講演情報
[O12-P80]自作ホーンアンテナによる21cmの観測
*和田 樹1、*亀田 和1、*梅澤 杏奈1、*下条 翔杏1 (1. 都立科学技術高校)
キーワード:
ダークマター、銀河回転曲線
1. はじめに
宇宙の質量の大部分を占めるとされる暗黒物質の存在解明は、現代天文学における重要
な課題の一つである。その存在を裏付ける有力な証拠として、銀河の外縁部でも回転速度が
低下しないフラットな回転曲線が知られている。本研究では、天の川銀河全体に広く分布す
る中性水素原子のスピンが反転する際に放射される 21 cm線に着目した。水素は宇宙で最も
多く存在する元素であり、放射強度が安定しているため、小型の装置でも信号を捉えやす
く、銀河の構造を探るのに適している。本研究の目的は、アルミテープ等の身近な素材を用
いた低コストな自作ホーンアンテナによる観測システムを構築し、高校生レベルの装置で銀
河回転曲線の特性をどの程度捉えられるか、またその結果が暗黒物質の存在を示唆するもの
となり得るかを実証的に検討することである。
2. 観測装置および手法
本研究では、自作が容易で指向性に優れたホーンアンテナを採用した。アンテナは、電
磁波の波長を考慮して設計したホーン型の筐体内面にアルミテープを貼付したものである。
受信システムには低ノイズアンプと、スペクトラムアナライザを使用した。スペクトラムア
ナライザの設定については、分解能帯域幅およびビデオ帯域幅をともに 10 kHz とし、周波
数分解能を確保した。観測は、銀経 40°から260°の範囲を対象とし、中性水素線の静止周
波数である 1420.406 MHz 付近の電波を取得した。取得したデータは、プログラムを用いて
積算処理を行い、信号の抽出を試みた。
3. 解析手法
観測されたスペクトルからピーク周波数を特定し、ドップラー効果の式を用いて視線速
度を算出した。銀河の回転速度を導出する手法としては、銀河の内縁部において接線点法を
検討したが、この手法には適用可能な銀経の範囲に制約があるため、具体的な数値の扱いに
は慎重な検討を要する。また、本研究の現段階における解析では、地球の公転や自転に伴う
速度補正は行っておらず、観測された生データに基づいた解析結果として整理した。補正を
行わない状態でのデータが、理論的なモデルとどのように対応するかを観察することに主眼
を置いた。
4. 結果と考察
現在の観測データからは、銀河の回転速度が外縁部に向かって急激に減衰しないとい
う、バリオン物質のみを想定したモデルとは異なる傾向が見受けられる。このことは、目に
見えない質量が分布している可能性を示唆していると考えられる。しかしながら、得られた
回転速度や曲線の形状については、暗黒物質の存在を仮定した理論上の計算結果ともかなり
の乖離が見られるのが現状である。特に、一部の銀経方向では 600 km/sという極めて大き
な数値が算出されており、これらは天体の真の運動を示しているというよりも、近隣の電子
機器による電波干渉や、解析過程における誤差が大きく影響している可能性が考えられる。
また、現在はまだ観測データが十分に出揃っていないこともあり、理論モデルとの不一致を
物理的に説明するには至っていない。
5. 結言
本研究により、自作の小型ホーンアンテナを用いたシステムであっても、中性水素線の
信号を捉え、銀河回転の概略を把握できる可能性が示された。一方で、得られた数値が理論
値と大きく異なるという課題も浮き彫りになった。今後は、不足している観測データを補完
するとともに、異常値の原因となるノイズの特定や除去、そして地球の運動に伴う速度補正
の実装に取り組む必要がある。これらの改良を通じて、理論モデルとの乖離を精査し、自作
装置による観測の限界と有効性をより正確に評価することを目指す。
宇宙の質量の大部分を占めるとされる暗黒物質の存在解明は、現代天文学における重要
な課題の一つである。その存在を裏付ける有力な証拠として、銀河の外縁部でも回転速度が
低下しないフラットな回転曲線が知られている。本研究では、天の川銀河全体に広く分布す
る中性水素原子のスピンが反転する際に放射される 21 cm線に着目した。水素は宇宙で最も
多く存在する元素であり、放射強度が安定しているため、小型の装置でも信号を捉えやす
く、銀河の構造を探るのに適している。本研究の目的は、アルミテープ等の身近な素材を用
いた低コストな自作ホーンアンテナによる観測システムを構築し、高校生レベルの装置で銀
河回転曲線の特性をどの程度捉えられるか、またその結果が暗黒物質の存在を示唆するもの
となり得るかを実証的に検討することである。
2. 観測装置および手法
本研究では、自作が容易で指向性に優れたホーンアンテナを採用した。アンテナは、電
磁波の波長を考慮して設計したホーン型の筐体内面にアルミテープを貼付したものである。
受信システムには低ノイズアンプと、スペクトラムアナライザを使用した。スペクトラムア
ナライザの設定については、分解能帯域幅およびビデオ帯域幅をともに 10 kHz とし、周波
数分解能を確保した。観測は、銀経 40°から260°の範囲を対象とし、中性水素線の静止周
波数である 1420.406 MHz 付近の電波を取得した。取得したデータは、プログラムを用いて
積算処理を行い、信号の抽出を試みた。
3. 解析手法
観測されたスペクトルからピーク周波数を特定し、ドップラー効果の式を用いて視線速
度を算出した。銀河の回転速度を導出する手法としては、銀河の内縁部において接線点法を
検討したが、この手法には適用可能な銀経の範囲に制約があるため、具体的な数値の扱いに
は慎重な検討を要する。また、本研究の現段階における解析では、地球の公転や自転に伴う
速度補正は行っておらず、観測された生データに基づいた解析結果として整理した。補正を
行わない状態でのデータが、理論的なモデルとどのように対応するかを観察することに主眼
を置いた。
4. 結果と考察
現在の観測データからは、銀河の回転速度が外縁部に向かって急激に減衰しないとい
う、バリオン物質のみを想定したモデルとは異なる傾向が見受けられる。このことは、目に
見えない質量が分布している可能性を示唆していると考えられる。しかしながら、得られた
回転速度や曲線の形状については、暗黒物質の存在を仮定した理論上の計算結果ともかなり
の乖離が見られるのが現状である。特に、一部の銀経方向では 600 km/sという極めて大き
な数値が算出されており、これらは天体の真の運動を示しているというよりも、近隣の電子
機器による電波干渉や、解析過程における誤差が大きく影響している可能性が考えられる。
また、現在はまだ観測データが十分に出揃っていないこともあり、理論モデルとの不一致を
物理的に説明するには至っていない。
5. 結言
本研究により、自作の小型ホーンアンテナを用いたシステムであっても、中性水素線の
信号を捉え、銀河回転の概略を把握できる可能性が示された。一方で、得られた数値が理論
値と大きく異なるという課題も浮き彫りになった。今後は、不足している観測データを補完
するとともに、異常値の原因となるノイズの特定や除去、そして地球の運動に伴う速度補正
の実装に取り組む必要がある。これらの改良を通じて、理論モデルとの乖離を精査し、自作
装置による観測の限界と有効性をより正確に評価することを目指す。
