講演情報
[O12-P94]太陽フレアとCMEの関係から探る磁気エネルギー解放過程
*皿海 翔大1 (1. 武蔵高等学校)
キーワード:
太陽フレア、コロナ質量放出、磁気リコネクション
背景・目的
太陽面における磁気エネルギー解放現象として、磁気リコネクションに伴う電磁波放出である太陽フレア(Giovanelli (46))と、プラズマの噴出現象であるコロナ質量放出(CME)が知られている。フレアはしばしばキンク不安定性(Török+ (05))をきっかけとしてトーラス不安定性(Kliem+ (06))を駆動し、CMEを伴う噴出型フレアへと進展する(Pallavicini+ (77))。
フレアやCMEの物理的機構について、現在いくつかのモデルが提唱されているが、太陽で実際にどのモデルが優勢かは明らかになっていない。そこで本研究では、噴出型フレアにおける両者の関係を調査することで、磁気エネルギー解放過程に関する知見を得ることを目的とした。
手法
ひのでフレアカタログ[1]およびSOHO CMEカタログ[2]に基づき噴出型フレアを、C8クラス以上のフレアで1時間以内に同一活動領域上でCMEが発生したものと定義した。得られた延べ969件の噴出型フレアについて、CME平均速度、質量、および両者のエネルギーをリスト化した。
フレアエネルギーは、X線フラックスの時間変化を線形近似して算出した。また、太陽面中央部で発生する小規模なCMEは視線方向の影響で速度が過小評価されやすいため、回帰補正後の下位15%を外れ値として除外した。
結果1:エネルギー関係
フレアエネルギーとCMEエネルギーの関係を図1に示す。CMEエネルギーはフレアエネルギーに対して非線形な相関をもって増大することが分かった。
上位25%のデータについては、指数1.198±0.008のべき乗則で良好に近似された(R=0.521)。下位25%のデータは統計的分散が大きく、有意な近似は得られなかった。
結果2:黒点群ごとの統計特性
リスト内で5回以上の噴出型フレアが記録された34の黒点群について、個別にエネルギー相関を評価した。結果、べき回帰の相関係数の絶対値の平均は0.577、16群において0.6以上と、特定の黒点群内では統計的な分散が抑制される傾向が示唆された。
各群のべき指数と標準偏差からヒストグラム(図2)を作成したところ、指数が1.2付近に集中し、より大きな値を示すデータも確認された。指数はCME平均質量(対数)と弱い負の相関(R=-0.411)が見られ、ローブ長が短いと指数が大きくなる傾向が得られた。
結果3:CME速度・質量
CMEの平均速度および質量と、フレアエネルギーの関係を図3に示す。結果、フレアエネルギーに対しては、CME速度よりも質量の方が比較的強い相関を示すことが判明した(R=0.449 および 0.482)。
議論1:磁気リコネクション過程
フレアエネルギーは局所長さLrecと領域幅δについて、Lrec2δに比例する。また、磁気エネルギーはローブ長さLについて、L3に比例する。
磁場はイベントごとに有意な差はなく、CMEエネルギー解放効率は主に自由磁気エネルギーの割合に依るため、大局的な関係は空間スケールに依存すると考えられる。
Lrec∝Lと仮定すると、上位データの指数1.20を達成するには、δ∝L0.50ほどであれば良い。δは内部層の厚さ程度と考えられるので、これはSweet-Parkerモデルでのリコネクション (Parker (57))を支持する。そのため、上位データ(≳1029 erg)では実際にSweet-Parkerモデルをベースとしたプラズモイド不安定による磁気リコネクションが行われていることが示唆された。
下位データ(〜1028 erg)について、長さへの依存が小さく別の機構が解放するエネルギー量を大きくしていると考えられ、Petchekモデルをベースとした無衝突リコネクションが行われている可能性がある。
議論2:CMEエネルギー解放過程
噴出はフレアによって駆動されるため、その特徴量はフレア特徴量と関係することが期待される。上の議論よりCMEエネルギーがまず与えられ、結果より、質量もフレア特徴量から与えられると推定できる。密度一様と考えると、エネルギーと磁場から与えられる空間スケールが質量あたり、これがフレアエネルギーとよく相関することから、エネルギー決定には磁場よりもローブ長が優位であると推測できる。
結論
太陽での磁気リコネクションについて、高エネルギーではプラズモイド不安定、中程度では無衝突リコネクションが働いている可能性を示唆し、また、CMEエネルギー決定には空間スケールが優位であると推測した。
主要参考文献
[1]Watanabe, K. et al, 2012, Solar Phys, 279, 317.
