講演情報

[O12-P65]不圧地下水の高度分布による文京区内の地下水の可視化

*和田 蒼一郎1 (1. 筑波大学附属高等学校)

キーワード:

不圧地下水、武蔵野台地、文京区、地下水位

[動機と目的]
 文京区を含む武蔵野台地の地下水位についてはこれまで多くの資料、論文で地図による可視化が行われてきているが、文京区を含まない多摩ー代々木間のみに注目しているものがほとんどであり、文京区を含んでいるものに関しても区内に2本等高線が引かれているだけの大雑把なものである。また、特定の土地の地下水位は基本的に各都道府県が管理する地盤沈下観測井と呼ばれる井戸においての水面の高さから判断できるが、文京区には地盤沈下観測井が設置されておらず、明確な地下水位を判断することができない。 そこで、本研究では、東京都内文京区における不圧地下水の地下水位を地図として可視化することを試みた。

[方法]
 先行研究を踏まえ、武蔵野丘堆積物基底面の等高線図と沖積層基底面の等高線図を色分けして重ね合わせた図を作成した。武蔵野丘堆積物基底面は青色から黄色へと近づくほど(-10〜20m)、沖積層基底面は橙色が濃くなるほど(-10〜10m)標高が高くなっている。しかし、問題が2つある。1つは帯水層を予測するための湧水地点が三箇所では足りないこと。もう1つはこの図だけでは文京区内を網羅できていないこと。帯水層基底面が存在しない白地図の区域が存在してしまっている。これらの問題は、以下のようにして対応する。 
1.帯水層基底面となりうる地層を下総層群から加え、地図を作成した。
2.文京区内でフィールドワークを行い、湧水地点を調査した。
3.環境省の定める湧水地点と、フィールドワークによって示された湧水地点と各地図とを重ね合わせ、帯水層基底面の地質として機能している部分を予測した。また、これらを踏まえて最終的な地下水位の平面図を作成した。

[結果]
 地盤沈下観測井が設置されていない文京区において、湧水地点の標高を観測井の代替データとして活用することにより、不圧地下水の地下水位を平面地図として可視化した(図)。ただし、本研究には複数の限界がある。地図の作成にあたっては「文京区内での地層の逆転は生じていない」「各地層の帯水層として期待できる部分は空間的に一定である」という前提を置いており、これが実際の地質条件と乖離する可能性は否定できない。また、沖積層・上泉層については湧水の参照データが得られなかったため分析から除外せざるを得なかった。

[結論]
 今回作成した図は静的なモデルであり、降水量の変動や季節変化に伴う地下水位の変動を予測できるものではない。これらの点を踏まえると、本研究の成果はあくまで文京区の不圧地下水位の概念的な把握に資するものであり、実際の地下水利用にあたっては別途精密な検査が求められる。以上の限界はあるものの、観測井に依存しない手法によって文京区の不圧地下水位を区全域にわたって初めて概念的に示した点は、本研究の独自の貢献といえる。今後、地下水の安全かつ有効な利用を検討する場面において、本研究の成果を基礎資料として活用することは十分に可能だと言えるだろう。今後の展望については、ひとまず文京区に観測井が設置されることを祈るばかりである。