講演情報

[O12-P58]太陽の周縁減光における波長依存性についての観測的研究

*櫻井 優輝1、*江口 真由美1、*小倉 遙河1、*黒澤 怜1、*小泉 翔愛1、*佐々木 健人1、*寺原 直希1、*中根 陽輝1、*渡部 風香1 (1. 川口市立高等学校)

キーワード:

太陽、周縁減光、分光

1.要旨と研究背景
私たちは、学校で所有している分光器を活用した研究に取り組んでいる。今回は、太陽の周縁減光について研究を行った。太陽の周縁減光とは、中央部から周縁部に向けて太陽が徐々に暗くなる現象である。図1に示すように、太陽の中央部では光球から深い層まで見通すことができ、より高温の層からの光を観測できる一方、周縁部では浅い層までしか見通すことができないため、比較的低温の層からの光しか観測できない。そこで私たちはスリットスキャン分光観測を行い、可視光領域においては周縁減光に波長依存性があることを確認した。また、その結果からプランクの法則に基づいて波長ごとの太陽中央部の温度を求め、その見通せる深さについて可視光から近赤外領域にかけて理論的に考察した。

2.観測方法
場所:埼玉県川口市 川口市立高等学校屋上
日時:2026年3月24日 12:27~14:05(JST)
望遠鏡:屈折望遠鏡 (口径60mm、焦点距離330mm Sharpstar ED60)
減光フィルター:ND1000+ND8
R1(近赤外領域観測時に装着、可視光領域の高次スペクトルを除外するため)
分光器:低分散分光器 VEGA (昭和機械製作所)
カメラ:ZWO ASI 178MM
可視光範囲と近赤外領域(通常露出)、近赤外領域(露出過多)に分け、太陽の日周運動を利用してスリットスキャン観測をそれぞれ5回行った。スリットスキャン観測は、一定のセンサー位置を使用しているため、Dark Flatの一次処理を必要としないという利点がある。また、近赤外領域はカメラの感度が低いなどの理由で波長ごとの観測値の差が大きく、十分な観測値が得られないため、通常露出と露出過多に分けて観測した。

3.解析方法
①得られたデータを図2のように分割した領域でスペクトルの平均強度を可視光領域では350nm から700nmまで、近赤外領域では650nmから1000nmまでの範囲で50nm毎にデータを平均して求めた。その後、それぞれの波長におけるスペクトル強度の最大値を1として、周縁減光の割合をグラフに表した(図5,図6)。また、500nm~550nm、800nm~850nmにおける信頼区間95%の標準誤差を示した(図7,図8)。

②太陽の中央部と周縁部の強度比を①で導き出したスペクトルデータを利用して求めた。その後、プランクの公式[1] (図3)を利用して各波長のスペクトル強度I を放射強度BλT に相当するものと考え、波長ごとに太陽の中央部の温度Tを算出した。さらに、太陽の温度と深さの関係を表した先行研究論文[2](図4)を用いて観測できる波長ごとの太陽の中央部の見通せる深さを導出した (図9,図10)。

4.結果
①図5, 図6より太陽の周縁部に近づくにつれ、どの波長帯も強度が弱くなっている。
図5, 図6より短波長のほうが長波長に比べ、850nm~900nmまではスペクトル強度の減衰が大きくなる傾向がある。
②図9より可視光領域では波長が短くなるほど、温度が高くなり、見通せる深さが増す。
近赤外領域では波長が長くなるほど、温度が高くなり、通せる深さが増す。

5.考察
・どの波長帯においても太陽の中央から周縁に向けてスペクトル強度の減衰があるのは、シュテファン・ボルツマンの法則によるものだと考えられる。
・可視光から900nmまでの範囲で、短波長になるほど周縁減光が大きくなるという波長依存性が見られるのは、ウィーンの変位則によるものだと考えられる。
・650nm~700nm以降で温度と深さについて逆の傾向が見られた(図10)のは、負水素イオン(H-) の束縛-自由遷移(b-f)による影響と考えられる[3](図11)。
・波長依存性に関してはウィーンの変位則に加えて、負水素イオンの吸収が影響しているのではないかと考える。

6.参考文献
[1]天文学辞典 https://astro-dic.jp/
[2]Gingerich,Noyes,Kalkofen and Cuny, Solar Physics 18,347(1971)
[3]野本憲一、定金晃三、佐藤勝彦『恒星』シリーズ現代の天文学[第2版]第7巻p113、日本評論社(2025)