講演情報
[O12-P85]ビデオと分光観測による流星の分析
*田中 蔵之介1、*髙橋 大佑1、*中嶋 秀利1、*林道 遥嵩1、*大浪 弘貴1 (1. 東京都立立川高等学校)
キーワード:
流星、彗星、スペクトル
研究の背景と目的
流星の観測は宇宙空間の彗星・小惑星や地球の高層大気を解明することに繋がる。本校天文気象部では、1953年から夏のペルセウス座流星群等の眼視観測を開始した。2023年からは先輩たちが流星を毎日観測することを目的として、安価な防犯カメラを5台用いて全天を網羅し、機械学習を用いたプログラムにより自動で流星を検出するビデオ観測装置や電波による流星観測装置を開発した。
本研究では、この機器による分析に加え、さらに詳細な分析を行うために、流星の分光観測を行う装置や、分析のためのプログラムを開発した。この研究により、流星のスペクトルや、光度曲線、流星クラスターの分析を行い、これらの化学組成や物理的特性を調査することで、母天体である彗星や小惑星の特性を推測したいと考えた。
研究方法
①新たに分光観測用の装置と分析プログラムを開発し、化学組成の分析を行う。
②先行研究のビデオ観測と電波観測を継続し、蓄積データを分析する。 特に昨年観測した三大流星群について、光度変化から物理的特性を探る。
③流星クラスターの分析を目指し、昨年11月に神戸で観測された流星クラスターについて 分析を試みる。
分光観測装置の製作と分析プログラムの開発
先行研究で用いられた防犯カメラ1台に加えて、新たに高性能なカメラ「IMX462」とレンズ、回折格子、Raspberry pi5を用いて分光観測装置を製作した(図1)。
分光データの分析では図3の補正を行う必要があるが、これらを一般のソフトで行うと手順が多いため、全ての補正を行えるプログラムを開発した(図4)。
また補正済み画像から流星の金属輝度比や温度を算出するには、従来は専門のソフトと表計算ソフトでの計算が必要である。そこで補正済み画像から金属輝度比や温度算出まで一貫して行うプログラムを新たに開発し、分析の効率化を行った(図5)。
分光観測データの分析
計18件の流星について分光データを得ることができた。これらの観測できた流星について個々の流星に含まれる、マグネシウム,ナトリウム,鉄の金属組成比を算出した結果、流星群ごとに異なる傾向がみられた(図6)。
また、非常にマイナーな流星群であるエリダヌス座ο流星群の流星を分光観測することができたため、各金属の明るさが時間によってどのように変化していくか調べた(図7)。その結果金属ごとに発光の変化の様子が異なることがわかった。これは発光する輝線の数や励起エネルギーが異なるからだと考えられる。
そして作成したプログラムを用いて、あるふたご座流星群の流星の温度は3103Kと推定できた
三大流星群の光度曲線の分析
本校でのビデオ観測データから流星の光度曲線を全自動で出力するプログラムを新たに開発し(図8)、三大流星群であるペルセウス座流星群、ふたご座流星群、しぶんぎ座流星群の流星、計1200個以上の光度曲線を調べた。流星の発光から消失までの時間と明るさを正規化し、流星群ごとに光度曲線を作成した(図9)。発光極大はすべての群でほぼ一致し、ペルセウス座流星群、しぶんぎ座流星群では消失直前で再増光することが分かった。ふたご座流星群の母天体であるファエトンは密度が大きく、他2つの流星群は母天体が彗星で密度が小さいため、この再増光の理由が流星体の密度にあると考えた。そこで流星体の突入シミュレーションプログラムの開発に着手した。流星体の密度を変えてシミュレーションを行った結果、流星体の密度が小さいと流星体が分裂しやすく、大きいと分裂しにくいことがわかった(図10)。これより、流星体の密度が小さく、分裂が発生することで、再増光がおこるのではないかと考えた。
流星クラスターの分析
流星クラスターとは数秒間に数個から数十個の流星が出現する、世界で10例ほどしか観測されていない現象であり、流星体の分裂の過程を知ることに繋がる希少な現象である。本校でも撮影を狙っているが、まだできていない。そこで2025年11月21日、兵庫県上空で1秒未満の間に7個の流星が流れたため、7地点からデータを提供して頂き、流星の対地軌道、日心軌道を特定した(図11)。その結果、しし座流星群由来のものであると推定することができた。また、流星Ⅱ(1984)に基づき各流星の質量を算出し、Čapekらの理論から計算を行った結果、これらは地球大気突入の2.22日前に分裂したものと推定した。この結果は、流星研究者である関口孝志氏の分析した結果とほぼ一致した。
まとめと今後の課題
自作の流星分光観測装置や分光分析プログラム、明るさの変化を調べるプログラムを用いて、流星の組成や温度、明るさの変化を調べることができた。さらに流星クラスターの軌道を調べ、しし群由来だと特定できた。
今後も観測を継続し、データを蓄積することで、流星の起源に迫りたい。
参考文献
・都立立川高等学校天文気象部(2024).『流星の自動観測システム「Tengu」ver2.0の開発』 「第13回高校・高専気象観測機器コンテスト」
・天文気象部(2026).『流星分光観測装置の製作と分析』「第28回天文学会ジュニアセッション」
・斎藤馨児・長沢工(1984).『流星Ⅰ 観測の実際』 恒星社厚生閣
・斎藤馨児・長沢工(1984).『流星Ⅱ 解析と理論』 恒星社厚生閣
・Čapek et al.(2022). Ejection velocities, age, and formation process of SPE meteoroid cluster
・Sonotaco Network sonotaco.jp
・Global Meteor Network https://globalmeteornetwork.org/
