講演情報

[O12-P45]2つのビル模型の間隔とビル風の関係〜自作の風洞実験装置を用いて〜

*谷内 椋1、*網野 佑哉1 (1. 城北中学校・高等学校 地学部)

キーワード:

ビル風、風洞実験、カルマン渦、ダウンウォッシュ

本研究の目的は、強風により飛来物を生じさせ、人や建築物に被害をもたらすビル風について、その再現と発生条件の特定である。そのため、自作の風洞実験装置とビル模型を用いてビル風の再現を試みた。 また、本研究は日本地球惑星科学連合2024の高校生ポスター発表にて発表した「ビル風とビル間の距離の関係の解明~自作風洞実験装置を用いて~」(2024年)の改良研究である。前回の研究では実験装置上方の煙により上方向からの観察に支障をきたしたため、2つのビル模型を横向きに倒して上下に並置することで横方向からの視点で観察できるようにし、その間隔を変化させ、ビル模型周辺を流れる煙(風の流れ)を観察した。 しかし、この方法では重力の向きが実際のビルと異なる。そのため、本研究では、透明なアクリル板の上にビル模型を配置することにより下からの観察が可能にし、さらにアクリル板の下に45度に傾けた反射鏡を設置することにより下からの視点を横から反射鏡を通して観察することが可能になった。加えて実験装置側面もアクリル板で構成することにより直接、横方向からの観察も可能にした。 実験装置について説明する。まずプラスチックストロー約900本を並列し、束ねたもので整流装置を作り、柱を用いた土台の上にその整流装置を置いた。これは紫色で囲われた部分に相当する。整流装置は扇風機で発生させた気流を安定させるために用いた。 次に水平方向に対し傾き45度になるよう反射鏡を設置し、それを黒いプラスチック段ボールで挟んで固定し、その上に床に対して平行なアクリル板(底面)を置く(添付画像を参照)。これによって、下からの視点での観察が反射鏡を通して横から可能になった。一番下のプラスチック段ボール(図において赤で囲われている部分)とアクリル板(底面)それぞれに対して垂直になるようにもう一枚のアクリル板(手前)を黒いプラスチックダンボールに差し込む。二面(下と写真手前側の側面)をアクリル板で構成し、残り二面(上と写真奥側の側面)を黒いプラスチック段ボールで囲い実験装置を構築した。さらに煙発生装置(水色で囲われた部分)を作った。これらを図のように左から煙発生装置、整流装置、実験装置、扇風機の順に設置する(添付画像を参照)。本実験では線香の煙を風の流れを可視化するために使用した。添付された画像において、同じ色で囲われた部分はそれぞれ並行である。 実験内容について説明する。まず、観察用実験空間の内部に光源の向きから見て高さ15cm横幅3cm奥行き6cmのビル模型2つを並列に設置する。煙発生装置(水色で囲われた部分)に線香を立てて並べる。実験環境を暗くするためカーテンを閉め室内の照明を消灯し、ライトを光源として橙色の矢印の方向から当てる。線香を着火し、扇風機を添付画像の向きで弱風で作動させ、ビル模型の間を通る気流を発生させた。2つのビル模型の間隔を1cmずつ変化させ、1cmから10cmまでの範囲で実験を行った。横方向からの映像と鏡を通して撮った映像(下からの視点)でそれぞれの間隔の煙の流れを撮影した。 実験結果は、鏡を通して撮った映像(下からの視点)において1-7cmそれぞれの間隔で風がビル模型の後方に流れ込む現象が見られた。これは実際のビル周辺に見られるカルマン渦に類似する現象である。また、1-10cmそれぞれの間隔において建物に風が当たり、風速が急加速する現象が見られた。これは実際のビル周辺に見られる剥離流に似た現象である。横方向の映像においてビル模型の間隔1-10cmそれぞれでビル模型後方の流れが下方向へ曲がるような挙動が見られた。この現象は高層建築物周辺で見られるダウンウォッシュという現象に類似している。ただし、これら本実験で見られたいずれの現象においても、流速分布や圧力分布を測定していないため、実際にビル風において見られる現象と同一であると断定することはできない。 考察として、本研究では自作の風洞実験装置を用いて、前回の研究より実際のビル風が発生する条件に近づけることができ、実際のビル風に見られるいくつかの現象と似た現象を見ることができた。課題点としては流速分布や圧力分布などの数値データを計測していなかったため、定量的な評価が不可能だったことが挙げられる。また、ビルの縮尺をただ小さくしてビル模型を作るだけでは、実際のビル風を再現する条件としては不十分であり、空気の粘性、具体的にはレイノルズ数を考慮する必要がある。しかしながら、本研究ではレイノルズ数を考慮していないため、実スケールへの単純な適用には限界がある。以上より流速分布や圧力分布などの数値データを計測し、レイノルズ数を算出し分析に用いることが今後の改善点であると考える。