講演情報

[O12-P70]茅野市吉田山の水晶の産状と教育的利用について

*須貝 雄太1、*阪田 時久1 (1. 長野県諏訪清陵高等学校)
1,動機及び目的

私の住んでいる茅野市にある吉田山。市民の森として山菜取りや自然体験学習の場として愛されている。そんな山について「水晶が出る」という情報を得た。しかしインターネット上、書籍や研究でも吉田山の水晶産出はおろか、地質について言及した資料はほとんど見られない。また、吉田山において土砂の持ち出しは禁止されている。それらの理由から、産地や産出規模の特定に至れば茅野市の地質的な観点での特徴の再発見や、教育的な価値も伴うのではないかと考えた。そのため本研究では吉田山の水晶の産状(成因・分布・鉱物学的特徴)を明らかにし、その結果を基に茅野市の特徴的な地質を解明することを目的とした。学校教育・地域学習・展示教材として実装可能な教育プログラムと教材群を設計することを通し、市民の森の地質学的な教育価値を実証することに繋げたい。

2,方法

前述の通り、吉田山に関する文献は極端に少ない。そのため今回は以下のようにフィールドワーク及び採集標本の観察分析を通して考察を行う。

① フィールドワーク

登山道及びその周辺地形を観察する。露出している岩石や水晶産出の兆候が見られれば観察を行う。

② 採集標本の観察

フィールドワークにおいて得られた標本について観察を行い、考察する。必要があれば剥片の作成、観察を行う。なお、本研究を行うにあたって該当する財産区、茅野市の許可を得て標本を持ち出した。また、フィールドワークを行った時期は狩猟期間を伴う閉山期間であったがそれについても同様に財産区や市の許可を得ている。

3,結果

① フィールドワーク

2025 年11 月時点で二回のフィールドワークを行い、市民の森範囲(図 1)に該当する全登山道全域を探索した。今回は水晶産出についてより大きな成果が得られた二カ所について言及する。

図 1 市民の森マップ茅野市ホームページ「市民の森について」より

①-1 北コース

散策中、山頂より下り方面の北コースにおいて石英脈を伴う岩石を複数発見した。また、二回目のフィールドワークでその周辺を集中して捜索した結果小型ではあるものの水晶の結晶を複数採集した。

② -2 中央コース

市民の池より登り方面の中央コースにおいて岩中の空洞に小型の水晶を発見した。二回目のフィールドワークで北コース同様に周囲を捜索したが、北コースと異なり有力な結果は得られなかった。

③ 標本について

図 2 及び 3 は北コースにて採集した水晶である。図 2は群晶、図 3 は透明度の高い結晶であり、それぞれ別の母岩に伴って産出。いずれも水晶としての頭付きの六角柱状を示し、岩中に存在していた。小型ゆえに条線及び内包物は確認できない。

図 4 及び図 5 は前述の水晶同様北コースにて採集した標本である。岩中に石英脈が見られる。また、断面には結晶化しきっていない石英の柱状結晶(図 5)も見られ、成長途中の水晶と推測される。

4,考察

① 水晶の産出について

今回のフィールドワークでは複数の水晶を採集することができた。しかし、北コースのみでの産出の確認となり、中〜大型(ここでは結晶長が 1cm を超えるもの)は確認できなかった。過去の事例について確認が取れなかったためこの産地での標準サイズは断言できないが、今回の結果から言えば 1mm~5mm 程度の小型のものがこの産地の標準サイズといえるのではないか。また、図 4,5 の標本よりこの産地の水晶の成因が考察できる。市民の森ガイドブックより吉田山の地質は第三期、中新世時代の閃緑岩が主体とされている。この標本の母岩は構成鉱物および学校所蔵の標本との比較より閃緑岩と考えられるため閃緑岩帯内において生成されると考えられるのではないか。

① 教育的価値について

現状採集した水晶はとても小型であるとため採集に慣れていないと発見すら容易ではない可能性がある。そのため実際の水晶を用意し、結晶構造や産状の観察、産地の状態などの話を中心とすることで鉱物そのものや地域の地質への興味、関心を高める目的で使用するのがよいのではないか。

5,まとめ

吉田山において水晶が産出することは確認できたが、想定と比べて極端に小型であり、採集を中心とした教育的価値は見出しにくいのではないか。しかし、サンプルの観察などを通した学習によって鉱物や地元の地質環境へ興味を持つきっかけとできることが期待される。

6,今後の展望

茅野市市民の森に指定されている水晶の産出を確認できたため、より範囲を広げた調査やより多くのサンプルの比較をすることで、産出量や産状、成因を突き止めていきたい。また、母岩の同定について今回は表面上の鉱物構成などを基に肉眼鑑定を行ったが、薄片作成および専門機関の協力を通じて詳細な同定を試みたい。他にも過去に採集を行っていた団体へ連絡を取り当時の産状との検証を行うことが教育的価値を高めるために重要だろう。

7,参考文献

公益財団法人 日本環境協会(2011)「活動レポート『吉田山たんけん』」https://www.j-ecoclub.jp/ecoreport/detail.php?id=726 (2025 年11 月 19 日閲覧)

茅野市(2025)「市民の森について」https://www.city.chino.lg.jp/soshiki/kankyo/222.html (2025 年 11 月 19 日閲覧)

NPO 法人 八ヶ岳森林文化の会(2021) 「ガイドブック 市民の森に集う 」