講演情報

[O12-P74]太陽像を用いた大気ゆらぎの評価方法の開発と統合的解析

*落合 咲輝1、*島野 淳1、有竹 美空2、佐藤 絢音2、高橋 明日美2、髙橋 珠生2、友寄 心智2 (1. 都立富士高等学校科学探究部天文班、2. 東京都立富士高等学校附属中学校科学探究部天文班)

キーワード:

大気ゆらぎ、シーイング、シンチレーション

1.目的
 太陽黒点に関する研究を行う中で、撮影した太陽像が大気の影響でゆらいでしまった。
 そのため本研究では、東京都中野区にある本校における太陽黒点の観測場所の選定を目的とし、大気ゆらぎの影響が少ないデータを得ようとした。さらに、シーイングおよびシンチレーションの2つの指標に着目し、新たに独自で作成したプログラムを用いて大気ゆらぎの数値化を行った。

2.観測
 観測に使用した装置を表1に、本校での観測地点を表2に示す。
 この装置での回折限界(L)はL=1.22×(λ/D)を用いると2.09”であり、この時のピクセル分解能は1pixel=3.712”である。シーイングは地上から高所や水辺において良好となる参考文献1)ため、本校の屋上とプールサイドで太陽の撮影を行った。
各地点で、87.4 fps、16 bit、1000フレームの同時撮影を1日7回(計7000フレーム)、計4日間(計56000フレーム)、晴天時に実施した。観測に先立ち、使用した望遠鏡間に性能差がないことを確認した参考文献2)。気圧・風向・湿度などの観測条件も同時に取得し、その結果を表3に示す。

3.解析方法
【最小二乗法による円検出】
①太陽像を円と仮定する。画像を縦横に均等に分割した直線のうち、太陽像上を通るものについて考える。
②それぞれの直線上の明るさの変化の最大点を仮の太陽像の縁と仮定し、それらの点に近似する円を最小二乗法で算出する。
【シーイングの調べ方】  最小二乗法による円検出を用いて、画像上の太陽像に近似する円を求める。 太陽像に近似する円の縁付近の明るさについて、それらを二回微分したときの最大値を実際の太陽像の縁(図2のdn)とし、太陽像に近似した円(図2のd)との差の標準偏差をシーイングの値とする。この値大きいほど、ゆらぎが大きい、すなわちシーイングが悪い、といえる。 【シンチレーションの調べ方】
各フレームについて最小二乗法による円検出で検出した円を中心とした37pix四方の範囲にある各ピクセルの動画の初めから終わりまでの明るさの標準偏差の平均をその動画のシンチレーションの値とする。

これまで太陽像に近似する円の検出をハフ変換で行っていた。しかし、ハフ変換では変数設定や画像処理過程の影響により、全体に対して約3%の誤差が生じることが確認された。そこで本研究では、太陽像の輪郭から抽出した点群を用い、最小二乗法によって円を求める手法へと変更した。

4.結果
 3.解析方法のシーイングの調べ方で観測されたゆらぎの大きさを求めた(表4)。表4について、全データのシーイングを平均すると、観測される太陽像上の距離R、理論上の大きさrについて、屋上でR= r ±14.74”、プールサイドでR= r ±18.15”となった。
 また、連続した100フレームのシーイング値とシンチレーションの値について観測動画ごとの相関関係を調べたところ、全体を通して関係性は見られなかった(図4)。

5.考察
 シーイングの値は、屋上がプールサイドより3.41”小さくなったが、この値はピクセル分解能3.712”よりも小さい。よって今回の観測結果からは、どちらで撮影しても同程度鮮明な画像が取得できると考えられる。一方で、表4より日付ごとの比較を行うと、観測日ごとにシーイングの良し悪しに傾向が見られ、こうした傾向は複数の観測日において確認された。また、表4において7回分のシーイングの値の1σの値は約0.10”~0.80”であり、この値はシーイングの値である約8.0”~20”に対して極めて小さい。このことは、局所的にはシーイングの値の変動が小さいことを示している。さらに、撮影した4日間のうち7月20日のみ、プールサイドの方がシーイングの値は小さくなっていた。
100フレームを通してのシーイングの標準偏差とシンチレーションの相関係数は、全体的にその絶対値が0.6を下回るものが多い(図4)。絶対値が大きいものもあるが、約10.7%と少ないためシーイングとシンチレーションの相関はないと考えられる。

6.参考文献
1) H.Socas-Navarro et al., Solar Site Survey for the Advanced Technology Solar Telescope. I.Analysis of the Seeing Data, Publications of the Astronomical Society of the Pacific,117, 837, pp.1296-1305,2005
2)東京都立富士高等学校(2025):「太陽像を用いたシーイングの測定」かがわ総文