講演情報

[O12-P75]遮熱性舗装が都市の気温に与える影響の評価

*菊地 ひなた1 (1. 東京学芸大学附属高等学校)

キーワード:

遮熱性舗装、ヒートアイランド現象、反射率

背景

近年、ヒートアイランド現象が問題となっており、その原因の一つに道路の人工被覆があげられる。その対策として遮熱塗料が開発され、都市部の路面が遮熱塗料で舗装されている。遮熱性舗装とは、日中は効率よく日光を反射し、夜間に放出する輻射熱を減少させようとする特徴を持つ。しかし、遮熱性舗装上の気温変化については、「遮熱性舗装上の気温は、一般のアスファルト舗装上より低くなる。」「遮熱性舗装は、その特性上、逆に周囲の気温を上昇させてしまう。」というような背反する内容の記述があり、多数の論文でいまだに議論されているが、真相は解明されていない。

目的

未だ議論されている、背景で述べた議論を進めるため、遮熱性舗装上の温度特性を評価し、ヒートアイランド現象を緩和する有用な舗装を検討することである。

実験1-モデル実験

方法

4つの舗装モデルを作成した。以下がその内訳である。

①何も施していないアスファルト

②舗装モデル①に、遮熱塗料(株式会社ミラクール:ミラクールロード Wα 灰色;水性アクリル樹脂(特殊骨材・特殊繊維入))を施したもの

③舗装モデル①に、舗装モデル②で用いた遮熱塗料と同じ色の合成樹脂塗料を表面に施したもの

④舗装モデル①に、舗装モデル③で用いた合成樹脂塗料の黒色を表面に施したもの

舗装モデル①②③④それぞれについて、スマートフォンのLightMeterAppを用い、反射光の測定を行った。

反射には、鏡面反射、拡散反射、再帰反射の3種類があり、遮熱性舗装に入射した光は再帰反射するということがわかっている。先ず各モデルの反射率の特定を行った。

次に、日光が垂直に入射するように4つモデルを屋外に設置し、放射温度計を用いて、各モデルの表面温度を30分間5分おきに測定した。この測定を別日複数回にわたり行った。また、それと同時に、簡易日射計を用い、数理モデルを用いて太陽放射のエネルギーを算出した。

実験データ・結果

添付資料 Fig.15, Fig.16, Fig.17, Fig.18, Fig.19, Table.2

反射光は遮熱性舗装のみ再帰反射を起こした。4つの舗装モデルを全体として表面温度の上昇率が高い順番に並べると、①>④>③>②となった。

Fig.15, Table.2から、素材別に比較すると、表面温度の上昇率が高い順に、通常のアスファルト、合成樹脂塗料、遮熱塗料であった。また、表面色別に比較すると、表面温度の上昇率が高い順に、黒、クールグレーであった。

このことと、各グラフ、表から、熱の反射のしやすさを相対的な値で比較した。通常のアスファルトを基準とすると、②は2.4倍、③は1.3倍、④は1.4倍であった。

これらを元に実験2を併せて行った。

実験2-屋外気温測定実験

方法

 午前6時から午後8時まで、1時間おきに一般のアスファルト舗装、遮熱性舗装それぞれの上部気温を測定した。測定地点は、路面から0cm(地表面温度)、50cm、100cm、150cm、200cmの地点に設定した。地表面温度は放射温度計を用い、その他4地点では棒状温度計を用いて測定を行った。

実験データ・結果・考察

添付資料 Fig.20, Fig.21

 遮熱性舗装と通常のアスファルト舗装の上空では、大気温度に関して差が確認できなかった。実験1の結果と併せて考えると、反射された太陽光が依然として大気を暖めていることが示唆された。

展望

今回、実験1において、反射率は簡易的に測定した。今後、「分光反射率に基づく建築材料の日射反射率の測定方法 : 測定条件の妥当性の検討」(2007年 酒井英樹, 永村一雄, 井川憲男)を採用し、反射率の数値をより詳細に算出したいと考えている。

また、通常のアスファルト表面と、合成樹脂塗料表面で反射率を厳密に揃えることができなかったため、比較が困難となった。反射率を揃える方法を確立し、比較を詳細にしたい。

そして、実験1の一部、実験2ともに屋外で行った。そのことから、物理的環境要因によって結果が左右される可能性が棄却できない。今後、実験室内の安定した環境の中での測定をし、データに正確性を持たせたいと考えている。

謝辞

研究にあたり、実験1で使用したミラクールロード Wα 灰色;水性アクリル樹脂を提供していただいた、株式会社ミラクール様に厚くお礼申し上げます。

参考文献

1)ヒートアイランド現象を緩和する遮熱塗料(高反射率塗料).株式会社 NIPPO コーポレーション 生産技術機械部,生産技術グループ

2)遮熱性舗装による歩行空間の暑熱環境緩和に関する検討. 吉中保, 木内豪, 深江典之. 2006. 土木学会第59回年次学術講演会

3)2020年東京オリンピック競技開催予定期間における環境温度の予測.樫村 修生, 南 和広, 星 秋夫. 2016.日本スポーツ健康科学誌3(1):2016.9

4)各種アスファルト道路舗装材が歩行者の熱ストレスに及ぼす影響. 長野 和雄, 志村 恭子, 三嶋 真名美, 井上 司, 桐山 和也, 須藤 美音, 堀越 哲美. 2020. 日本生気象学会雑誌57巻2号p.81-94

5)高反射型アスファルト舗装の表面温度低減効果と路上の熱環境特性. 西岡真稔, 鍋島美奈子, 若間賢志, 上田淳也. 2006. 日本ヒートアイランド学会論文集Vol.1