講演情報
[O12-P37]セルオートマトンを用いた市川高等学校の防災避難経路の考察
*岡部 美月1 (1. 市川高等学校)
キーワード:
防災避難経路、セルオートマトン
防災避難経路については、古川ら(2016)の研究により、保育園では歩行速度の遅い児童がいる場合に経路の干渉により混乱が生じてしまうという課題が指摘されている。学校施設における研究では、福井県立武生高校(2021)や宇和島東高校(2018)の研究でシミュレーションが行われ、高校内での避難において渋滞ができやすい箇所を明らかにしたり、避難にかかる時間の推定を行ったりしていた。そこで、市川学園でも同様にシミュレーションを行うことで、現在の避難経路が適切であるかを確認するとともにより良い避難経路を見つけることができるのではないかと考えた。
セルオートマトンとは、ノイマン(John von Newmann)によって導入されたシミュレーションシステムのことである。渋滞、森林火災など拡散する現象のシミュレーションに使用されている。人がいるマスを 1、いないマスを 0 と設定し、進行方向に人がいなければ次の時刻で 1 マス進み、人がいれば次の時刻ではその場に留まり続ける(図1)。
市川学園市川高等学校は生徒数約 1300 人で、クラス数は各学年 11 クラスが3学年分あるため全体で 33 クラス、さらに同じ施設内には市川中学校もある大規模校である。施設は主に高校生の教室がある北館、主に中学生の教室がある南館、会議室や職員室がある本館の 3 棟からなり、それぞれはコミュニティプラザと呼ばれる渡り廊下によって接続されている。北館に市川高等学校、南館に市川中学校の普通教室があり、それぞれ北館は 5 階建て、南館は4階建てである(図 2、図3)。
まず、避難経路として使用される可能性のある廊下や階段の幅、長さを施設設計図から測定し、記録した。次にどのクラスがどの経路で避難を行うのか、クラス単位で場合分けを行った。さらに、避難経路を Excel のセルに落とし込める形に整理した。その際、セルオートマトンの条件を以下のように設定した。
・避難経路上に通行の妨げとなるものはなく、全ての生徒が自分の HR 教室にいる。
・1 クラスの人数を 40 人とする。
・生徒はクラスごとに並び 2 列で移動する。
・セル 1 マスの大きさは横 60cm、縦 80cm とし、1 マスにつき 1 人いるものとする。
以上の条件を基に、対象クラスの全パターンをセルオートマトンによりシミュレーションした。方法は北栄輔・脇田佑希子(2011)に準拠した。
先述の手順で行った実験をステップ数という考え方を用いて整理した。ステップ数とは、セルオートマトンにおいて時間経過を表す縦のマスの数を数えたときに、スタートから目的地(ここでは避難場所)に到着するまでに何セル必要かを数えたものである。ここでは大まかに避難場所までの所要時間を表す。また、高校生が避難に使える階段は、北館 A 階段、北館 B 階段、コミュニティプラザ B 階段の 3つである。
これらの階段に注目して、主に3つの経路で実験を行った(図4)。
それぞれ 1 つの実験内で 3 つの経路があるが、これら 3 つの中で最もステップ数が多いもの、すなわち最も時間がかかる経路と考えられるもののステップ数を実験全体のステップ数とした(図5、6、7)。このとき表 2 より、実験 1 全体のステップ数は 661、実験 2 全体のステップ数は 640、実験 3 全体のステップ数は645 となる。したがって、これら 3 つの実験の中では実験 2、すなわち各クラスが最寄りの階段を使用した時に全体として最も早く避難できると考えられる。また、北館 B 階段を使用した経路のステップ数が全ての実験で 3 つの階段の中で最もステップ数が少ない。一方、コミュニティプラザ B 階段を使用した経路のステップ数は全ての実験で3つの階段のうち最もステップ数が多くなってしまっている。以上を踏まえると、今回の 3 つの実験の中では実験 2 が最も早く避難できるが、先ほど述べた内容を加味すると、各クラスが最寄りの階段を使用した上で、北館 B 階段を使用するクラス数を実験 2よりも多く、コミュニティプラザ B 階段を使用するクラス数を実験 2 よりも少なく設定するとより早く避難できると考えられる。
参考文献
・愛媛県立宇和島東高等学校(2018):地震避難シミュレーションから本校の課題を考察する—1次元セルオートマトンを活用して—.
