講演情報

[O12-P18]喜界島の完新世サンゴ礁段丘Ⅲ面におけるハマサンゴ化石の成長速度

*稲毛 健人1,2 (1. 鹿児島県立喜界高等学校、2. 喜界島サンゴ礁科学研究所)

キーワード:

ハマサンゴ年輪、完新世、喜界島

喜界島は、奄美⼤島から東に約24kmの奄美群島に属するサンゴ礁が隆起した島である。喜界島の表面を覆う造礁サンゴなどの造礁生物は炭酸カルシウムからなる骨格を形成する。その中で塊状のハマサンゴ属の骨格には樹木のような年輪が刻まれる。年輪は幅が大きいほど成長速度が速く、骨格を形成する石灰化量も大きくなる。喜界島の沿岸部をとりまく完新世サンゴ礁段丘の研究は盛んに行われていて、化石の年代から主に段丘を四つの面に分けられており、内陸から海岸に向かってI面、II面、III面、IV面と区別されている(太田ほか 1978)。 Garas et al.(2022)によると、約4000年前に寒冷期があったことが判明しており、約3000年前から4000年前に形成された第Ⅲ面は、現在より海水温が低い状態のサンゴの成長速度を示すと考えられる。 また、喜界島は夏は南から、冬は北西からの季節風が卓越する。本研究では、島を取り巻く完新世段丘の第III面を対象とし、完新世の気候変動の中で寒冷期におけるハマサンゴ属のサンゴの成⻑速度とそれに対する季節風の影響を明らかにすることを目的とした。

解析用のコア試料は、手久津久(南)、志戸桶(北東)、中間(中西部)、花良治(中南部)の完新世サンゴ礁段丘第Ⅲ面において行った。使用器具は掘削用の1.5インチコアラーを接続した電動ドリルを使用した。採取対象は長寿で群体径が大きく、ほかの種に比べ年輪がよく見えるハマサンゴ属を選択した。採取したコア試料は喜界島サンゴ礁科学研究所内のX線CT装置を⽤いて撮影して年輪を確認し、年輪の幅を計測して年間伸⻑量(mm/year)の変動と、その平均値を求めた。また、第Ⅲ面のハマサンゴ属の成長速度をそれぞれ、現生のハマサンゴの成長速度と水温の関係式(Goodkin et al.,2011)と比較した。

各4地点のコア試料は、手久津久で63年分、志戸桶で68年分、中間で68年分、花良治で43年分を採取した。各地点の伸長量(平均値)は、手久津久は9.2 mm/年で、標準偏差が2.2 mmと最もばらつきが大きく、志戸桶は6.4 mm/年で、標準偏差は1.7 mmだった。中間が7.1 mm/年で、標準偏差は1.4mmで最もばらつきが少なかった。花良治が7.4 mm/年で、標準偏差は1.6mmだった。ほかにも単年の年伸長量が標準偏差を超えて8mm以上になる年があった。また、段丘面の推定が合っているか確認するため、志戸桶のコア試料は放射性炭素年測定が行われ、年代は3382~4401年前と特定された。

各地点において年伸長量が標準偏差を超えて高い成長量を示した年も見られ、過去に第III面の採取地点が夏季において高海水温になりやすい環境であった可能性が考えられる。本発表では、現在のサンゴ骨格伸長量と比較して、第Ⅲ面のサンゴ礁の環境がどのような時代であったかを考察するとともに、過去の喜界島の古環境についての既往研究を調査し、原因となる海洋条件について検討したい。