講演情報

[O12-P90]三陸ジオパークにおけるジオサイトの安全性評価の再検討- 世界ジオパーク登録をめざして -

*平 希望1、*川口 慶治1、*岩岡 美彩希1、*秋山 美鈴晃1、*坂本 彗音1 (1. マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニア)

キーワード:

地震、津波、避難行動、レジリエンス、安全性評価、ハザードマップ、地域知、伝承知

1. はじめに
 本クラブでは、郷土研究の一環として2018年より三陸ジオパークの調査・研究を進めてきた。その成果を踏まえ、世界ジオパーク登録に資する提案も行ってきた。2024年のJpGUでは、青森県八戸市、階上町、岩手県洋野町に所在する三陸ジオパークの18ジオサイト(図1)を対象に、多様性と安全性の評価について発表した。
 三陸ジオパークは、東日本大震災からの復興と減災・防災を重要な背景として創設されたが、設立当時と比べて現在は状況が変化している。たとえば、地震・津波に関する観測・研究の進展、ハザードマップの改訂、被災者のメンタルヘルスや健康への配慮の重視、スフィア基準を踏まえた避難所運営の見直しなどである。
 そこで本研究では、既存の安全性評価を再検討し、特に地震や津波の経験が少ない年少者や来訪者に向けた情報提供のあり方を検討した。これにより、各ジオサイトの安全性向上を図り、世界ジオパーク登録に向けた基礎的資料とすることを目的とした。

2. データおよび解析方法
 本研究では、2024年に作成した避難経路レポートを見直し、最新のハザードマップおよび現地踏査の結果をもとに再検討を行った。対象とした各ジオサイトについて、地震、津波・洪水、土砂災害、その他の危険要因を整理し、4段階で評価した。
 評価にあたっては、危険度について「命を守るための行動のしやすさ」に着目し、緊急度についてはサイトの状況や現地表示の有無、必要とされる対策の程度を踏まえて判定した。その結果を一覧表およびレーダーチャートとして整理し、比較・検討した。
 また、検討の過程で、地震発生直後の短時間の行動が命を守るうえで重要であるとの認識に至った。とくに来訪者や年少者にとっては、揺れている最中から揺れがおさまるまでの行動指針が必要と考えられたため、その時間帯に焦点を当てたパンフレットを作成した。

3. 結果
 評価一覧およびレーダーチャートの検討から、主に以下の結果が得られた。
  ・複数の災害を想定すべきジオサイトがある。
  ・沿岸部では、地震と津波による危険度が高い。
  ・岩石や露頭を見学するジオサイトの一部では、危険表示が十分でない。
  ・洪水や豪雨に伴う土砂災害は、気象情報により一定の予測が可能である。
  ・範囲が広いジオサイトでは、避難誘導や情報提示が難しい。
  ・ハザードマップの表現には市町村ごとの差がある。
  ・Web上には古いハザードマップが残っている場合がある。
 作成したパンフレットについては、以下の点に留意した。
  ・「命を守る行動」という表現を用いる。
  ・周囲の異変の感知を重視する。
  ・異変を感じたら、すぐに行動を起こすことを促す。
  ・地域知である「おうた」「D・C・H」等を取り入れる。
  ・スマートフォン用アプリの活用を勧める。
 作成したパンフレットは、ポスター発表時にあわせて提示する予定である。

4. 考察と今後の課題
 近年は、地震・津波に加え、酷暑や短時間強雨など災害リスクの多様化が進んでおり、ジオサイトにおける防災・減災への配慮はこれまで以上に重要になっている。本研究の検討からは、自治体ごとにハザードマップの表現や防災教育の内容に差があり、来訪者や年少者にとって理解しやすい情報提供を補う必要があることが明らかになった。
 また、会員が台湾やアメリカで得た知見から、地域の防災関係団体との連携も重要であると考えられた。今後は、本研究の成果をもとに関係機関に働きかけ、ジオサイトの安全性向上に結び付けていく必要がある。その際、インターネットの利活用に加え、作成したパンフレットの多言語化と配布方法の工夫も課題となる。
 地震・津波の常襲地域に暮らし、災害を正しく恐れ、正しく備えてきた地域の知恵を活かすことは、三陸ジオパークの価値を高めるだけでなく、世界ジオパーク登録に向けた重要な基盤にもなると考える。

参考文献
1) 三陸ジオパーク推進協議会,2020,三陸ジオパークガイドブック。
2)国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
(https://disaportal.gsi.go.jp/maps/index.html?ll=40.422644,141.592484&z=11&base=pale&vs=c1j0l0u0t0h0z0 )(参照2025年9月7日)
3)八戸市教育委員会教育指導課,2024,八戸版未来につながる防災ノート小学生(下学年)三訂版,八戸市.
4)佐竹健治,2017,17世紀に千島・日本海溝で発生した巨大地震,地震研究所彙報Vol.92,pp.31-47.
5)日本シェイクアウト提唱会議,2025,シェイクアウト訓練とは,防災教育普及協会.
(https://www.shakeout.jp/)(参照2026年2月17日)