講演情報

[O12-P78]水中に隠れたミクロな隣人!~住吉周辺の水中マイクロプラスチック調査~

*鈴木 夏帆1、*荒井 優冴1 (1. 東京都立科学技術高等学校)

キーワード:

マイクロプラスチック

①研究背景と目的
近年、マイクロプラスチック(MPs)は海洋環境だけでなく、河川や湖沼、さらには大気中にも存在することが明らかになってきている。特に、大気中マイクロプラスチック(AMPs)は風や降水などの気象現象によって広範囲に拡散し、地表へと降下することが報告されている。本校の先行研究においても、大気中からMPsが検出され、その材質は建築物のシーリング材や繊維由来である可能性が示唆されている。これらの結果から、大気中のMPsが降下し、周辺の水域に蓄積している可能性が考えられる。そこで本研究では、東京都江東区住吉周辺に位置する日本庭園池および横十間川を対象として、水中に存在するMPsの分布実態を明らかにすることを目的とした。また、検出されたMPsの形状や材質を分析することで、それらが大気由来である可能性について検討するとともに、高校でも実施可能な簡便な分析手法の確立も目的とした。
②方法
本研究では日本庭園池と横十間川の水を採取した。ガラス製の遠沈管に泥とともに水を採取。プラスチック製の遠沈管で水面の上澄みを採取した。 ガラス製の遠沈管は上澄みをPTFE膜(メンブレンフィルター)で吸引ろ過し、遠沈管と吸引ホルダー両方に過酸化水素水を加え有機物処理(10・20%はそれぞれ48時間、30%は24時間)を行い、濃度を変えるたびに再度吸引ろ過した。以降の工程はガラス製の遠沈管と吸引ホルダーで異なる。吸引ホルダーはナイルレッドで染色しサンプルにした。 ガラス製の遠沈管は超純水で過酸化水素濃度を低下させた後、より細かく泥と分離するため、飽和ヨウ化ナトリウム溶液による比重分離を行った。そして、新しいPTFE膜に吸引濾過しナイルレッドで染色しサンプルにした。最終的に、両サンプルをデジタルマイクロスコープ(DSX1000 OLYMPUS)で観察した。 プラスチック製の遠沈管ではpHおよび電気伝導率(EC)の計測のために上澄みを採取した。
③結果
観察の結果、日本庭園池および横十間川の両方からマイクロプラスチック(MPs)が検出された。検出された粒子の形状は主に破片状および繊維状であり、両水域に共通した特徴が見られた。このことから、異なる環境条件を持つ水域であっても、類似した種類のMPsが存在している可能性が示唆された。また、採取した水の環境を把握するために水質測定を行った結果、日本庭園池の平均pHは7.65、横十間川は7.68であり、いずれも中性付近の値を示した。さらに、電気伝導度(EC)については、日本庭園池で平均32.25 mS/m、横十間川で平均3850 mS/mと大きな差が見られ、水域ごとの水質特性の違いが明確に表れていた。しかしながら、これらの水質データとMPsの形状や検出状況との間に明確な関連性は確認されなかった。
④考察
本研究により、日本庭園池および横十間川の両水域においてマイクロプラスチック(MPs)が存在することが明らかとなった。特に、検出されたMPsの形状が破片状および繊維状であった点は、先行研究において大気中から検出されたMPsの特徴と類似している。このことから、本研究で確認されたMPsは、大気中から降下して水域に混入した可能性が高いと考えられる。また、異なる水質環境であるにもかかわらず類似した形状のMPsが確認された点も、この仮説を支持する結果であるといえる。ただし、本研究ではサンプル数が限られており、季節変動や降雨、風向などの気象条件による影響については十分に検討することができていない。そのため、今回の結果のみでMPsの起源や挙動を断定することは難しい。今後は採取回数を増やし、長期的かつ継続的にデータを蓄積することで、MPsの動態や発生源についてより詳細に解析する必要がある。また、複数の高校や研究機関と連携し、広域的な調査ネットワークを構築することで、より包括的な理解につながると期待される。
参考文献
国立大学法人京都大学 国立研究開発法人土木研究所, 2022 “下水中に含まれるマイクロプラスチックの検出と   挙動に関する共同研究報告書” https://thesis.pwri.go.jp/public_detail/1000254/ 早稲田大学理工学術院創造理工学部 大河内研究室