講演情報
[O12-P32]京都府丹後半島の森林小流域のもつ多面的機能の解明 ~詳細土壌図の作成に向けた検討~
*小菅 巧睦1、*上田 照眞1、*梶村 明里1、*重光 伶音1、佐伯 美空1、中村 蒼太1、平野 優奈1、只野 凱理1、丁 美琳1、片岡 七紬1、妹尾 紗矢香1、占部 佑真1、奥田 祐作1、神田 大維1、岩﨑 悠介1、湯浅 瑠里奈1、河内 柑菜1、喜島 亜海花1、鵜飼 青児1、清水 杏夏1、錦織 彩々音1、林 広翔1、木坂 百合1、長田 清良1、中村 文孝1 (1. 京都府立嵯峨野高等学校)
キーワード:
土壌分類、棚田跡、円礫、埋没A層、地形因子
1.序論
本校では、森林小流域がもつ水資源涵養機能や国土保全機能等の機能について、調査研究を進めてきた。本研究では、小流域がもつ多面的機能について評価するため、土壌図を作成することを主目的とした。土壌には数百の種類があり、土壌図を用いると土壌の性質の違いや地域的な広がりを簡単に調べることができる(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構, 2021)。
2.方法
調査は、2025年7月に日本海気候に属する京都府立丹後海と星の見える丘公園(京都府宮津市字里波見)内の波見川水系の二次支川の小流域を調査した。公園の総面積は8918 m2、標高は約108 – 151 mである。調査項目は、目視、土壌断面及び土壌貫入強度(ダイトウテクノグリーンH-60)とした。土壌分類には、農耕地土壌分類と森林土壌分類を統合した「包括的土壌分類第1次試案」を採用した。
3.結果及び考察
土壌の生成因子は、母材、気候、生物、地形、時間の5つである。本研究では、地形因子に着目し、土壌調査を進めた。目視調査において、平坦面と畔の痕跡が確認された。土壌断面調査は、小流域の尾根(上部・中腹)、棚田跡(上部・下部)の4ヶ所で行った。
尾根上部の土壌断面調査の結果、土性は埴壌土であり土壌は乾いていた。「包括的土壌分類第1次試案」によると岩盤質普通褐色森林土に分類された。
尾根中腹の土壌断面調査の結果、次層以深の土性は軽埴土であった。また、C層からは風化の進んだ円礫が確認された。これは、今後の研究課題と考えられる。以上より、礫質普通褐色森林土に分類された。
棚田跡上部では、8 cm程度の表層が確認された。これは作土層の深さとしては浅い。岡ら(2021)は、近隣の棚田においてホートン表面流が発生した可能性を報告している。このことから、棚田利用時の作土層が失われた可能性が示唆される。長きにわたり放棄された水田であるが、現在も降雨により一時的に湛水している様子が伺えた。以上の結果から、細粒質水田化粘土集積赤黄色土に分類された。
棚田跡下部では、明確なグライ層が確認された。次層以深の土性は重埴土であった。同地点では、過去に数m離れた小川の水位と同じ深さから地下水グライ層が報告されている(岡ら, 2020)。以上の結果から、細粒質水田型停滞水グライ土に分類された。
土壌貫入強度は、尾根部では土壌軟らか度(S値, cm/drop)が0.7より小さく、多くの根が侵入困難であり、棚田跡ではS値が4.0より大きく、植物の支持基盤として機能しない可能性が示唆される。特に棚田跡では、深さ40 - 50cmに柔らかい層が確認され、これは埋没A層と考えられる。
4.総合考察
1haに満たない流域ではあるものの、多様な土壌が見られた。棚田跡では埋没A層、尾根部C層で風化の進んだ円礫が確認されるなど、下層におけるさらなる調査の必要性が示唆された。今後、土壌を中心とした小流域の全域調査や詳細土壌図の作成を進め、京都府丹後半島の森林がもつ多面的機能について解析を進めたい。
5.引用文献
1)中村 蒼太, 上田 照眞, 2025. 京都府丹後半島の森林小流域における土壌生成に関する研究. 令和7年度第42回京都府高等学校総合文化祭自然科学部門.
2)岡健生, 森下浩彰, 2020. 森林の水源涵養機能の評価に向けて~土壌透水性と土壌貫入強度~, 2020年度京都総合文化祭自然科学部門.
3)日本ペドロジー学会, 2021. 改訂新版土壌調査ハンドブック, 博友社, pp. 193.
4) 三枝正彦, 木村眞人(編), 2005. 土壌サイエンス入門, 文永堂出版, pp. 318.
5)小原洋、大倉利明、高田裕介、神山和則、前島勇治、浜崎忠雄, 2011. 包括的土壌分類第1次試案、農業環境技術研究所報告, 第29号, pp. 75.
6)ダイトウテクノグリーン株式会社, 長谷川式土壌貫入計 取扱説明書Ver. 5.5.
