講演情報
[O12-P62]重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する 第4報
*氷川 海人1、*吉村 知怜1、*大河内 雛希1、*丸山 嘉祥1、*次田 凛1、*藏田 蓮叶1、*桑坂 拓磨2、*吉谷 思唯2、*小濵 晴輝1、*小川 怜央2、*五十嵐 斗和3、*下浜 颯真3、*日高 豹牙3、*吉田 真英3 (1. 大阪府立春日丘高等学校 定時制の課程、2. 徳島県立富岡西高等学校、3. 大阪府立今宮工科高等学校 定時制の課程)
キーワード:
重力可変装置、火星重力、水の浸透
背景と目的米航空宇宙局(NASA)などの研究チームは,火星の地表に塩を含む水が流れている可能性を強く示唆する証拠を2015年に見つけた.火星表面で水はどのように流れているのだろう.また,火星の砂は水をどう染みこませているのだろう.われわれの先輩は2017年,製作したばかりの重力可変装置を使って火星重力をつくり,簡易的な砂への注水実験を行った.2024年に砂の粒径2種,重力値は2つの4通りの組み合わせで実験を行った.この実験では,浸透速度がだんだん遅くなり一定の速さになることを確認した.さらに,昨年,われわれは砂への水の浸透実験装置を改良し,条件の違いによる水の染み込む様子の変化を見ようと試みた.粒径を4種,重力値を4条件準備し,16通りの条件を設定し,重力と砂の粒径と染み込む速度(絶対値)の関係を実験的に確認した.その結果は,粒径1.19mm,1.75mm,2.25mmの砂の場合,終端の染み込む速度は重力に比例した.しかし,粒径0.85mmの砂では,これらの結果とは異なり,重力が大きくなったとき(1G)に,染み込む速度は逆に小さくなってしまった.この原因を突き止めるために,実験を重ねることにした.
3.重力可変装置と水の染み込み実験装置
アトウッドの滑車を応用して重力可変装置を製作した[5-8].落下棟の上部に自転車の車輪を滑車として利用したタイプと,2個の金属滑車を設置したタイプの2種類の装置を設計し製作した[2-4,8].落下カプセルと上昇カプセルをワイヤーで繋ぎ,滑車に吊るした.上昇カプセルを手で支え,実験準備が終了後,手を離してカプセルを解放する.上昇カプセルの制動には,ナイロンのネットを使用した.落下カプセルに加速度計を取り付け,重力加速度を測定した.落下カプセルはビーズクッションで受け止め,装置への衝撃を吸収させた.
砂が水に染み込む様子を観察するため,落下カプセル内に水の浸透装置を設置した.この装置は水をためておく上部容器,砂を詰めた下部容器,上部容器の底の穴を塞ぐワイン栓からできている.ワイン栓につけられた糸の先は落下棟の天板に接続されている.注水する水の量は10ccとした.上部容器の底に穴が空いており,ワイン栓で塞いでいる.下部容器には砂(ガラスビーズ)を詰めておく.実験は,落下カプセルを落下させ,落下カプセル内が目的の重力値に達した位置でこのワイン栓が抜け,上部容器の水が下部容器の砂の上に流れ落ちる.水が砂に染みこむ様子を高速度撮影(240fps)した.
砂として,粒径0.85mm,1.19mm,1.75mm,2.25mmの4種のガラスビーズを用いた.また,重力値は0.23G,0.36G,0.7G,1.0Gを生成した.浸透中の重力値はほぼ一定である.
4.実験結果
水の染みこむ先端の位置を計測し,水の染み込む速度の時間経過をみると,時間がたつにつれて染み込む速度の絶対値は小さくなっていき,一定の値になる.測定の終わりの0.1秒間の速度を平均して,終端速度とした.この染み込む終端速度と重力の関係を粒径毎に調べた.粒径が1.20,1.75,2.25mmでは,重力が小さくなると終端速度の絶対値は小さくなる.終端速度と重力は比例関係にあった.また,重力と粒径の2乗の値が比例関係にあった.しかし,粒径0.85mmでは,逆に重力が小さくなると終端速度の絶対値は大きくなった.粒径0.85mmの砂での現象が,他の粒径とは明らかに異なった.
5.考察
なぜ0.85mmでは他の粒径と終端速度が逆センスになっているのか?私たちは,重力によって砂の充填率が変化したためだと考えた.粒径1.20mm火星重力での連続写真において,砂の表面の位置が,水が落ち始めたときと比べて0.375秒後には上昇していることがわかった.これは,重力が小さくなったために,砂の間隔が広がり,染み込む速度が大きくなったのだと考えた.粒径の大きな粒子は,砂の質量が大きいため間隔は広がったが,速度が変わるほどの間隔ではなかったと解釈した.粒径0.85mmで地球重力での連続写真を調べた.粒径1.20mmの砂とは逆に,表面は沈んでいた.これは,砂に染みこめずに上部に溜まっている水の圧力で,砂の間隔が狭くなり,水が流れにくくなったせいだと考えた.そのため,染み込む速度が小さくなってしまった.
