境省,鉱泉分析指針(2014)
6) 鹿児島地方気象台Web,桜島噴火観測表
7)鹿児島県公式Web, 桜島降灰量観測結果
8)九州管区気象台,桜島火山活動解説資料(2025年5月),1-14
9)野上健治他,京都大学防災研究所年報47B,2004
10) https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/sakurajima/text/exp01-1.html
11) 0190214 01sakurajima_web.pdf
12)https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuunivpress0190214 01sakurajima_web.pdf
13) https://maps.gsi.go.jp
14)井口正人,物理探査60-2(2007),145-154
