講演情報
[O12-P89]宇宙・成層圏環境における太陽電池用波長変換材料の開発
*久積 栄都1 (1. 徳島県立富岡西高等学校)
キーワード:
太陽電池、波長変換材料、宇宙、成層圏
1.背景と目的
現在、衛星用太陽電池の需要が拡大しているが、現行のものは宇宙・成層圏環境に存在する深紫外線を発電に十分利用できていない。本研究では、深紫外線を可視光へ波長変換する蛍光物質を作製し、衛星用太陽電池の発電効率向上を図ることを目的とする。
2.実験1の方法
蛍光物質Y₂O₃:Eu³⁺、VYO₄:Eu³⁺を作製し、シリコン太陽電池表面に塗布して励起・蛍光スペクトルを測定した(図1)。比較対象の未処理のnormal太陽電池と非蛍光物質Y₂O₃を塗布した太陽電池を加えた計4種を用意し、電流値測定装置(図2)とともに成層圏へ打ち上げ、地上から高度約27,000mまでの電流値の変化を測定した。
3.実験1の結果と考察
各高度帯における蛍光物質塗布型太陽電池の電流値を相対値で比較した(図3)。蛍光物質塗布型はnormal太陽電池と比べ、地上付近で約30%、成層圏で約40%の値にとどまった。主因として、過剰量な蛍光物質による必要以上の可視光遮断が考えられる。また、組成の未最適化による発光効率不足や塗布不均一も考えられる。 一方、高度10,000m〜15,000mではVYO₄:Eu³⁺、高度20,000m以上ではY₂O₃:Eu³⁺塗布型太陽電池に電流値増加が確認された。2種の励起スペクトルの差異により、効率よく吸収する紫外線の増加する高度が異なるためだと考えられる。また、電流値の大小関係が高度によって逆転したことから、最適な蛍光物質の選択は使用高度に依存することが示された。
4.実験2の方法
実験1の結果を踏まえ、可視光透過率の改善を優先し、蛍光ガラスを太陽電池へ載置する手法を採用した。蛍光ガラスには、可視光透過率と発光効率に優れるEu³⁺ドープフツホウ酸ガラス(50MgF₂-33.3BaO-16.7B₂O₃-1Eu₂O₃)を選定・作製し、物性評価を行った(図4)。次に、蛍光ガラスを太陽電池表面に載置してUV照射下の電流値を測定し(図5)、宇宙環境での電流増加量を理論計算で見積もった(図6)。
5.実験2の結果と考察
作製した蛍光ガラスの可視光透過率は約70%であり、実験1より改善された(図4)。ただし先行研究では、より高透過率な試料が得られており、作製条件の最適化による改善が期待される。 蛍光ガラス載置太陽電池のUV照射下電流値は、未載置と比較して約1.4倍に増加した(図5)。蛍光ガラスの利用により、電流値を向上でき得ることが示された。 一方、宇宙環境での電流値は現在主流の衛星用太陽電池よりも約26%低下する見込みである(図6)。主因は可視光透過率の不足であり、透過率と発光効率のさらなる向上が課題である。
6.結論
太陽電池の電流値向上には蛍光物質の高い可視光透過率が必要であり、粉状よりもガラス状の方が透過率確保の観点から有効である。また、最適な蛍光物質の選択は使用高度に依存し、高度ごとの紫外線環境を考慮した選定が必要である。
7.謝辞
本研究にご協力いただいた、徳島大学 佐原理教授、森賀俊広教授、阿南工業高等専門学校 小西智也教授、株式会社GOCCO様、JAXA 村上善幸様に心より御礼申し上げます。
8.参考文献
(1)「ユーロピウム付活希土類けい光体の発光と励起スペクトル」日立評論 1967年 5月号 小沢隆二,嶺岸久子
(2)"Effect of Mg2+ and fluorine on the network and highly efficient photoluminescence of Eu3+ ion in MgF2-BaO-B2O3 glasses" Shinozaki K, Sukenaga S, Shibata H, Akai T. The American Ceramic Society. 2019;102 2531-2541.
