講演情報

[O12-P30]校有林土の釉薬利用の検討〜“嵯峨野焼”の実現に向けて〜

*妹尾 紗矢香1 (1. 京都府立嵯峨野高等学校)

キーワード:

粘土鉱物、嵯峨野高校校有林、陶土

序論
本校では、嵯峨野高校校有林の岩石風化層(以下校有林土)を用いた陶器製作“嵯峨野焼”作りを目指してきた(中川, 2025)。校有林土は、粗砂画分を含み、シルト画分が少ないことから、陶芸家から「それ自体では扱いにくい」とされる(谷口ら, 2024)。しかし、井尻(2024)は粒径組成等を分析し、校有林土の陶土としての利用が可能であり、扱いやすさは個性と捉えられると報告している。
陶土の活用方法の一つとして、釉薬利用がある。陶芸家等によって自作される釉薬には、その土地で採取された陶土や灰を材料として用いるものがある。校有林土においても、陶土利用が可能であることから、釉薬利用も可能であると考えられる。
本研究では、校有林土の釉薬としての活用を検討することを目的とした。

方法
校有林土用いて釉薬を自作し、素焼きの試験ピースに塗布し、焼成した焼き物にモース硬度試験、吸水率試験の物性評価を行い、比較対象は市販の透明釉とした。
試験ピースは、白土を直径5cm厚さ1cmの円盤状に成形し、800℃で6 時間焼成し作製した。自作の釉薬は、2mm以下、0.25mm以下に篩別した校有林土を、水簸の有無で計4種類の試料とし、市販の灰を配合材料とした。試料と灰の質量比を5:0, 4:1, 3:2, 2:3, 1:4とし、計20種類を用意した。試料と灰の総重量1.0gあたり0.8mLの水を加え、試験ピースに塗布したものを卓上マッフル炉(株式会社ダイケン)、らくらく窯(株式会社グット電機)を用いて1000、1100、1200、1250(℃)に毎分20℃で昇温し、14時間焼成した。
完成品に、物性評価としてモース硬度試験、吸水率試験を行った。吸水率試験は、JIS 規格に定められた耐火レンガの吸水率・比重の測定方法に基づいて実施し、吸水率(%) = (飽和状態質量(g) - 乾燥状態質量(g)) /乾燥状態質量(g) / 媒液の比重 × 100で求め、媒液には、純水(比重 1.0)を使用した(渡辺, 2023)。

結果及び考察
校有林土のみで焼成した場合や、1000℃での焼成では、表面が脆く削れやすかった。しかし、その他の場合は表面に光沢が見られ、土や灰が試験ピースにしっかりと付着していた。それらは全て、釉薬をかけず同様に焼成したピースより硬度が大きくなり、吸水率が低下していた。また、焼成温度が上昇すると共に、この傾向が強まった。篩別や水簸の有無による大きな性質の違いは無かったが、水簸を行い、粒径の細かい試料で作ったものの方が、釉薬のかかり具合にムラが少なかった。
モース硬度試験では、硬度最小1-2、最大7-8であった。市販の透明釉の場合は、1250℃の場合に最大で、自作の釉薬と同じ7-8となった。吸水率試験では、吸水率最大20.9%、最小5.56%であった。透明釉は1250℃の場合に最小で、9.23%であった。
また、大久保(2017)は、校有林土の粘土画分を用いたX線回折結果から、校有林土は2:1型層状ケイ酸塩鉱物のVermiculite(Vt)やIllite(It)、1:1型層状ケイ酸塩であるKaolinite(Kt)、鉄水酸化物であるLepidocrocite(Lp)、およびQuartz(Qz)等多くの粘土鉱物を含むことを報告している。本研究における様々な結果は、これら粘土鉱物の影響が大きいと考えられる。

結論
以上の結果から、灰を配合することで釉化が確認でき、校有林土の釉薬利用は可能であった。本校陶芸科教諭からも、釉薬として使用可能な焼成結果になっていると評価を頂いた。一方、校有林土のみでの釉薬利用にはさらなる検討が必要であると考えられた。
今後、蛍光X線分析等でのゲーゼル式算出、焼成温度や焼成時間の変更などが望まれる。さらに多くの試験ピースを焼成し、それらの焼成結果の確認や、硬度の詳しい解析をしていきたい。また、実際の作品に自作の釉薬を塗布することで、様々な形状の焼き物への付着具合も確認する予定である。

参考文献
・大久保美鈴,2017.京都市内の里山における土壌の評価.スーパーサイエンスラボ研究報告書集2016,京都府立嵯峨野高等学校. 4-6.
・渡辺海月, 2023. 嵯峨野高校校有林採取土を用いた陶器作成の検討. スーパーサイエンスラボ研究報告書集, 2023 京都府立嵯峨野高等学校. 6-8.
・井尻柚月,2024. 粗砂除去による嵯峨野高等学校校有林陶土の可塑性の向上. スーパーサイエンスラボ研究報告書集2024, 京都府立嵯峨野高等学校. 70-71.
・中川莉子, 2025. 正確で簡易な陶土の可塑性評価方法の検討 ~土を科学する~. スーパーサイエンスラボ研究報告書集2025, 京都府立嵯峨野高等学校. 74-76.
・谷口悟・渡邊海月・上本南美乃・中山拓海・山脇正資,2024. 赤土山の土壌物理性評価 ~“嵯峨野焼”の実現を目指して~. 京都地学教育研究会,京都地学41号

謝辞
本研究文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール支援授業の助成金により遂行しました。この場をお借りして御礼申し上げます。