講演情報
[O12-P69]扇風機を用いた簡易過重力発生装置の製作と結晶成長の基礎的研究
*櫻井 翔夢1 (1. 中央大学附属高等学校)
キーワード:
過重力、M5Stack Fire、塩化アンモニウム、樹枝状結晶
1 研究背景
過重力とは、地球表面周辺の重力(1G)よりも大きい重力のことを指す。過重力環境での結晶化実験は、結晶分化作用や惑星の内部構造の研究などで用いられるが、遠心分離機など、非常に高価な装置が使われることがほとんどである。
先行研究として、塩化アンモニウムを用いて地球の核について調べている研究(L. Huguet, et al. 2016)がある。その研究では、実験の一部で、10〜300Gほどの過重力下で塩化アンモニウムを再結晶させ、重力が大きいほど樹枝状結晶のアーム間隔が狭くなることが示されている。
そこで本研究では、実験の価格を抑え、高校などでの過重力環境を再現する実験を容易にすることを目的として、サーキュレーターを用いた簡易過重力発生装置を製作した。また、結晶化実験におけるこの装置の有用性を確かめるため、先行研究と同様の実験を試みた。
2 研究方法・結果
2―1 過重力装置の製作
(1)サーキュレーターの寸法に合わせて、3Dプリンターで回転部分を作成する。(図1)
(2)サーキュレーターと回転部分を組み合わせ、装置を製作する(図2)。
(3)遠心加速度の公式を用いて、回転速度から加速度を推定する。
(4)M5Stack Fireの加速度センサーで加速度を測定し、理論値と比較する。
サーキュレーターは山善ビズコム、DCサーキュレーター YAR―DD253(W)を使用(図3)。3Dデータの作成はTinker CADで行った。3DプリンターはCreality KC1を使用した。上記の手順(3)について、遠心加速度aは、半径をr、角速度をωとして,a=rω2という公式で求めた。半径は、サーキュレーターの回転軸から加速度センサーの中心までの距離、0.067[m]を使用した。
結果として、表1のような理論値が得られ、最大237Gの過重力の発生が可能であることが示唆された。手順(4)において、サーキュレーターの回転速度によって生じる遠心加速度が、加速度センサーの測定が可能な範囲を超えてしまったため、手によって装置を一定の速さで回転させた。このとき、加速度センサーで測定された加速度の値と、半径と回転速度から計算される理論的な加速度の値は概ね一致した(表2)。
2−2 過重力が再結晶に及ぼす影響の観察
塩化アンモニウムは温度によって溶解度が大きく変化するため、温かい飽和水溶液を冷ますことで析出させた。
(1)3Dプリントしたパーツに合う容器を二つ用意する(図4)。
(2)塩化アンモニウムを30℃くらいで析出するように水に溶かす。
(3)溶液を70℃くらいまで温める。
(4)スライドガラスに数滴とる。
(5)重力の向きに注意し,容器の一つを装置にセットする。
(6)過重力下と通常重力下で再結晶させる。
(7)結晶化するまで待つ。
(8)顕微鏡で観察する。
結果として、図5のように、過重力下では樹枝状結晶のアーム間隔が狭くなる傾向が観察された。
3 考察
本研究で製作した装置について、測定値が理論値と近い値を示したため、理論値に近い過重力を発生させることができると考える。
結晶化実験について、先行研究と同様の傾向の結果が得られたため、製作した装置を用いて、過重力が物質の結晶成長に及ぼす影響を観察することができた可能性があると考える。
4 展望
製作した装置について、サーキュレーターのモーター・部品の変形等に対する信頼性を確立するために、加速度センサーの性能を向上させ、理論値と測定値の比較をさらに行っていく。また、237Gよりも大きな過重力環境で実験をしている研究もあるため、半径や扇風機・モーターなどの再検討によって、より大きな過重力の発生を可能にする。
結晶化実験について、画像の数値による分析によってより正確なデータを得る。加えて、回転によって過重力を発生させていることから温度変化が通常重力下と異なる可能性があるため、温度管理の機能をつけ対照実験を強化する。さらに、化学薬品や過重力値などを変更する。
5 参考文献
L. Huguet, T. Alboussière, M. I. Bergman, R. Deguen, S. Labrosse and G. Lesœur. (2016). Structure of a mushy layer under hypergravity with implications for Earth’s inner core, Geophysical Journal International
6 謝辞
本研究を進めるにあたり、藤原士聖様・戸井翔太様(以上中央大学附属高等学校)には実験を進めるにあたって多大なる協力を頂きました。また、本校教員の森脇啓介先生・本多洋平先生には、熱心なご指導を頂きました。皆様のご支援に心より感謝いたします。
