講演情報

[O12-P42]海藻堆肥による団粒構造形成と赤土流出抑制効果の検証

*池田 おと1、*池畑 裕萌1、*川上 紗寿1 (1. 鹿児島県立与論高等学校)

キーワード:

赤土流出、海藻堆肥、団粒化、ICP-AES、XRF

与論島は鹿児島県の最南端に位置し、亜熱帯気候に属している1。年間を通して気温が高いため、土壌動物や微生物の活動が活発である。その結果、有機物の分解速度は温帯地域よりも速く、土壌は水に流れやすい単粒構造になりやすいと考えられる。このため、与論島の畑の土は海へ流出しやすい。赤土流出は、サンゴ礁生態系が発達する与論島の海洋環境へだけでなく、観光産業へも影響を及ぼすことが懸念されている。また、土壌中の栄養分濃度が低下することで、農作物が育ちにくくなるという問題も生じる。さらに、与論島では海岸に大量に打ち上げられる褐藻綱であるアカモクの処理が課題となっている。これらの海藻は十分に活用されておらず、海岸景観の悪化につながっている。そこで本研究では、与論島における赤土流出の現状を把握するとともに、打ち上げられた海藻を堆肥化2して土壌の団粒構造を形成し、その効果としての流出抑制量を定量的に評価することを目的とした。本研究では、海藻を堆肥化して土壌に混合することにより団粒構造の形成を促進し、赤土流出の防止につながるかを検証した。

赤土流出の現状を把握するため、2025年5月15日から6月9日にかけて与論島海岸10か所で採水を行い、先行研究3の沿岸海水の値と比較した。また、堆肥化した海藻を施肥した土壌(海藻堆肥区)と堆肥化前の土壌(対象区)を用いて土壌流出実験4を行った。各区において同量の土壌と水道水を用い、45度に傾けた容器の上方から水を注ぎ、流出水の通過時間をストップウォッチを用いて計測し、流出した土壌量を測定するために回収した。回収した土壌は、東京大学大気海洋研究所において遠心分離機を用いて沈殿させ、乾燥後に重量を測定した。流出実験前後の水道水、堆肥化前後の土壌のFe濃度(赤土流出の指標)、PおよびKの元素濃度(植物の成長を促進する栄養元素の指標)を求めるため、2025年7月に東京大学大気海洋研究所において、水試料については誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)を、土壌試料については蛍光X線分析(XRF)を行った。

ICP-AES測定の結果、2022年から2025年にかけて、採水した海水試料中に含まれるFe濃度は1地点で増加が見られたものの、その他の海岸ではFe濃度およびP濃度はいずれも減少していた。気象庁(2026)5によると採水時期の2025年6月の降水量は、2024年6月の降水量の約4.7%減少しており、この降水量の変化が赤土の流出量にも影響した可能性が考えられる。また、土壌流出実験の結果、海藻堆肥区と対象区の流出水の通過時間は、それぞれ16.4秒、24.3秒であった。流出土壌量はそれぞれ87.6mg、157.3mgとなっていた。これは、土壌の団粒化構造が形成されたことによって土壌への水の浸透性が高まり、土壌流出が抑制された可能性が考えられる。XRF分析の結果、海藻対象区の土壌のFe濃度は対象区と比較して、0.966%増加した。P濃度は0.024%、K濃度は0.031%減少していた。

 これらの結果から、土壌構造が変化したため団粒化が進行し、土壌が流出しにくい状態になったことが示唆された。以上より、海藻を堆肥化して土壌に使用することは、土壌の団粒化を促進し、赤土流出の防止に有効である可能性が示された。今後は、本研究の成果を基に追加研究を行い、海藻堆肥が植物への成長の促進に効果があるのかということについても、さらに調査を実施する予定である。