講演情報

[O12-P17]都市部でのCO2動態に航空機が与える影響について ー大阪国際空港周辺
および大阪府箕面市における実測報告ー

*中村 太陽1、*三方 優実1 (1. 関西学院千里国際 中等部・高等部)

キーワード:

二酸化炭素、気候変動、空港、太陽光、赤外線スペクトル、長期観測

1.はじめに
 気候変動の主要因である温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)は都市部上空における観測データが決定的に不足している。そこで私たちは小型可搬式観測装置を開発し、それを用いて大阪国際空港(伊丹空港:ITM)周辺および関西学院千里国際キャンパス(SOIS)においてCO2気柱平均体積混合比(XCO2)を測定した。ITMでは周辺4ヶ所で春夏秋冬に一回以上ずつ計16回以上の観測を行いSOISでは一年以上を通して平日のほぼ毎日XCO2観測を行いXCO2レベルとその日中時間変動などのデータを比較した。

2.方法
2ー1.観測装置
 観測装置の原理は、太陽光が地表に届くまでに大気中のCO2によって吸収される性質を利用して、太陽から到達する近赤外線スペクトルを観測することで大気CO2の光吸収量が可視化され、XCO2を分析することができる。本観測では、XCO2を1.0秒ごとに繰り返し記録した。また、地上との比較のために観測地点地表のCO2計測も非分散型赤外線吸収法を用いた製品で60秒ごとに記録し、その他、気温・気圧・湿度も同時計測した。

2ー2.期間と場所
 本観測は、2024年9月から2026年3月上旬まで行った。ITM周辺の4地点では、3月・6月・9月・12月でそれぞれ4週間以上の週末に観測装置を観測地まで運び,日中の6時間以上観測し、測定データを取得した。SOIS(ITMから北東に約8km)では、2024年9月より継続して平日の9~16時にほぼ毎日のように観測を行った。

3.結果・考察
 図は2024年9月〜2026年3月上旬までに観測されたXCO2をまとめたものである。長期観測のグラフでは太陽高度が30°以上である時の平均値を示している。また、2025年7月1日前後の観測データについては太陽高度が76〜77°である時の平均値を示している。どちらのグラフもエラーバーは変動している値の標準偏差を表す。白抜き青四角(□)がITM 周辺、赤丸(●)がSOISの観測データを表している。白抜き四角に添えられているSW、 SE、NW、NEはそれぞれ観測地点を示している。

3ー1.地点別XCO2濃度の比較と離陸ルートの影響
 季節が夏に進むにつれ、XCO2が減少していることがわかる。また地点別の比較では航空機の離陸方向にあたるNW(北西)を除き、SOISよりもITM周辺の観測値の方が低くなる傾向が見られた。これはITMが遮蔽物のない広大な空間であり、都市部の空気が滞留しにくい地形的特性に起因すると考えられる。一方、ITM周辺の中でNW地点のみが高い値を示したことは、離陸する際に航空機が排出するCO2が局所的に増加していることが直接的な原因であると考えられる。

3ー2.XCO2日変化における風向と排ガス運搬の影響
 2025年12月にITM周辺で観測されたXCO2の日変化を解析した結果、風向きによってXCO2の挙動が異なることが判明した。離陸ルートにあたる北西からの風が吹いていたときのXCO2時間変化は午後から継続的に上昇傾向にあるという特徴が見られた。対照的に北西からの風が吹いていなかった時のXCO2は午後の顕著な上昇は見られなかった。

3ー3.長期観測によるXCO2季節変動
 2024年9月〜2026年3月上旬にかけての長期観測の結果、SOISにおいて夏低冬高という明確な季節変動が確認された。これは夏から秋にかけて気温上昇と日照時間の増加により植物の光合成が活発化し、CO2吸収量が増えるためである。一方、冬季は低温と日照不足により光合成速度が著しく低下し停止に近い状態になるため、相対的に濃度が上昇する。このことは、一般的な大気変動の傾向1と一致しており、都市部における大気実態を正しく反映していることを示している。

4.まとめ
 ITM周辺の4地点とSOISにおいて、日中のXCO2を測定した。観測結果より、ITM空港周辺のXCO2はSOISより低い傾向にあるが、離陸ルート直下のNW地点では局所的な上昇がみられ、XCO2の時間変化は気温だけでなく風向きにも影響されており、北西の風によって航空機排ガスが移流することで午後の上昇が引き起こされていることが示唆された。約一年半の観測データは先行研究と同様の季節周期を示した。今後は、より詳細な風向き・風速データを用いてより正確に都市部上空の大気実態を解析していくことが課題である。

5.参考文献
 1気象庁(令和8年3月24日更新).「大気中二酸化炭素及び年増加の経年変化」. https://www.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html