講演情報
[O12-P73]初期四肢類における四肢骨格の変化と生息環境の関係
*巽 梨花1 (1. 都立三鷹中等教育学校)
キーワード:
四肢骨格、陸上進出、指の本数
1.研究背景と目的
初期四肢類に見られる四肢骨格と指の本数の変化は、水中から陸上への適応過程を理解するうえで重要な手がかりとなる。本研究では、デボン紀後期に生息していたPanderichthys、Tiktaalik、Elpistostege、Acanthostega、Ichthyostega、Tulerpeton の6種を対象に、四肢骨格の構造と指の本数の変化を比較し、陸上適応に伴う形態変化の傾向を明らかにすることを目的とする。この6種は Cloutier et al.(2020)の系統樹に基づき、初期四肢類の進化の主要な段階を代表する種として選んだ。
2.研究方法
一次文献および二次文献から、各種の四肢の骨格、指の本数、生息環境に関する情報を収集した。6種を水中から陸上への適応段階に沿って比較し、四肢骨格の強化と指の本数の変化の関係を整理した。
3.結果
6種の初期四肢類を比較した結果を図1にまとめた。四肢骨格の構造と指の本数の変化について、以下のことが明らかになった。
3-1. Panderichthys(Frasnian,約3.80億年前)
前肢に明瞭な指は形成されていない。骨盤が大型化し、後肢が発達している。
生息環境は、浅瀬の水中だと考えられており、汽水~淡水の浅瀬堆積物から産出した。
3-2. Tiktaalik(Frasnian,約3.75億年前)
前肢には、上腕骨・橈骨・尺骨・手根骨が揃い、指の原型の骨が存在している。
Panderichthysと同様に骨盤が大型化し、後肢が発達している。
三角州周辺の浅瀬から産出しているため、生息環境は浅瀬の水中で、半水生であると考えられる。
3-3. Elpistostege(Frasnian,約3.80~3.75億年前)
前肢に指の原型の骨が存在しており、後肢の詳細は不明。
潮間帯の浅瀬から産出しているため、半水生であると思われている。
3-4. Acanthostega(Fammenian,約3.65億年前)
前肢にも後肢にも8本指があり、完全水生だと考えられている。
3-5. Ichthyostega(Fammenian,約3.65億年前)
前肢の指の本数は完全な化石が見つかっていないため、不明。水中での泳ぎに適していると考えられている。
後肢には7本の指がある。生息環境は水生寄り。
3-6. Tulerpeton(Fammenian,約3.65億年前)
前肢にも後肢にも6本指がある。
生息環境は、潮間帯の浅瀬から産出しているため、水陸生だと考えられている。
4.考察
水中では浮力が働くため、多指であっても体重支持の負担は小さく、むしろ水中での推進や姿勢の制御に有利であったと考えられる。一方、陸上では自重を直接支える必要があり、力を効率的に伝えるためには少数の指の方が適していたと推測される。また、多指は力が分散しやすく、陸上での支持効率が低下する可能性がある(図2)。Tulerpeton の6本指は、陸上寄りの環境に適応した結果と考えられ、最終的に、初期四肢類における多指性は、陸上への適応とともに現生の両生類の特徴である、前肢4本、後肢5本の指へと進化していく過程の一時的な段階であるといえる。
5.今後の課題と展望
本研究では、四肢骨格と指の本数の変化を文献から整理したが、指の太さや関節の可動域、筋肉の付着位置など、より詳細な分析は十分に行えていない。今後は、現生の両生類を用いて実際の力の入り方を観測したり、3D復元モデルの解析などを行ったりすることで、四肢骨格の変化や指の本数の減少の要因をより明らかにできると考えられる。
初期四肢類に見られる四肢骨格と指の本数の変化は、水中から陸上への適応過程を理解するうえで重要な手がかりとなる。本研究では、デボン紀後期に生息していたPanderichthys、Tiktaalik、Elpistostege、Acanthostega、Ichthyostega、Tulerpeton の6種を対象に、四肢骨格の構造と指の本数の変化を比較し、陸上適応に伴う形態変化の傾向を明らかにすることを目的とする。この6種は Cloutier et al.(2020)の系統樹に基づき、初期四肢類の進化の主要な段階を代表する種として選んだ。
2.研究方法
一次文献および二次文献から、各種の四肢の骨格、指の本数、生息環境に関する情報を収集した。6種を水中から陸上への適応段階に沿って比較し、四肢骨格の強化と指の本数の変化の関係を整理した。
3.結果
6種の初期四肢類を比較した結果を図1にまとめた。四肢骨格の構造と指の本数の変化について、以下のことが明らかになった。
3-1. Panderichthys(Frasnian,約3.80億年前)
前肢に明瞭な指は形成されていない。骨盤が大型化し、後肢が発達している。
生息環境は、浅瀬の水中だと考えられており、汽水~淡水の浅瀬堆積物から産出した。
3-2. Tiktaalik(Frasnian,約3.75億年前)
前肢には、上腕骨・橈骨・尺骨・手根骨が揃い、指の原型の骨が存在している。
Panderichthysと同様に骨盤が大型化し、後肢が発達している。
三角州周辺の浅瀬から産出しているため、生息環境は浅瀬の水中で、半水生であると考えられる。
3-3. Elpistostege(Frasnian,約3.80~3.75億年前)
前肢に指の原型の骨が存在しており、後肢の詳細は不明。
潮間帯の浅瀬から産出しているため、半水生であると思われている。
3-4. Acanthostega(Fammenian,約3.65億年前)
前肢にも後肢にも8本指があり、完全水生だと考えられている。
3-5. Ichthyostega(Fammenian,約3.65億年前)
前肢の指の本数は完全な化石が見つかっていないため、不明。水中での泳ぎに適していると考えられている。
後肢には7本の指がある。生息環境は水生寄り。
3-6. Tulerpeton(Fammenian,約3.65億年前)
前肢にも後肢にも6本指がある。
生息環境は、潮間帯の浅瀬から産出しているため、水陸生だと考えられている。
4.考察
水中では浮力が働くため、多指であっても体重支持の負担は小さく、むしろ水中での推進や姿勢の制御に有利であったと考えられる。一方、陸上では自重を直接支える必要があり、力を効率的に伝えるためには少数の指の方が適していたと推測される。また、多指は力が分散しやすく、陸上での支持効率が低下する可能性がある(図2)。Tulerpeton の6本指は、陸上寄りの環境に適応した結果と考えられ、最終的に、初期四肢類における多指性は、陸上への適応とともに現生の両生類の特徴である、前肢4本、後肢5本の指へと進化していく過程の一時的な段階であるといえる。
5.今後の課題と展望
本研究では、四肢骨格と指の本数の変化を文献から整理したが、指の太さや関節の可動域、筋肉の付着位置など、より詳細な分析は十分に行えていない。今後は、現生の両生類を用いて実際の力の入り方を観測したり、3D復元モデルの解析などを行ったりすることで、四肢骨格の変化や指の本数の減少の要因をより明らかにできると考えられる。