過重力とは、地球表面周辺の重力(1G)よりも大きい重力のことを指す。過重力環境での結晶化実験は、結晶分化作用や惑星の内部構造の研究などで用いられるが、遠心分離機など、非常に高価な装置が使われることがほとんどである。
先行研究として、塩化アンモニウムを用いて地球の核について調べている研究(L. Huguet, et al. 2016)がある。その研究では、実験の一部で、10〜300Gほどの過重力下で塩化アンモニウムを再結晶させ、重力が大きいほど樹枝状結晶のアーム間隔が狭くなることが示されている。
そこで本研究では、実験の価格を抑え、高校などでの過重力環境を再現する実験を容易にすることを目的として、サーキュレーターを用いた簡易過重力発生装置を製作した。また、結晶化実験におけるこの装置の有用性を確かめるため、先行研究と同様の実験を試みた。
2 研究方法・結果
2―1 過重力装置の製作
(1)サーキュレーターの寸法に合わせて、3Dプリンターで回転部分を作成する。(図1)
(2)サーキュレーターと回転部分を組み合わせ、装置を製作する(図2)。
(3)遠心加速度の公式を用いて、回転速度から加速度を推定する。
(4)M5Stack Fireの加速度センサーで加速度を測定し、理論値と比較する。
サーキュレーターは山善ビズコム、DCサーキュレーター YAR―DD253(W)を使用(図3)。3Dデータの作成はTinker CADで行った。3DプリンターはCreality KC1を使用した。上記の手順(3)について、遠心加速度aは、半径をr、角速度をωとして,a=rω2という公式で求めた。半径は、サーキュレーターの回転軸から加速度センサーの中心までの距離、0.067[m]を使用した。
結果として、表1のような理論値が得られ、最大237Gの過重力の発生が可能であることが示唆された。手順(4)において、サーキュレーターの回転速度によって生じる遠心加速度が、加速度センサーの測定が可能な範囲を超えてしまったため、手によって装置を一定の速さで回転させた。このとき、加速度センサーで測定された加速度の値と、半径と回転速度から計算される理論的な加速度の値は概ね一致した(表2)。
2−2 過重力が再結晶に及ぼす影響の観察
塩化アンモニウムは温度によって溶解度が大きく変化するため、温かい飽和水溶液を冷ますことで析出させた。
(1)3Dプリントしたパーツに合う容器を二つ用意する(図4)。
(2)塩化アンモニウムを30℃くらいで析出するように水に溶かす。
(3)溶液を70℃くらいまで温める。
(4)スライドガラスに数滴とる。
(5)重力の向きに注意し,容器の一つを装置にセットする。
(6)過重力下と通常重力下で再結晶させる。
(7)結晶化するまで待つ。
(8)顕微鏡で観察する。
結果として、図5のように、過重力下では樹枝状結晶のアーム間隔が狭くなる傾向が観察された。
3 考察
本研究で製作した装置について、測定値が理論値と近い値を示したため、理論値に近い過重力を発生させることができると考える。
結晶化実験について、先行研究と同様の傾向の結果が得られたため、製作した装置を用いて、過重力が物質の結晶成長に及ぼす影響を観察することができた可能性があると考える。
4 展望
製作した装置について、サーキュレーターのモーター・部品の変形等に対する信頼性を確立するために、加速度センサーの性能を向上させ、理論値と測定値の比較をさらに行っていく。また、237Gよりも大きな過重力環境で実験をしている研究もあるため、半径や扇風機・モーターなどの再検討によって、より大きな過重力の発生を可能にする。
結晶化実験について、画像の数値による分析によってより正確なデータを得る。加えて、回転によって過重力を発生させていることから温度変化が通常重力下と異なる可能性があるため、温度管理の機能をつけ対照実験を強化する。さらに、化学薬品や過重力値などを変更する。
5 参考文献
L. Huguet, T. Alboussière, M. I. Bergman, R. Deguen, S. Labrosse and G. Lesœur. (2016). Structure of a mushy layer under hypergravity with implications for Earth’s inner core, Geophysical Journal International
6 謝辞
本研究を進めるにあたり、藤原士聖様・戸井翔太様(以上中央大学附属高等学校)には実験を進めるにあたって多大なる協力を頂きました。また、本校教員の森脇啓介先生・本多洋平先生には、熱心なご指導を頂きました。皆様のご支援に心より感謝いたします。
