講演情報

[O12-P68]家庭用冷凍庫を用いた湖氷上におけるフロストフラワーの再現実験手法に関する新たな提案

*中山 颯仁1、*渕名 恭平1 (1. 中央大学附属高等学校)

キーワード:

フロストフラワー、再現実験

1研究背景・目的
フロストフラワー(以下FFと略称)とは結氷した海や湖の氷の上に水蒸気が付着して結晶を作り,それが発達して花のように見える自然現象のことである(図1).FFの発生メカニズムは,氷下の暖水からの熱供給によって氷から水蒸気が昇華し,氷上に水蒸気の過飽和層が形成される中で,氷面上の突起やへこみが核となって水蒸気が凝華し種結晶が生まれ,さらに水蒸気の連続的な凝華によって結晶が成長していく説明される.またFFの発生条件として,①湖の表面が凍っていて積雪が無い②気温-15℃以下③ほぼ無風状態の3点が知られている.
再現実験の先行研究として,低温室やガラスビーズを用いて海氷上のFFを再現しブラインのしみあがり機構に関して検討したもの(舩橋ほか,2020)や,遠心ファンや冷蔵室を用いて海氷湖氷上のFFを再現し,その成長模様とイオン組成を調査したもの(H. K. Roscoe, et al.,2011)などがある.しかし,いずれも大型かつ高価な設備・装置が必要であり小規模実験は見当たらない.また,海氷上のFFの再現実験は存在するが,湖氷上のものはほとんど無い.そこで本研究では,家庭用冷凍庫を用いて湖氷上のFFを再現する新たな手法を確立することを目的とする.
2研究方法
2-1氷表面上の穴の有無
氷表面に穴を設けて氷表面上に優先的に氷の結晶を生成し,水蒸気の過飽和層からの凝華が全方向から起きるようにすることでFFを再現することを目的とした.装置は図2に示す.
2-2バブラーを用いた水蒸気供給装置の使用   
バブラーを用いることで水蒸気を吹付けて(鶴田,2024),FFを再現することを目的とした.装置および手順は図3に示す.なお、冷凍庫-22℃,バブラー内の水温を約20℃,冷却時間3時間に設定した.
2-3バブラーと自作箱状機構を用いたFFの再現
自作箱状機構を用いることで実験時間の短縮を目的とした.装置および手順は図3に示す.なお,冷凍庫-22℃、バブラー内の水温を約20℃、冷却時間5時間に設定した.  
3結果
2-1の結果を図5で示す.氷の表面上から形成された結晶は特定の方向ではなく多方向に成長していたが,氷表面から成長した葉状模様を有する結晶は観察されず,FFのような全方向への発達を示さなかった.よって,2-1の条件下ではFFは形成されなかったと判断した.
2-2では図6に示す.これは図1のFFと酷似していて全方向へ発達した結晶であった.このことから,2-2の条件下においてFFが形成されたと判断した.
2-3では図7に示す.これらは,2-2で得られた結晶と酷似していた.よって2-3を用いることで同様の結晶をより短時間で形成できることが示唆された.
4考察
2-1の結果から,FFが発生しなかった要因として昇華・蒸発した水蒸気が発泡スチロール外へ逸散で過飽和層が形成されにくかったこと,および水蒸気量が不足していたことの2点が挙げられる.そこで2-2では,2-1で得られた結晶を種結晶(氷の核)として転用し装置に蓋を設置し,バブラーを用いて水蒸気を供給した.その結果,FFと判断される氷結晶の形成が確認された.さらに,2-3の実験結果から,短時間でFFを再現できることが示された.以上のことから,本研究で提案した手法は,FFの安価な室内再現実験手法としては有効であると考えられる.
5今後の課題および展望
今後は,温度・水温・冷却時間を系統的に調節しFFの生成条件を詳細に検討するとともに,本手法の再現性および妥当性を検証する必要がある.
また,海氷と湖氷におけるFFの差異を検証することが困難であるため,新たな実験手法の検討も必要である.
参考文献
舩橋沙貴・尾関俊浩・安達 聖,2020.塩水氷上の霜柱状突起から成長するフロストフラワー ―海氷上のブラインのしみあがり機構に関する水槽実験―,雪氷研究大会講演要旨集.
H. K. Roscoe, B. Brooks, A. V. Jackson, M. H. Smith, S. J. Walker, R. W. Obbard, E. W. Wolff,2011.Frost flowers in the laboratory: Growth, characteristics, aerosol, and the underlying sea ice.Journal of Geophysical Research Atmospheres. Volume116, IssueD12.
鶴田拓海,2024.対流を考慮した人工雪発生装置の開発.第22回日本地質学会ジュニアセッション.
謝辞
本研究を進めるにあたり,田島丈年先生・三輪貴信先生(中央大学附属高等学校)ならびに鶴田拓海様(中央大学)には,終始多大なご指導を賜った.ここに深く感謝の意を表する.