講演情報

[O12-P88]ひとみ望遠鏡を用いた木星とガリレオ衛星観測:イオ起源Naのガニメデ軌道到達可能性

*石橋 楓1、*荒井 玲2、*江場 圭汰3、*村山 慧4 (1. 仙台白百合学園高等学校、2. 東京都立六本木高等学校、3. 私立東北学院高等学校、4. 宮城県仙台二華高等学校)

キーワード:

木星、ひとみ望遠鏡

木星は太陽系惑星の中で最大規模の磁場を持ち、磁気圏はガリレオ衛星の軌道を包み込むほど巨大である。特にイオは強い潮汐加熱により活発な火山活動を示しナトリウム (Na) や硫黄 (S) の粒子を放出している。これらは木星磁気圏に補捉され、「イオプラズマトーラス」を形成する。一方、ガニメデは太陽系で唯一固有磁場を持つ衛星であり、外部プラズマとの相互作用が特異な環境を生み出している。



 本研究は、イオから放出された粒子がどの距離まで到達しているのか、特にガニメデ周辺での空間分布を分光観測により調べることを目的とする。

具体的には、イオから放出されたNaがガニメデ軌道付近まで到達しているのかを検証し、イオからガニメデに至る空間におけるNaの強度分布を測定する。

更に、ガニメデ周辺での強度変化が衛星の固有磁場とどのように関連しているかを評価する。



 観測では、仙台市天文台の1.3 m口径「ひとみ望遠鏡」の可視域中分散分光器を用いて、NaやS+の発光輝線をカバーし得る約580-680 nmの波長範囲を分光観測した。木星・ガリレオ衛星をスリットに入れて2回の観測を行った。まず、木星・イオ・ガニメデがほぼ一直線上に並ぶ観測条件を利用し、スリット方向を軌道面と平行に設定することで、イオからガニメデまでの空間分布を取得した。次に、ガニメデ単体をターゲットとして軌道面に対して直交方向にスリット方向を設定し、木星やイオの明るさの漏れ込みを防ぐとともに、ガニメデ周辺の空間分布を取得した。なお、観測日当日は快晴だったため、良質なデータを取得できた。望遠鏡で取得したデータ(ダーク処理・フラット処理・波長較正済み)から、ある空間における波長スペクトルが得られるが、ターゲット周辺の粒子による発光輝線だけでなく、太陽光反射による吸収線 (フラウンホーファー線) も含まれる。そのノイズを除去するため、スペクトル規格化処理 (衛星スペクトル同士の除算処理など) を行い、太陽光吸収線を相殺することで微弱な輝線を探索した。



 結果として、今回の観測ではS+はS/N(signal-to-noise ratio)比が低く、有意な検出には至らなかった。

一方で、平行スリットデータからは、ガニメデのスペクトルに対してイオのスペクトルにはナトリウム輝線が強く現れ、イオからの距離が大きくなるにつれてナトリウム強度は減少した。これは、イオが主要な供給源であることを支持する。

さらに、ガニメデ付近ではナトリウム強度が再び増加する傾向が見られた。この傾向は、イオ起源のナトリウムがガニメデ軌道付近まで到達して、ガニメデ周辺で滞留している可能性を示す。垂直スリットデータからは、ガニメデ付近でナトリウム輝線は検出された。特にガニメデ本体に近い領域で強度が高くなる傾向がある。これはガニメデの重力に影響が考えられるが、ガニメデ表面のスパッタリングによるナトリウム放出の寄与も否定はできず、起源の分離にはさらなる観測が必要である。加えて、620㎚付近に特徴的な凹みが観測された。これは木星由来のメタン吸収、あるいはガニメデ表面の酸素分子による吸収の可能性があり、ガニメデ表面物質や大気との関連が期待される。



 今後、多方面分光やドップラー分光を組み合わせることで、ガニメデ周囲のNa分布の3次元的構造を明らかにしたい。

ガニメデオーロラの観測(特に紫外線)により、固有磁場との相互作用を直接検証することが望まれる。

620 nm吸収の正体解明、および硫黄イオンなど磁場に敏感な種の検出に向けた観測条件の検討を進めたい。

今回は可視観測でS+は見えず、磁場との関連が議論できなかったため、次はUV観測データ(ひさき衛星、ハッブル宇宙望遠鏡、JWSTなど)の解析を進めたい。