6.まとめと今後の展望
粒径0.85mmの砂に染み込む水の挙動から,重力と砂の間隙の関係,砂上の水の圧力の影響を見出した.
重力による砂の間隙の影響を受けない粒径の閾値がありそうである.この閾値より大きい粒径の砂においては,染み込む速度は重力に比例し,また粒径の2乗に比例する.
下部容器に溜まらずにしみこんで行く水の量を確定する必要がある.速度変化が大きい領域(染み込み始めた領域)の考察を進めるために,ダルシーの法則を使って定式化を心みたい.また,求められた各定数を確認し,実験で得られた速度との整合性を確認しなければならない.これらを次に,染み込み実験から斜面を流れる水の実験に移行することを考えている.
3.重力可変装置と水の染み込み実験装置
アトウッドの滑車を応用して重力可変装置を製作した[5-8].落下棟の上部に自転車の車輪を滑車として利用したタイプと,2個の金属滑車を設置したタイプの2種類の装置を設計し製作した[2-4,8].落下カプセルと上昇カプセルをワイヤーで繋ぎ,滑車に吊るした.上昇カプセルを手で支え,実験準備が終了後,手を離してカプセルを解放する.上昇カプセルの制動には,ナイロンのネットを使用した.落下カプセルに加速度計を取り付け,重力加速度を測定した.落下カプセルはビーズクッションで受け止め,装置への衝撃を吸収させた.
砂が水に染み込む様子を観察するため,落下カプセル内に水の浸透装置を設置した.この装置は水をためておく上部容器,砂を詰めた下部容器,上部容器の底の穴を塞ぐワイン栓からできている.ワイン栓につけられた糸の先は落下棟の天板に接続されている.注水する水の量は10ccとした.上部容器の底に穴が空いており,ワイン栓で塞いでいる.下部容器には砂(ガラスビーズ)を詰めておく.実験は,落下カプセルを落下させ,落下カプセル内が目的の重力値に達した位置でこのワイン栓が抜け,上部容器の水が下部容器の砂の上に流れ落ちる.水が砂に染みこむ様子を高速度撮影(240fps)した.
砂として,粒径0.85mm,1.19mm,1.75mm,2.25mmの4種のガラスビーズを用いた.また,重力値は0.23G,0.36G,0.7G,1.0Gを生成した.浸透中の重力値はほぼ一定である.
4.実験結果
水の染みこむ先端の位置を計測し,水の染み込む速度の時間経過をみると,時間がたつにつれて染み込む速度の絶対値は小さくなっていき,一定の値になる.測定の終わりの0.1秒間の速度を平均して,終端速度とした.この染み込む終端速度と重力の関係を粒径毎に調べた.粒径が1.20,1.75,2.25mmでは,重力が小さくなると終端速度の絶対値は小さくなる.終端速度と重力は比例関係にあった.また,重力と粒径の2乗の値が比例関係にあった.しかし,粒径0.85mmでは,逆に重力が小さくなると終端速度の絶対値は大きくなった.粒径0.85mmの砂での現象が,他の粒径とは明らかに異なった.
5.考察
なぜ0.85mmでは他の粒径と終端速度が逆センスになっているのか?私たちは,重力によって砂の充填率が変化したためだと考えた.粒径1.20mm火星重力での連続写真において,砂の表面の位置が,水が落ち始めたときと比べて0.375秒後には上昇していることがわかった.これは,重力が小さくなったために,砂の間隔が広がり,染み込む速度が大きくなったのだと考えた.粒径の大きな粒子は,砂の質量が大きいため間隔は広がったが,速度が変わるほどの間隔ではなかったと解釈した.粒径0.85mmで地球重力での連続写真を調べた.粒径1.20mmの砂とは逆に,表面は沈んでいた.これは,砂に染みこめずに上部に溜まっている水の圧力で,砂の間隔が狭くなり,水が流れにくくなったせいだと考えた.そのため,染み込む速度が小さくなってしまった.
6.まとめと今後の展望
粒径0.85mmの砂に染み込む水の挙動から,重力と砂の間隙の関係,砂上の水の圧力の影響を見出した.
重力による砂の間隙の影響を受けない粒径の閾値がありそうである.この閾値より大きい粒径の砂においては,染み込む速度は重力に比例し,また粒径の2乗に比例する.
下部容器に溜まらずにしみこんで行く水の量を確定する必要がある.速度変化が大きい領域(染み込み始めた領域)の考察を進めるために,ダルシーの法則を使って定式化を心みたい.また,求められた各定数を確認し,実験で得られた速度との整合性を確認しなければならない.これらを次に,染み込み実験から斜面を流れる水の実験に移行することを考えている.