・Ceplecha et al.(2005). Fragmentation model of meteoroid motion, mass loss, and radiation in the atmosphere
流星の観測は宇宙空間の彗星・小惑星や地球の高層大気を解明することに繋がる。本校天文気象部では、1953年から夏のペルセウス座流星群等の眼視観測を開始した。2023年からは先輩たちが流星を毎日観測することを目的として、安価な防犯カメラを5台用いて全天を網羅し、機械学習を用いたプログラムにより自動で流星を検出するビデオ観測装置や電波による流星観測装置を開発した。
本研究では、この機器による分析に加え、さらに詳細な分析を行うために、流星の分光観測を行う装置や、分析のためのプログラムを開発した。この研究により、流星のスペクトルや、光度曲線、流星クラスターの分析を行い、これらの化学組成や物理的特性を調査することで、母天体である彗星や小惑星の特性を推測したいと考えた。
研究方法
①新たに分光観測用の装置と分析プログラムを開発し、化学組成の分析を行う。
②先行研究のビデオ観測と電波観測を継続し、蓄積データを分析する。 特に昨年観測した三大流星群について、光度変化から物理的特性を探る。
③流星クラスターの分析を目指し、昨年11月に神戸で観測された流星クラスターについて 分析を試みる。
分光観測装置の製作と分析プログラムの開発
先行研究で用いられた防犯カメラ1台に加えて、新たに高性能なカメラ「IMX462」とレンズ、回折格子、Raspberry pi5を用いて分光観測装置を製作した(図1)。
分光データの分析では図3の補正を行う必要があるが、これらを一般のソフトで行うと手順が多いため、全ての補正を行えるプログラムを開発した(図4)。
また補正済み画像から流星の金属輝度比や温度を算出するには、従来は専門のソフトと表計算ソフトでの計算が必要である。そこで補正済み画像から金属輝度比や温度算出まで一貫して行うプログラムを新たに開発し、分析の効率化を行った(図5)。
分光観測データの分析
計18件の流星について分光データを得ることができた。これらの観測できた流星について個々の流星に含まれる、マグネシウム,ナトリウム,鉄の金属組成比を算出した結果、流星群ごとに異なる傾向がみられた(図6)。
また、非常にマイナーな流星群であるエリダヌス座ο流星群の流星を分光観測することができたため、各金属の明るさが時間によってどのように変化していくか調べた(図7)。その結果金属ごとに発光の変化の様子が異なることがわかった。これは発光する輝線の数や励起エネルギーが異なるからだと考えられる。
そして作成したプログラムを用いて、あるふたご座流星群の流星の温度は3103Kと推定できた
三大流星群の光度曲線の分析
本校でのビデオ観測データから流星の光度曲線を全自動で出力するプログラムを新たに開発し(図8)、三大流星群であるペルセウス座流星群、ふたご座流星群、しぶんぎ座流星群の流星、計1200個以上の光度曲線を調べた。流星の発光から消失までの時間と明るさを正規化し、流星群ごとに光度曲線を作成した(図9)。発光極大はすべての群でほぼ一致し、ペルセウス座流星群、しぶんぎ座流星群では消失直前で再増光することが分かった。ふたご座流星群の母天体であるファエトンは密度が大きく、他2つの流星群は母天体が彗星で密度が小さいため、この再増光の理由が流星体の密度にあると考えた。そこで流星体の突入シミュレーションプログラムの開発に着手した。流星体の密度を変えてシミュレーションを行った結果、流星体の密度が小さいと流星体が分裂しやすく、大きいと分裂しにくいことがわかった(図10)。これより、流星体の密度が小さく、分裂が発生することで、再増光がおこるのではないかと考えた。
流星クラスターの分析
流星クラスターとは数秒間に数個から数十個の流星が出現する、世界で10例ほどしか観測されていない現象であり、流星体の分裂の過程を知ることに繋がる希少な現象である。本校でも撮影を狙っているが、まだできていない。そこで2025年11月21日、兵庫県上空で1秒未満の間に7個の流星が流れたため、7地点からデータを提供して頂き、流星の対地軌道、日心軌道を特定した(図11)。その結果、しし座流星群由来のものであると推定することができた。また、流星Ⅱ(1984)に基づき各流星の質量を算出し、Čapekらの理論から計算を行った結果、これらは地球大気突入の2.22日前に分裂したものと推定した。この結果は、流星研究者である関口孝志氏の分析した結果とほぼ一致した。
まとめと今後の課題
自作の流星分光観測装置や分光分析プログラム、明るさの変化を調べるプログラムを用いて、流星の組成や温度、明るさの変化を調べることができた。さらに流星クラスターの軌道を調べ、しし群由来だと特定できた。
今後も観測を継続し、データを蓄積することで、流星の起源に迫りたい。
参考文献
・都立立川高等学校天文気象部(2024).『流星の自動観測システム「Tengu」ver2.0の開発』 「第13回高校・高専気象観測機器コンテスト」
・天文気象部(2026).『流星分光観測装置の製作と分析』「第28回天文学会ジュニアセッション」
・斎藤馨児・長沢工(1984).『流星Ⅰ 観測の実際』 恒星社厚生閣
・斎藤馨児・長沢工(1984).『流星Ⅱ 解析と理論』 恒星社厚生閣
・Čapek et al.(2022). Ejection velocities, age, and formation process of SPE meteoroid cluster
・Sonotaco Network sonotaco.jp
・Global Meteor Network https://globalmeteornetwork.org/
・Ceplecha et al.(2005). Fragmentation model of meteoroid motion, mass loss, and radiation in the atmosphere
