講演情報
[O12-P50]粉末X線回折を用いた伊豆若草石の鉱物組成の同定と熱水変質の検討
*北村 祐介1、*杉山 優壮1、露木 大雅1、内笹井 怜1、遠藤 暖太1、田中 優花1、三室 心穂1 (1. 静岡県立韮山高等学校)
キーワード:
粉末X線回折、グリーンタフ、熱水変質
1.背景と目的
伊豆半島では古くから良質な石材が産出され、総称として「伊豆石」と称され、江戸城の石垣や日本銀行本店などに使われてきた[1] 。我々はこの中でも浴場の敷石に使われてきた「伊豆若草石」と呼ばれる岩石に興味を持ち調査した。伊豆若草石は2000万年前に凝灰岩が高温の水による変質作用を受けて変質した岩石で、青緑色をしている。歴史的、文化的価値のある伊豆石だが、現在はほとんど採掘されておらず、現存する建造物も解体されてしまう傾向にある。我々は伊豆石を取り巻く厳しい現状を変えるために伊豆石の知名度を高められないかと考え、伊豆若草石の発色を人工的に再現することを最終的な目標として研究を進めることとした。伊豆若草石の組成を調査した事例は見当たらず、我々の最終的な目標である伊豆若草石の人工的な再現をするためには、伊豆若草石の組成を明らかにすることが不可欠である。そのため、本研究は伊豆若草石の鉱物組成を明らかにし、熱水変質を検討することを目的とした。本研究では高温の水によって岩石を変質させる作用を熱水変質とする。また、本研究では伊豆若草石とは熱水変質を受けた緑色の伊豆石凝灰岩とする。
2.データと解析方法
本研究では、伊豆若草石の鉱物組成を解明する手段として、粉末X線回折(XRD)を用いた。XRDでは、測定から得られたスペクトルを既知物質のスペクトルと比較することで構成物質の同定及び定量を行うことができる[3] 。XRDの測定は浜松工業技術支援センターにて行い、機器はRigaku RINT-2500Xを用いた。管電圧40kV、管電流40mAでスキャン速度 4.000˚/min、ステップ幅0.020˚で測定した。本研究では標準試料を用意することができなかったため、複雑な混合物でも正確に重量分率を求めることができるリートベルド解析を用いた。スペクトルを解析するツールとしてMatch!4を用いた。このツールは多くの作業が自動化されている。
本研究では静岡県伊豆の国市東部で採取されたサンプル2つ(これを若草石1、若草石2とする)、伊豆の国市西部で採取されたサンプル1つ(若草石3)を用いた。若草石1はもろく、若草石2は一般に若草石の名で使われるもので、緑色の斑模様が見られる。若草石3は「戸沢石」の名で高級石材として使われるものである。
3.結果
XRDのスペクトルは別図に示す。スペクトルをデータベースと比較したところ、全試料に石英、曹長石、緑泥石が確認されたほか、若草石2・3にはイライト、若草石1には普通輝石が含まれることが判明したため、これらを対象としてリートベルド解析を行った。結果は以下の通りである。
若草石1:石英13.7%、曹長石42.1%、普通輝石21.7%、緑泥石22.5%
若草石2:石英29.9%、曹長石32.7%、イライト15.3%、緑泥石22.1%
若草石3:石英28.1%、曹長石20.1%、イライト4.8%、緑泥石47.1%
また、すべてのサンプルでモンモリロナイト等スメクタイトは検出されなかった。本研究の目的である熱水変質の検討には、含有鉱物の種類と概略の組成を把握できたため、十分なデータが得られたと考えられる。
4.考察と今後の課題
熱水変質ではpHや圧力、水/岩石比が影響することが知られている[4]が、本研究では最も代表的な温度について考察していく。熱水変質では高温になるにつれてスメクタイトが緑泥石に変化することが知られている[4] 。[4]に基づき、イライトや緑泥石等が存在し、スメクタイトが存在しない温度を参照すると、若草石は200~300℃程度で熱水変質を受けたと考えられる。普通輝石の存在から若草石1は比較的低い温度で熱水変質を受けた可能性がある。地中の温度は基本的に3℃/100mの地温勾配に支配される[4]ので深さの推定が可能だが、火山活動の影響を受けることがあるので考慮を要する。
今後は元素分析や標準試料を用いたXRDなどで精度を高めることを検討しているが、本研究の最終的な目標である若草石の人工的再現の研究を進めていく。300℃程度で金属カプセルを用いて高圧環境を再現することで、限られた設備でも人工的再現ができるのではないかと考えている。
5.謝辞
丸井住宅の川口英昭様、美しい伊豆創造センターの遠藤大介専任研究員、浜松工業技術支援センター様に感謝を申し上げます。なお、本研究は2025年度山崎自然科学教育振興会の助成を受けて行っています。
6.参考文献
[1] 伊豆石文化探究会
[2] 伊豆石とは:建築石材の東武クリエイト・タケダ