7)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構, 2021. デジタル土壌図標準作業手順書Version 1.1
6.謝辞
本研究は、公益財団法人中谷財団ならびに文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール事業の支援を受け実施しました。また、京都府立丹後海と星の見える丘公園の方々には、調査許可から聞き取り調査まで多大なる御協力を受けました。さらに、京都府立大学 上島陸久馬さんに調査について指導していただきました。御礼申し上げます。
本校では、森林小流域がもつ水資源涵養機能や国土保全機能等の機能について、調査研究を進めてきた。本研究では、小流域がもつ多面的機能について評価するため、土壌図を作成することを主目的とした。土壌には数百の種類があり、土壌図を用いると土壌の性質の違いや地域的な広がりを簡単に調べることができる(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構, 2021)。
2.方法
調査は、2025年7月に日本海気候に属する京都府立丹後海と星の見える丘公園(京都府宮津市字里波見)内の波見川水系の二次支川の小流域を調査した。公園の総面積は8918 m2、標高は約108 – 151 mである。調査項目は、目視、土壌断面及び土壌貫入強度(ダイトウテクノグリーンH-60)とした。土壌分類には、農耕地土壌分類と森林土壌分類を統合した「包括的土壌分類第1次試案」を採用した。
3.結果及び考察
土壌の生成因子は、母材、気候、生物、地形、時間の5つである。本研究では、地形因子に着目し、土壌調査を進めた。目視調査において、平坦面と畔の痕跡が確認された。土壌断面調査は、小流域の尾根(上部・中腹)、棚田跡(上部・下部)の4ヶ所で行った。
尾根上部の土壌断面調査の結果、土性は埴壌土であり土壌は乾いていた。「包括的土壌分類第1次試案」によると岩盤質普通褐色森林土に分類された。
尾根中腹の土壌断面調査の結果、次層以深の土性は軽埴土であった。また、C層からは風化の進んだ円礫が確認された。これは、今後の研究課題と考えられる。以上より、礫質普通褐色森林土に分類された。
棚田跡上部では、8 cm程度の表層が確認された。これは作土層の深さとしては浅い。岡ら(2021)は、近隣の棚田においてホートン表面流が発生した可能性を報告している。このことから、棚田利用時の作土層が失われた可能性が示唆される。長きにわたり放棄された水田であるが、現在も降雨により一時的に湛水している様子が伺えた。以上の結果から、細粒質水田化粘土集積赤黄色土に分類された。
棚田跡下部では、明確なグライ層が確認された。次層以深の土性は重埴土であった。同地点では、過去に数m離れた小川の水位と同じ深さから地下水グライ層が報告されている(岡ら, 2020)。以上の結果から、細粒質水田型停滞水グライ土に分類された。
土壌貫入強度は、尾根部では土壌軟らか度(S値, cm/drop)が0.7より小さく、多くの根が侵入困難であり、棚田跡ではS値が4.0より大きく、植物の支持基盤として機能しない可能性が示唆される。特に棚田跡では、深さ40 - 50cmに柔らかい層が確認され、これは埋没A層と考えられる。
4.総合考察
1haに満たない流域ではあるものの、多様な土壌が見られた。棚田跡では埋没A層、尾根部C層で風化の進んだ円礫が確認されるなど、下層におけるさらなる調査の必要性が示唆された。今後、土壌を中心とした小流域の全域調査や詳細土壌図の作成を進め、京都府丹後半島の森林がもつ多面的機能について解析を進めたい。
5.引用文献
1)中村 蒼太, 上田 照眞, 2025. 京都府丹後半島の森林小流域における土壌生成に関する研究. 令和7年度第42回京都府高等学校総合文化祭自然科学部門.
2)岡健生, 森下浩彰, 2020. 森林の水源涵養機能の評価に向けて~土壌透水性と土壌貫入強度~, 2020年度京都総合文化祭自然科学部門.
3)日本ペドロジー学会, 2021. 改訂新版土壌調査ハンドブック, 博友社, pp. 193.
4) 三枝正彦, 木村眞人(編), 2005. 土壌サイエンス入門, 文永堂出版, pp. 318.
5)小原洋、大倉利明、高田裕介、神山和則、前島勇治、浜崎忠雄, 2011. 包括的土壌分類第1次試案、農業環境技術研究所報告, 第29号, pp. 75.
6)ダイトウテクノグリーン株式会社, 長谷川式土壌貫入計 取扱説明書Ver. 5.5.
7)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構, 2021. デジタル土壌図標準作業手順書Version 1.1
6.謝辞
本研究は、公益財団法人中谷財団ならびに文部科学省指定スーパーサイエンスハイスクール事業の支援を受け実施しました。また、京都府立丹後海と星の見える丘公園の方々には、調査許可から聞き取り調査まで多大なる御協力を受けました。さらに、京都府立大学 上島陸久馬さんに調査について指導していただきました。御礼申し上げます。
