講演情報
[O12-P15]指宿火山群における簡易希釈法による火山ガス成分観測
*横山 陸1、*薗田 怜旺1 (1. 学校法人池田学園池田高等学校)
キーワード:
火山ガス組成、検知管とセンサ-を用いた簡易希釈法、CO₂/H₂S比、SO₂/H₂S比
1 はじめに
御嶽山のような水蒸気噴火の予知は,桜島のようにマグマの蓄積や変動を伴う噴火と比べて,噴火前の地下のマグマの体積変動量が小さいため,地殻変動観測による前兆現象が捉えにくい。一方で火山ガス中におけるマグマから揮発した成分の変化は,マグマの活動あるいは地下熱水系の変化を反映する場合があり,水蒸気噴火の前兆現象となる可能性が高い1)。そのため,2007年以降,Fig.1のように地震活動の頻度2)が増加している活火山である「池田・山川」での観測を2021年12月から始めた。しかし,この観測には通常高価な器具を用いる。そこで我々は高価な器具を用いずに,高校生でも安全に観測する方法を開発した。これらの方法を用いて安全に火山ガスが採取することができる指宿火山群の権現,南迫田,鰻池3~5)の3つの噴気地帯(Fig.2)を対象に選び,毎月の定期観測を行った。
2 方法
2021年から一ヶ月毎に3地点で定期観測を実施し,火山ガスに含まれる微量成分のうち,二酸化炭素(CO2),二酸化硫黄(SO2),硫化硫黄(H2S)については,低コスト化を図るために,Fig.3のように気体検知管と市販の安価なガスセンサーの有効な測定範囲に火山ガスの成分を正確に希釈する方法を開発し,これらの機器を用いて濃度を測定する。これらの測定結果から,CO2/H2S比,SO2/H2S比をマグマ起源による成分比として一回の定期観測ごとに算出し,その比の変動を追跡することによって,地下のマグマ活動や熱水系の状態変化を把握できる可能性6~9)がある。今回は4年間のデータの比を基に地下の火山ガス挙動モデルを提唱し,九州の他の噴気帯10)との比較も行った。
3 結果と考察
① 指宿火山群の地下熱水モデル
指宿火山群の地下構造モデルを考案した(Fig.4)。マグマ由来の火山ガスが上昇する際,Fig.5のように地殻の応力によって火山ガスが妨げられるが,地震が起きるとその地殻の応力が解放される。そして,妨げられていた火山ガスの多くが熱水まで上昇し,噴気孔から噴出される。このことから,マグマ由来の火山ガスは普段は減少傾向にあるが,地震が発生すると応力が解放されて増加傾向に転じると推測した。
② 火山ガスの組成比変動
2007年以降,指宿市直下を震源とする直下型地震が発生している。そのうち,地下10km以内の地点を震源として発生した地震は,火山活動や熱水だまりを起源とする火山性地震である可能性があるため,火山活動の影響をSO2/H2S比,CO2/H2S比,を指標とし,評価をする。
この評価と文献などを参考に構造モデルや熱水系のモデルを考察する(Fig.4.5)。Fig.6.7を見ると3地点共に2023年11月15日の権現直下地震が発生するとSO2/H2S比が明確に上昇していた。また,2025年以降に発生した地震では3地点ともにCO2/H2S比上昇は見られず,SO2/H2S比は僅かに上昇した。
③九州の火山と指宿火山群の火山ガスの比較
Fig.8を見るとCO2/H2S比が高いグループである阿蘇や雲仙に権現と南迫田は近い平均。指宿火山群の中では権現と南迫田がほぼ同じで,鰻池が低い。
Fig.9を見るとグラフには描写していないが,薩摩硫黄島が17以上,中之島が25以上で,平均を見ると指宿火山群の中で鰻池だけ低い。
4 結論と今後の展望
火山ガス組成比変動から指宿火山群の地下構造モデルを作成した。
九州の火山と比べてCO2/H2S比は指宿火山群が高いグループに位置することが分かった。これからも一ヶ月毎の定期観測を継続していき,安価な機器を用いて連続観測を目指していきたい。また,火山ガス成分の変化からマグマ活動や熱水系の動きを研究していきたい。
5 参考文献
1) 大場 武,水蒸気噴火と化学,化学と教育,68巻第5号(2020),p204-207
2) 気象庁震度データベース検索
3) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),地熱開発促進調査報告書「辻之岳地域」,2001.3
4) NEDO,地熱開発促進調査中間報告書「池田湖東部地域(第一次)」,2008.3
5) 川辺禎久・阪口圭一,産業技術総合研究所地質調査総合センター,地域地質研究報告, 開聞岳地域の地質,2005(平成17年)
6) https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/
7) Iwasaki et al,1962,Volcanic gases inJapan,BuIl.Tokyo.Inst.Tech,No.47,1−54.
8) R.O.Fournier.EconomicGeol.1999, 94, 1193.
