講演情報

[O12-P56]千里浜海岸に流入する河川の砂の色と成分の比較

*南谷 優里愛1、坂口 友菜1、松生 英己1、岡辺 紗和1 (1. 石川県立七尾高等学校SSC)

キーワード:

千里浜海岸、海岸浸食、砂の供給、環境分析、元素分析、クラスター解析

[背景と目的]
石川県の千里浜海岸は、日本で唯一、一般の自動車が走行できる砂浜「千里浜なぎさドライブウェイ」として知られている。しかし近年、深刻な海岸浸食により砂浜の幅が減少しており、観光資源および防災の観点から大きな問題となっている。この浸食の原因の一つとして「砂の供給不足」が指摘されている。
先行研究では、主な砂の供給源とされる手取川からの供給量については多くの調査が行われてきたが、千里浜に直接流入する小規模河川がどの程度砂の供給に寄与しているかについては、ほとんど調査が行われていない。本研究では、千里浜海岸に流入する複数の河川に着目し、採取した砂の色(有色・無色岩片の割合)および元素組成を詳細に比較することで、各河川による砂の供給可能性を明らかにすることを目的とした。
[データおよび解析方法]
調査は段階的に3つのステップで実施した。
まず【調査1】として、千里浜に流入する羽咋川、相見川、宝達川、前田川、大海川の5河川(地点A〜E)および、比較対象として千里浜海岸の陸域3地点(F:レストハウス、G:志雄PA、H:今浜IC)、さらに主要供給源である手取川河口(地点I)から砂を採取した。顕微鏡写真を用いて指定範囲内の有色・無色岩片の個数を計測し、その割合を算出した。
次に【調査2】では、砂の由来を追跡するため、羽咋川、宝達川、大海川の3水系において、上流から河口にかけて複数地点(計13地点)で砂を採取し、同様の手法で岩片の割合の変化を追跡した。
最後に【調査3】として、岩片の割合だけでは判別困難な砂の起源を特定するため、蛍光X線分析装置を用いた元素分析を実施した。各河川の河口、上中流、および手取川の砂の元素組成を調べ、クラスター解析によってその類似性を評価した。
[結果]
【調査1】の結果、手取川は他の河川に比べて有色岩片の割合が極めて高いことが判明した。興味深いことに、手取川からの供給が主と考えられていた千里浜海岸の陸域3地点(F, G, H)の割合が手取川の数値と一致せず、直接流入する河川の影響が示唆された。
【調査2】の区間比較では、羽咋川と大海川において、河口付近の有色岩片割合が上中流よりも高くなり、手取川の数値に近づく傾向が見られた。一方、宝達川では上流から河口にかけて割合の変化が少なく、独自に砂を供給している可能性が示された。
【調査3】の元素分析およびクラスター解析の結果、各河川の河口付近の砂は、全体として手取川とは異なる元素組成グループに属しており、類似性は低いことが分かった。しかし、羽咋川河口の無色岩片に限っては、手取川河口の組成と高い類似性を示した。また、羽咋川の上中流と河口ではクラスターが分かれたことから、河口部には外部(海域等)からの砂が強く流入している実態が浮き彫りとなった。
[考察と今後の課題]
本研究の多角的な分析により、各河川の砂供給の可能性が整理された。宝達川および大海川については、上流から河口にかけての組成の一貫性、および手取川との組成の違いから、自河川から千里浜への砂の供給に寄与している可能性が高いと考えられる。対照的に羽咋川は、河口部に手取川由来と推測される砂が逆流入しており、自身の河川からの供給寄与は低いと推察される。
今後は、季節による砂の移動や、波浪の影響による漂砂の動態を考慮に入れた継続的なモニタリングが必要である。また、本研究で得られた各河川の「砂の指紋(元素組成)」を用いることで、千里浜全体の堆積物分布における各河川の貢献度を定量的に評価し、効果的な養浜対策や浸食防止策の立案に繋げていきたい。