[3] X線回折装置の原理と応用:日本分析機器工業会HP
[4] 吉村尚久「続成作用と粘土鉱物」『粘土科学』, 42(3), 167-173(2003)
伊豆半島では古くから良質な石材が産出され、総称として「伊豆石」と称され、江戸城の石垣や日本銀行本店などに使われてきた[1] 。我々はこの中でも浴場の敷石に使われてきた「伊豆若草石」と呼ばれる岩石に興味を持ち調査した。伊豆若草石は2000万年前に凝灰岩が高温の水による変質作用を受けて変質した岩石で、青緑色をしている。歴史的、文化的価値のある伊豆石だが、現在はほとんど採掘されておらず、現存する建造物も解体されてしまう傾向にある。我々は伊豆石を取り巻く厳しい現状を変えるために伊豆石の知名度を高められないかと考え、伊豆若草石の発色を人工的に再現することを最終的な目標として研究を進めることとした。伊豆若草石の組成を調査した事例は見当たらず、我々の最終的な目標である伊豆若草石の人工的な再現をするためには、伊豆若草石の組成を明らかにすることが不可欠である。そのため、本研究は伊豆若草石の鉱物組成を明らかにし、熱水変質を検討することを目的とした。本研究では高温の水によって岩石を変質させる作用を熱水変質とする。また、本研究では伊豆若草石とは熱水変質を受けた緑色の伊豆石凝灰岩とする。
2.データと解析方法
本研究では、伊豆若草石の鉱物組成を解明する手段として、粉末X線回折(XRD)を用いた。XRDでは、測定から得られたスペクトルを既知物質のスペクトルと比較することで構成物質の同定及び定量を行うことができる[3] 。XRDの測定は浜松工業技術支援センターにて行い、機器はRigaku RINT-2500Xを用いた。管電圧40kV、管電流40mAでスキャン速度 4.000˚/min、ステップ幅0.020˚で測定した。本研究では標準試料を用意することができなかったため、複雑な混合物でも正確に重量分率を求めることができるリートベルド解析を用いた。スペクトルを解析するツールとしてMatch!4を用いた。このツールは多くの作業が自動化されている。
本研究では静岡県伊豆の国市東部で採取されたサンプル2つ(これを若草石1、若草石2とする)、伊豆の国市西部で採取されたサンプル1つ(若草石3)を用いた。若草石1はもろく、若草石2は一般に若草石の名で使われるもので、緑色の斑模様が見られる。若草石3は「戸沢石」の名で高級石材として使われるものである。
3.結果
XRDのスペクトルは別図に示す。スペクトルをデータベースと比較したところ、全試料に石英、曹長石、緑泥石が確認されたほか、若草石2・3にはイライト、若草石1には普通輝石が含まれることが判明したため、これらを対象としてリートベルド解析を行った。結果は以下の通りである。
若草石1:石英13.7%、曹長石42.1%、普通輝石21.7%、緑泥石22.5%
若草石2:石英29.9%、曹長石32.7%、イライト15.3%、緑泥石22.1%
若草石3:石英28.1%、曹長石20.1%、イライト4.8%、緑泥石47.1%
また、すべてのサンプルでモンモリロナイト等スメクタイトは検出されなかった。本研究の目的である熱水変質の検討には、含有鉱物の種類と概略の組成を把握できたため、十分なデータが得られたと考えられる。
4.考察と今後の課題
熱水変質ではpHや圧力、水/岩石比が影響することが知られている[4]が、本研究では最も代表的な温度について考察していく。熱水変質では高温になるにつれてスメクタイトが緑泥石に変化することが知られている[4] 。[4]に基づき、イライトや緑泥石等が存在し、スメクタイトが存在しない温度を参照すると、若草石は200~300℃程度で熱水変質を受けたと考えられる。普通輝石の存在から若草石1は比較的低い温度で熱水変質を受けた可能性がある。地中の温度は基本的に3℃/100mの地温勾配に支配される[4]ので深さの推定が可能だが、火山活動の影響を受けることがあるので考慮を要する。
今後は元素分析や標準試料を用いたXRDなどで精度を高めることを検討しているが、本研究の最終的な目標である若草石の人工的再現の研究を進めていく。300℃程度で金属カプセルを用いて高圧環境を再現することで、限られた設備でも人工的再現ができるのではないかと考えている。
5.謝辞
丸井住宅の川口英昭様、美しい伊豆創造センターの遠藤大介専任研究員、浜松工業技術支援センター様に感謝を申し上げます。なお、本研究は2025年度山崎自然科学教育振興会の助成を受けて行っています。
6.参考文献
[1] 伊豆石文化探究会
[2] 伊豆石とは:建築石材の東武クリエイト・タケダ
[3] X線回折装置の原理と応用:日本分析機器工業会HP
[4] 吉村尚久「続成作用と粘土鉱物」『粘土科学』, 42(3), 167-173(2003)