9) 代田 寧他,箱根山火山ガス組成による火山活動予測,地学雑誌,2021783-796
10)菅原道智他,ガス検知管を用いた火山ガス成分観測の測定手法とその有用性について,験震時報(2023),86巻5,1-23
御嶽山のような水蒸気噴火の予知は,桜島のようにマグマの蓄積や変動を伴う噴火と比べて,噴火前の地下のマグマの体積変動量が小さいため,地殻変動観測による前兆現象が捉えにくい。一方で火山ガス中におけるマグマから揮発した成分の変化は,マグマの活動あるいは地下熱水系の変化を反映する場合があり,水蒸気噴火の前兆現象となる可能性が高い1)。そのため,2007年以降,Fig.1のように地震活動の頻度2)が増加している活火山である「池田・山川」での観測を2021年12月から始めた。しかし,この観測には通常高価な器具を用いる。そこで我々は高価な器具を用いずに,高校生でも安全に観測する方法を開発した。これらの方法を用いて安全に火山ガスが採取することができる指宿火山群の権現,南迫田,鰻池3~5)の3つの噴気地帯(Fig.2)を対象に選び,毎月の定期観測を行った。
2 方法
2021年から一ヶ月毎に3地点で定期観測を実施し,火山ガスに含まれる微量成分のうち,二酸化炭素(CO2),二酸化硫黄(SO2),硫化硫黄(H2S)については,低コスト化を図るために,Fig.3のように気体検知管と市販の安価なガスセンサーの有効な測定範囲に火山ガスの成分を正確に希釈する方法を開発し,これらの機器を用いて濃度を測定する。これらの測定結果から,CO2/H2S比,SO2/H2S比をマグマ起源による成分比として一回の定期観測ごとに算出し,その比の変動を追跡することによって,地下のマグマ活動や熱水系の状態変化を把握できる可能性6~9)がある。今回は4年間のデータの比を基に地下の火山ガス挙動モデルを提唱し,九州の他の噴気帯10)との比較も行った。
3 結果と考察
① 指宿火山群の地下熱水モデル
指宿火山群の地下構造モデルを考案した(Fig.4)。マグマ由来の火山ガスが上昇する際,Fig.5のように地殻の応力によって火山ガスが妨げられるが,地震が起きるとその地殻の応力が解放される。そして,妨げられていた火山ガスの多くが熱水まで上昇し,噴気孔から噴出される。このことから,マグマ由来の火山ガスは普段は減少傾向にあるが,地震が発生すると応力が解放されて増加傾向に転じると推測した。
② 火山ガスの組成比変動
2007年以降,指宿市直下を震源とする直下型地震が発生している。そのうち,地下10km以内の地点を震源として発生した地震は,火山活動や熱水だまりを起源とする火山性地震である可能性があるため,火山活動の影響をSO2/H2S比,CO2/H2S比,を指標とし,評価をする。
この評価と文献などを参考に構造モデルや熱水系のモデルを考察する(Fig.4.5)。Fig.6.7を見ると3地点共に2023年11月15日の権現直下地震が発生するとSO2/H2S比が明確に上昇していた。また,2025年以降に発生した地震では3地点ともにCO2/H2S比上昇は見られず,SO2/H2S比は僅かに上昇した。
③九州の火山と指宿火山群の火山ガスの比較
Fig.8を見るとCO2/H2S比が高いグループである阿蘇や雲仙に権現と南迫田は近い平均。指宿火山群の中では権現と南迫田がほぼ同じで,鰻池が低い。
Fig.9を見るとグラフには描写していないが,薩摩硫黄島が17以上,中之島が25以上で,平均を見ると指宿火山群の中で鰻池だけ低い。
4 結論と今後の展望
火山ガス組成比変動から指宿火山群の地下構造モデルを作成した。
九州の火山と比べてCO2/H2S比は指宿火山群が高いグループに位置することが分かった。これからも一ヶ月毎の定期観測を継続していき,安価な機器を用いて連続観測を目指していきたい。また,火山ガス成分の変化からマグマ活動や熱水系の動きを研究していきたい。
5 参考文献
1) 大場 武,水蒸気噴火と化学,化学と教育,68巻第5号(2020),p204-207
2) 気象庁震度データベース検索
3) 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),地熱開発促進調査報告書「辻之岳地域」,2001.3
4) NEDO,地熱開発促進調査中間報告書「池田湖東部地域(第一次)」,2008.3
5) 川辺禎久・阪口圭一,産業技術総合研究所地質調査総合センター,地域地質研究報告, 開聞岳地域の地質,2005(平成17年)
6) https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/
7) Iwasaki et al,1962,Volcanic gases inJapan,BuIl.Tokyo.Inst.Tech,No.47,1−54.
8) R.O.Fournier.EconomicGeol.1999, 94, 1193.
9) 代田 寧他,箱根山火山ガス組成による火山活動予測,地学雑誌,2021783-796
10)菅原道智他,ガス検知管を用いた火山ガス成分観測の測定手法とその有用性について,験震時報(2023),86巻5,1-23
