講演情報

[O12-P52]黒点相対数における補正値の一般化

*鈴木 秀弥1、*兼子 優大1、森田 聖哉1、石田 健太1、鷹野 樹里1、竹山 港1、出羽 卯生子1、西澤 結菜1 (1. 静岡県立磐田南高等学校)

キーワード:

黒点相対数の補正値、国立天文台、収差、投影法による黒点観測

磐田南高校では1945年以来、半世紀以上に渡って投影法により黒点の観測を続け、黒点相対数を求めている。しかし、2023年に本校の望遠鏡が新調されたため、その性能差ゆえに現在の記録と過去の記録を同一視できなくなってしまった。本校では黒点相対数における補正値kはk=1としていたが、国立天文台を基準とした補正値を各望遠鏡に施せば、それを解消できると私達は考えた。補正値は本来、長年の記録をもとに算出されるが、この方法だと新しい望遠鏡ではそれを算出できない。そこで私達は、望遠鏡の性能からある程度平均的な補正値なら算出できるとではないかと考え、本研究を開始した。
 黒点相対数は投影板上に表現できる黒点の数、すなわち黒点面積の観測閾値に依り、黒点の面積分布は対数正規分布に従うことが知られている (Bogdan et al., 1988) 。よって、補正値、すなわち国立天文台と他の観測所における黒点相対数の比の値は、xy平面上の確率密度関数とx軸に挟まれた領域の内、閾値以上の部分の面積比の値となる。本研究において確率密度関数の平均値は国立天文台をもとにして求めた2.7212(n=346566)、標準偏差は先行研究を基に1.13とした(同上)。今平均値は国立天文台を基準としたが、このとき確率密度関数のグラフを左に国立天文台の観測閾値分だけ平行移動して考えている。
 観測閾値は、観測者が黒点を視認できるかどうかよりも投影板上に黒点を表現できるかどうかに左右される。投影板上では波長ごとの光路の違いから収差と呼ばれる像の乱れが生じ、そのうち色収差と球面収差が黒点の表現に大きく関わる。収差には、投影板上のどの地点でもその値が変わらないという性質があるため、光球像の縁の収差について考えればよい。これを考えるにあたって、また、黒点の暗さがもとの約20%残っていないと視認できない点 (Blackwell, 1946) 、実際のレンズは等凸レンズにおける収差を約95%軽減すること (Smith, 2007) を踏まえて、観測閾値を6つの望遠鏡ごとの定数で表すことができた。このとき、その単位はm2から太陽の表面積の半分を100万としたときの相対的な面積単位であるMSHへ変換した。
 投影板上の黒点は真の黒点と比べて、太陽が球形なことによって潰れた形をしている。黒点をその接面上にあると近似すると、投影板上の黒点面積[MSH]は、太陽中心から見た黒点と地球の距離α[rad]を用いて、真の黒点面積[MSH]のcosα倍となる。cosαはそれぞれの黒点が個別の値を持ち、平均的な補正値を1つの数式で表すときにそれを一つ一つ考慮するというのは現実的でない。そこで私達は、cosαの平均値を求めその値をcosαの代表的な値として採用することとした。黒点は太陽面緯度0度から30度の領域(以下、黒点の出現領域)にそのほとんどが出現し (Maunder, 1904) 、また、時期によって黒点が出現しやすい緯度が変化するが、太陽活動の1周期の内でみれば黒点の出現領域に太陽面緯度に関わらずほぼ等しい確率で出現することが知られている(同上)。以上の2点を踏まえて、黒点は太陽面緯度が0度から30度までの範囲に等しい確率で出現すると仮定した。加えて計算負荷軽減のために、光球は真球であり、太陽の自転軸は地球の公転面に対して常に同じ方向に7.25度傾いていると仮定した。地球から見た太陽の中心と黒点の距離[m]は、太陽の半径をR⦿[m]として、R⦿sinαとなるから、この平均値から間接的にcosαの平均値も求められる。地球の公転によって日々変化する太陽像はそれを回転させることによりある特定の形態へ帰着させられ、この形態から太陽の自転軸の見かけの傾きは0度から7.25度の範囲を動くことがわかる。以上のことからcosαの平均値は約0.8206であることがわかり、先程求めた補正値と黒点面積の観測閾値の式と併せて、平均的な補正値を望遠鏡ごとの定数のみで表すことができた。
 国立天文台は黒点観測を画像解析により行っていて、その精度はとても高く1MSH未満の黒点も理論上観測することができる。しかし、それほど小さなものは本物の黒点なのか、大気の揺らぎなどによってできた暗い部分なのか判別することは難しいため、確実に黒点と判断できる大きさである3MSHを国立天文台の観測閾値とした。これらをもとに磐田南高校における補正値を算出したところ、k=1.89となった。
 今後はより短期的な補正値を計算したり、過去の望遠鏡における補正値を用いて本研究の実用性を検証したりしていきたい。
 最後に、磐田南高校の鳥井久行先生、榑松宏征先生、ふじのくにミュージアムの青島晃先生をはじめとして、本研究にご助言してくださった方々に深く感謝申し上げます。