現在、衛星用太陽電池の需要が拡大しているが、現行のものは宇宙・成層圏環境に存在する深紫外線を発電に十分利用できていない。本研究では、深紫外線を可視光へ波長変換する蛍光物質を作製し、衛星用太陽電池の発電効率向上を図ることを目的とする。
2.実験1の方法
蛍光物質Y₂O₃:Eu³⁺、VYO₄:Eu³⁺を作製し、シリコン太陽電池表面に塗布して励起・蛍光スペクトルを測定した(図1)。比較対象の未処理のnormal太陽電池と非蛍光物質Y₂O₃を塗布した太陽電池を加えた計4種を用意し、電流値測定装置(図2)とともに成層圏へ打ち上げ、地上から高度約27,000mまでの電流値の変化を測定した。
3.実験1の結果と考察
各高度帯における蛍光物質塗布型太陽電池の電流値を相対値で比較した(図3)。蛍光物質塗布型はnormal太陽電池と比べ、地上付近で約30%、成層圏で約40%の値にとどまった。主因として、過剰量な蛍光物質による必要以上の可視光遮断が考えられる。また、組成の未最適化による発光効率不足や塗布不均一も考えられる。 一方、高度10,000m〜15,000mではVYO₄:Eu³⁺、高度20,000m以上ではY₂O₃:Eu³⁺塗布型太陽電池に電流値増加が確認された。2種の励起スペクトルの差異により、効率よく吸収する紫外線の増加する高度が異なるためだと考えられる。また、電流値の大小関係が高度によって逆転したことから、最適な蛍光物質の選択は使用高度に依存することが示された。
4.実験2の方法
実験1の結果を踏まえ、可視光透過率の改善を優先し、蛍光ガラスを太陽電池へ載置する手法を採用した。蛍光ガラスには、可視光透過率と発光効率に優れるEu³⁺ドープフツホウ酸ガラス(50MgF₂-33.3BaO-16.7B₂O₃-1Eu₂O₃)を選定・作製し、物性評価を行った(図4)。次に、蛍光ガラスを太陽電池表面に載置してUV照射下の電流値を測定し(図5)、宇宙環境での電流増加量を理論計算で見積もった(図6)。
5.実験2の結果と考察
作製した蛍光ガラスの可視光透過率は約70%であり、実験1より改善された(図4)。ただし先行研究では、より高透過率な試料が得られており、作製条件の最適化による改善が期待される。 蛍光ガラス載置太陽電池のUV照射下電流値は、未載置と比較して約1.4倍に増加した(図5)。蛍光ガラスの利用により、電流値を向上でき得ることが示された。 一方、宇宙環境での電流値は現在主流の衛星用太陽電池よりも約26%低下する見込みである(図6)。主因は可視光透過率の不足であり、透過率と発光効率のさらなる向上が課題である。
6.結論
太陽電池の電流値向上には蛍光物質の高い可視光透過率が必要であり、粉状よりもガラス状の方が透過率確保の観点から有効である。また、最適な蛍光物質の選択は使用高度に依存し、高度ごとの紫外線環境を考慮した選定が必要である。
7.謝辞
本研究にご協力いただいた、徳島大学 佐原理教授、森賀俊広教授、阿南工業高等専門学校 小西智也教授、株式会社GOCCO様、JAXA 村上善幸様に心より御礼申し上げます。
8.参考文献
(1)「ユーロピウム付活希土類けい光体の発光と励起スペクトル」日立評論 1967年 5月号 小沢隆二,嶺岸久子
(2)"Effect of Mg2+ and fluorine on the network and highly efficient photoluminescence of Eu3+ ion in MgF2-BaO-B2O3 glasses" Shinozaki K, Sukenaga S, Shibata H, Akai T. The American Ceramic Society. 2019;102 2531-2541.
