講演情報

[O12-P54]静岡県西部の天竜川流域におけるジルコン堆積時期の推定

*竹山 港1、*秀平 誠朗1、*青島 正明1 (1. 静岡県立磐田南高等学校)

キーワード:

ジルコン、天竜川、年代推定、鮫島海岸、色分析

1.背景と目的
 本校ではこれまで、遠州灘鮫島海岸において、重鉱物の濃集したガーネットサンドに関する研究・調査を行ってきた。ジルコンは色や形状の違いによる起源の推定が可能であり、昨年の研究では、ジルコンの色や形に着目してジルコンの供給岩体を推定した。この結果、鮫島海岸のジルコンは主に領家帯の生田・天竜峡花崗岩から供給されていることを明らかにした。しかし、ジルコンがいつの地質年代から供給されているのかは不明である。そこで、ジルコンの堆積年代を推定することを目的として調査を行った。ジルコンを用いた年代推定法にはU-Pb法(ウラン-鉛法)が知られているが、この方法では高額な設備と技術が必要なため、高校生がU-Pb法による年代推定を行うことは難しい。そこで私たちは、先行研究で確立した色と形による起源推定法を用いて、堆積した地層からジルコンを採取し、地質年代毎の天竜川の影響を推定しようと考えた。
2.方法
 現在、天竜川周辺の地層の堆積年代は、下位ほど古くなることが地質図からわかっている。そこで私たちは、天竜川の下位から上位にかけて11地点の砂質堆積物を採取し、乳鉢を用いて全体を1mm未満に砕いたものを25g量り取って試料を作成した。次に採取した試料を濃集し、ジルコンのピックアップを行った。新しいものから①〜⑪と資料番号を付け、年代比較に用いた。試料ごとの堆積年代は次のとおりである。①現在〜1万1700年前(天竜川低地堆積物・新生代第四紀完新統)②と③1万1700〜258万年前(磐田原礫層・小笠層群・新生代第四紀更新統)④〜⑥258万〜500万年前(曽我層群・掛川層群・新生代新第三紀鮮新統)⑦〜⑨500万〜2300万年前(西郷層群・新生代新第三紀中新統)。⑩2300万〜6600万年前(倉見層群・新生代古第三紀)。⑪6600万〜2億6000万年前(三倉層群・中生代白亜紀)。また、ジルコンの色分析には、すばる色分析ソフト「Makarii」を用いてRGBの三角ダイヤグラムに表示して比較した。
3.結果
 ①〜③、⑤~⑧でジルコンを採取することができたが、④、⑨〜⑪ではジルコンを採取できなかった。以上より、ジルコンの供給は⑧の堆積年代から始まり⑤まで続き、④の堆積年代で一時的にジルコンの供給がなかったが、再び➂から供給が再開して①まで続いたことがわかった。
4.考察
 天竜川起源の鮫島海岸のジルコンがいつから堆積しているのか調査するためには、採取したジルコンが鮫島海岸と同起源であるかを調べる必要がある。ジルコンは色による起源推定が可能と先行研究からわかっているため、すばる色分析ソフト「Makarii」を用いて鮫島海岸と今回採取したジルコンを色分析したところ、すべての地点で鮫島海岸と色の傾向が一致していた。これにより全てのジルコンが天竜川起源の鮫島海岸と同起源のものであることがわり、年代推定に用いることができるようになった。次に各地層の堆積時に天竜川がどこを流れていて、ジルコンが見つからなかった時代は当時の海岸線がどこにあったかを確かめるために、文献調査を行ったところ、現在の鮫島海岸周辺は、⑧が堆積するより以前の⑨~⑪の年代では遠州灘の海底であったが、その後の隆起と天竜川の流入によって堆積物が供給されて陸化していったことが知られている(柴ほか,2024)。上記の変動と私達が仮定したジルコンの供給が開始された年代が一致していることから、⑧の堆積した500万〜2300万年前から天竜川よりジルコンが供給されて、沿岸流により運ばれていたことがわかった。また、④の時代は、内湾が砂州により外洋から切り離されて潟湖となっていたことが推定されており(柴ほか,2024)、一時的に遠州灘からのジルコンの供給が途絶えたのは、このためであると考えられる。
5.まとめ
 鮫島海岸の周辺では、約2300万年前からのジルコンの供給が始まり500万前まで続いたが、500万〜258万年前には、外洋から切り離されて潟湖となり、ジルコンの供給がなかった。その後,258万年から現在までは再びジルコンの供給が続いた。
 最後に研究に適切なご助言をしてくださった顧問の榑松宏征先生、副顧問の立石紀子先生、山口青夏先生、ふじのくに地球環境史ミュージアム研究員の青島晃様、研究にご協力して頂いた地学部OBの皆様には感謝申し上げます。
6.参考文献
柴ほか静岡県掛川市に分布する小笠層群下部層の堆積過程
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosocabst/2010/0/2010_0_554/_pdf/-char/ja
掛川市公式note「100万年以上前の海の世界を今に伝える『掛川層群』」
https://kakegawa-city.note.jp/n/n8d6df655020b
柴ほか 静岡県の中新統,倉真層群と西郷層群の層序と堆積過程
https://www.jstage.jst.go.jp/article/agcjchikyukagaku/74/4/74_137/_pdf/-char/ja
地質調査総合センター
https://gbank.gsj.jp/ld/resource/zfk/facies/m567_f012.html
見付地質図幅説明書
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_11060_1957_D.pdf
吉岡ほか 「遠州灘鮫島海岸のジルコンの供給岩体の推定」
https://gakusyu.shizuoka-c.ed.jp/science/sonota/ronnbunshu/R6/243008.pdf