講演情報

[O12-P19]喜界島の水文学的特徴がもたらす集落文化の多様性

*佐藤 てれさ1,2 (1. 鹿児島県立喜界高等学校、2. 喜界島サンゴ礁科学研究所)

キーワード:

水文化、地下水、石灰岩、サンゴ礁島嶼

(はじめに・目的)
 鹿児島県喜界島は、サンゴ礁が隆起して形成された島であることが大きな特徴である。土台となる島尻層群と、その上部にサンゴの化石からできた石灰岩の琉球層群が重なる。水文的な立場からみると 、基盤の島尻層群は不透水性である。琉球石灰岩は速やかに地下に浸透する 。そのため島には表流水は限られている。地下水が島の水資源となっているため古くから湧水などに依存してきた。喜界島では、一般水道が普及する前から、湧水と人々の生活・文化の結びつきがあったが、現在では薄れつつある。本研究は、喜界島の住民と湧水との繋がりに焦点を当て、標高が異なる集落ごとの得亮と歴史的変化を明らかにすることを目的とした。また、島民が湧水に対してどのような存在意義を見出しているのかを明らかにするため、聞き取り調査を行った。

(手法)
 標高差に違いがある集落を抽出し、現在と過去において湧水の利用方法を比較、各地点に水路等が築かれた経緯を明確にすることを目的とした聞き取り調査を、2025年8月11日と2026年2月11日に行った。対象の集落は、滝川集落(標高約110m)、西目集落(標高約40m)、先内集落(標高約15m)、伊実久集落(標高約28m)の湧水地である。調査は、地元住民11名にインタビュー形式で話を伺った。質問項目は、湧水の扱われ方や町営水道整備後の変化、湧水の重要性など、各集落の湧水の歴史と人にかかわるテーマについて聞き取りを実施した。

(結果)
 標高が高い滝川集落では、湧水地点に人工的に整備された湧水池がある。当初3つの区画で分けられ、用途によって使い分けられていた。昭和31年以降は、2つの区画となり、水遊び場などとして憩いの場となっている。西目集落では、水を上流からパイプ管を各家に引き、集落水道として利用していた。標高が低い先内集落では、井戸を活用していた。伊実久集落では、湧水地が2ヶ所と滝が存在していた。電気のない時代、湧水地は水浴びや就寝前の涼みの場などとして、老若男女にとって生活に欠かせない存在だった。現在では、扱われなくなった。先内集落と伊実久集落の歌にも、湧水が登場している。調査を通じて、全集落の共通点は、水に関わる祭礼であった。しかし、湧水や井戸の保全と継続利用の対策や体制は未整備であることが明らかになった。

(考察)
 集落の標高差によって、人と湧水との関係が大きく異なっていることが明らかとなった。標高が高い2集落は上流で湧水が豊富に湧き出ることにより、水は神聖なものとして捉えられていることがわかった。一方、標高が低い先内集落では、井戸の利用が主流であり直接的に湧水を利用していなかったため、人と湧水との繋がりがあまり見られなかった。もう一方の、標高が低い伊実久集落の湧水地は、幅広い世代が交流する場所として湧水を活用していた。このように、標高差や湧水の有無により、人と水の関わりには違いが生じていると考えられる。

(展望)
もっと各地域における湧水文化の現状や利用の実態について調査を進め、特色や共通点をより広い視野で明らかにしていきたい。今後、湧水の保全活用において、本調査の結果が反映されることを期待したい。