講演情報

[O12-P34]高高度発光現象スプライトの統計的分析

*石村 未南桃1、*松田 昇大1、中村 莉玖1 (1. 高知県立高知小津高等学校)

キーワード:

スプライト、高高度発光現象、統計分析

1. 研究の背景と目的

 高高度発光現象とは高度約50〜100kmの中間圏において雷に伴って発生する発光現象であり、その一種であるスプライトはおもに高度約50〜90kmで発生する。日本では冬季の若狭湾周辺で多く観測されている。本校は2006年度に高知工科大学と共同で高高度発光現象に関する広域コンソーシアムを立ち上げてから、全国32校の高校、2校の大学とその周辺の高高度発光現象を共同観測し続けており、2022年度までにのべ6512件のスプライトを含む高高度発光現象を観測している。そのうち560件以上の観測データは複数の高校からの同時観測であり、発生位置と高度の分析が可能である。そしてスプライトには発生地点の地形との関係や起こる条件など、まだ未解明な点が多く残されている。そこで私たちは今までの蓄積データである同時観測イベントについて統計的に分析し、若狭湾周辺を中心とした日本海近郊のスプライトの発生位置や発生本数、形状との関係を明らかにしたいと考え、本研究を行った。

2. 方法

 2-1 撮影方法

 観測にはCCDカメラ Watec WAT-100N(超高感度白黒カメラ)を使用し、UFO Capture HD2(動画感知ソフト)によって発光の前後の動画を自動的にパソコンに記録している。分析ソフトであるUFO Analyzer V2は1観測地点からのスプライトの位置を分析するソフトで、ここではスプライトの高度は推定値を使用している。また、Sprite Analyzerは2観測地点以上からみたスプライトの位置を分析するソフトである。これらでは観測した画像に映り込んだ恒星と、スプライトの相対位置からスプライトの発生場所を特定することができる。 

 2-2 分析方法

 まず、共同観測校と同時観測に成功したデータを抽出した。2点観測以上の同時観測は約500件であった。今回使用したデータはこのうち、分析用データがそろっていること、スプライトの上端、下端が認識できることを満たしたイベント73件(画像データ162件)である(図1)。次にUFO Analyzer V2を使用してそれぞれスプライトの座標を求めた。この際スプライトの上端を80km、下端を70kmと仮定し、方位角と仰角を概算した。さらにこの分析データをSprite Analyzerにかけ、スプライトの発生高度を推定せずに、発生位置を算出した。

3. 結果

 3-1 各校の観測状況

 総観測数は6616件であり、年度別でみると直近5年間のうちでは令和1年度が最も多く391件であり、その後減少している。高校別でみると香川県立三本松高校が最も多く計2237件で全体の31%を占め、次いで静岡県立磐田南高校が計1885件で全体の28%であった。また、本校(高知県立高知小津高校)の観測数は計412件で兵庫県立神戸高校に次ぎ全体の4番目で6%であった。

 3-2 2点間観測と3点間観測での精度比較

 2点間観測と3点間観測での分析結果を比較すると緯度差・経度差は共に約±0.15度、上端差は約±6km、下端差は約±4.5kmであった。

 3-3 データ分析結果

 スプライトの特定の形状が特定の地域に集中するような傾向は見られなかった(図2)。そして、スプライトが単体で起きたときと同時多発的に起きたときの発生位置には明確な違いが見られなかった(図3)。スプライトが同時多発したとき、スプライトは10km〜70kmの範囲に広がって発生していることがわかった。加えて、30km〜40kmのイベントが多く見られた(図4)。

4.考察と今後の課題

 本研究では、スプライトの形状と発生地域の間に明確な偏りは見られず、単発と同時多発の場合でも発生位置に顕著な違いは確認されなかった。したがって、本研究のデータの範囲では、空間分布に明確な傾向は認められない。一方、スプライトの広がりは約10〜70 kmに分布し、特に30〜40 km付近で多く観測された。この原因は今後考察を深めていく。今後は、この広がり方に形状などの要素を組み合わせて解析し、相互の関係性について検討していきたい。さらに、本研究ではデータ数が限られていたため、今後はより多くのデータを用いた分析を進めていく必要がある。

5. 参考文献
清水裕河崎善一郎(2004).「Ⅰ.雷放電とは―雷放電の物理―」.J. Plasma Fusion Res. Vol.80, No.7 (2004), 589-596
中村貴弘ら(2004).「北陸冬季雷に伴う中間発光現象とその原因となる雷放電特性」.電学論B, 124巻8号, 2004年, 1012-1020
清水裕士(2016).フリーの統計分析ソフトHAD:機能の紹介と統計学習・教育・研究実践における利用方法の提案 メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 59-73.