・福井県立武生高等学校(2021):学校の避難経路は本当に適切なのか.
・古川容子・佐野友紀・土屋伸一・藤井皓介・佐藤泰・畠山雄豪・長谷見雄二(2016):避難訓練調査に基づく保育園児の避難行動実態把握と避難安全確保の方策.
・北栄輔・脇田佑希子(2011):Excel で学ぶセルオートマトン.
セルオートマトンとは、ノイマン(John von Newmann)によって導入されたシミュレーションシステムのことである。渋滞、森林火災など拡散する現象のシミュレーションに使用されている。人がいるマスを 1、いないマスを 0 と設定し、進行方向に人がいなければ次の時刻で 1 マス進み、人がいれば次の時刻ではその場に留まり続ける(図1)。
市川学園市川高等学校は生徒数約 1300 人で、クラス数は各学年 11 クラスが3学年分あるため全体で 33 クラス、さらに同じ施設内には市川中学校もある大規模校である。施設は主に高校生の教室がある北館、主に中学生の教室がある南館、会議室や職員室がある本館の 3 棟からなり、それぞれはコミュニティプラザと呼ばれる渡り廊下によって接続されている。北館に市川高等学校、南館に市川中学校の普通教室があり、それぞれ北館は 5 階建て、南館は4階建てである(図 2、図3)。
まず、避難経路として使用される可能性のある廊下や階段の幅、長さを施設設計図から測定し、記録した。次にどのクラスがどの経路で避難を行うのか、クラス単位で場合分けを行った。さらに、避難経路を Excel のセルに落とし込める形に整理した。その際、セルオートマトンの条件を以下のように設定した。
・避難経路上に通行の妨げとなるものはなく、全ての生徒が自分の HR 教室にいる。
・1 クラスの人数を 40 人とする。
・生徒はクラスごとに並び 2 列で移動する。
・セル 1 マスの大きさは横 60cm、縦 80cm とし、1 マスにつき 1 人いるものとする。
以上の条件を基に、対象クラスの全パターンをセルオートマトンによりシミュレーションした。方法は北栄輔・脇田佑希子(2011)に準拠した。
先述の手順で行った実験をステップ数という考え方を用いて整理した。ステップ数とは、セルオートマトンにおいて時間経過を表す縦のマスの数を数えたときに、スタートから目的地(ここでは避難場所)に到着するまでに何セル必要かを数えたものである。ここでは大まかに避難場所までの所要時間を表す。また、高校生が避難に使える階段は、北館 A 階段、北館 B 階段、コミュニティプラザ B 階段の 3つである。
これらの階段に注目して、主に3つの経路で実験を行った(図4)。
それぞれ 1 つの実験内で 3 つの経路があるが、これら 3 つの中で最もステップ数が多いもの、すなわち最も時間がかかる経路と考えられるもののステップ数を実験全体のステップ数とした(図5、6、7)。このとき表 2 より、実験 1 全体のステップ数は 661、実験 2 全体のステップ数は 640、実験 3 全体のステップ数は645 となる。したがって、これら 3 つの実験の中では実験 2、すなわち各クラスが最寄りの階段を使用した時に全体として最も早く避難できると考えられる。また、北館 B 階段を使用した経路のステップ数が全ての実験で 3 つの階段の中で最もステップ数が少ない。一方、コミュニティプラザ B 階段を使用した経路のステップ数は全ての実験で3つの階段のうち最もステップ数が多くなってしまっている。以上を踏まえると、今回の 3 つの実験の中では実験 2 が最も早く避難できるが、先ほど述べた内容を加味すると、各クラスが最寄りの階段を使用した上で、北館 B 階段を使用するクラス数を実験 2よりも多く、コミュニティプラザ B 階段を使用するクラス数を実験 2 よりも少なく設定するとより早く避難できると考えられる。
参考文献
・愛媛県立宇和島東高等学校(2018):地震避難シミュレーションから本校の課題を考察する—1次元セルオートマトンを活用して—.
・福井県立武生高等学校(2021):学校の避難経路は本当に適切なのか.
・古川容子・佐野友紀・土屋伸一・藤井皓介・佐藤泰・畠山雄豪・長谷見雄二(2016):避難訓練調査に基づく保育園児の避難行動実態把握と避難安全確保の方策.
・北栄輔・脇田佑希子(2011):Excel で学ぶセルオートマトン.