[2]Gopalswamy, N. et al, 2024, arXiv, arXiv:2407.04165.
太陽面における磁気エネルギー解放現象として、磁気リコネクションに伴う電磁波放出である太陽フレア(Giovanelli (46))と、プラズマの噴出現象であるコロナ質量放出(CME)が知られている。フレアはしばしばキンク不安定性(Török+ (05))をきっかけとしてトーラス不安定性(Kliem+ (06))を駆動し、CMEを伴う噴出型フレアへと進展する(Pallavicini+ (77))。
フレアやCMEの物理的機構について、現在いくつかのモデルが提唱されているが、太陽で実際にどのモデルが優勢かは明らかになっていない。そこで本研究では、噴出型フレアにおける両者の関係を調査することで、磁気エネルギー解放過程に関する知見を得ることを目的とした。
手法
ひのでフレアカタログ[1]およびSOHO CMEカタログ[2]に基づき噴出型フレアを、C8クラス以上のフレアで1時間以内に同一活動領域上でCMEが発生したものと定義した。得られた延べ969件の噴出型フレアについて、CME平均速度、質量、および両者のエネルギーをリスト化した。
フレアエネルギーは、X線フラックスの時間変化を線形近似して算出した。また、太陽面中央部で発生する小規模なCMEは視線方向の影響で速度が過小評価されやすいため、回帰補正後の下位15%を外れ値として除外した。
結果1:エネルギー関係
フレアエネルギーとCMEエネルギーの関係を図1に示す。CMEエネルギーはフレアエネルギーに対して非線形な相関をもって増大することが分かった。
上位25%のデータについては、指数1.198±0.008のべき乗則で良好に近似された(R=0.521)。下位25%のデータは統計的分散が大きく、有意な近似は得られなかった。
結果2:黒点群ごとの統計特性
リスト内で5回以上の噴出型フレアが記録された34の黒点群について、個別にエネルギー相関を評価した。結果、べき回帰の相関係数の絶対値の平均は0.577、16群において0.6以上と、特定の黒点群内では統計的な分散が抑制される傾向が示唆された。
各群のべき指数と標準偏差からヒストグラム(図2)を作成したところ、指数が1.2付近に集中し、より大きな値を示すデータも確認された。指数はCME平均質量(対数)と弱い負の相関(R=-0.411)が見られ、ローブ長が短いと指数が大きくなる傾向が得られた。
結果3:CME速度・質量
CMEの平均速度および質量と、フレアエネルギーの関係を図3に示す。結果、フレアエネルギーに対しては、CME速度よりも質量の方が比較的強い相関を示すことが判明した(R=0.449 および 0.482)。
議論1:磁気リコネクション過程
フレアエネルギーは局所長さLrecと領域幅δについて、Lrec2δに比例する。また、磁気エネルギーはローブ長さLについて、L3に比例する。
磁場はイベントごとに有意な差はなく、CMEエネルギー解放効率は主に自由磁気エネルギーの割合に依るため、大局的な関係は空間スケールに依存すると考えられる。
Lrec∝Lと仮定すると、上位データの指数1.20を達成するには、δ∝L0.50ほどであれば良い。δは内部層の厚さ程度と考えられるので、これはSweet-Parkerモデルでのリコネクション (Parker (57))を支持する。そのため、上位データ(≳1029 erg)では実際にSweet-Parkerモデルをベースとしたプラズモイド不安定による磁気リコネクションが行われていることが示唆された。
下位データ(〜1028 erg)について、長さへの依存が小さく別の機構が解放するエネルギー量を大きくしていると考えられ、Petchekモデルをベースとした無衝突リコネクションが行われている可能性がある。
議論2:CMEエネルギー解放過程
噴出はフレアによって駆動されるため、その特徴量はフレア特徴量と関係することが期待される。上の議論よりCMEエネルギーがまず与えられ、結果より、質量もフレア特徴量から与えられると推定できる。密度一様と考えると、エネルギーと磁場から与えられる空間スケールが質量あたり、これがフレアエネルギーとよく相関することから、エネルギー決定には磁場よりもローブ長が優位であると推測できる。
結論
太陽での磁気リコネクションについて、高エネルギーではプラズモイド不安定、中程度では無衝突リコネクションが働いている可能性を示唆し、また、CMEエネルギー決定には空間スケールが優位であると推測した。
主要参考文献
[1]Watanabe, K. et al, 2012, Solar Phys, 279, 317.
[2]Gopalswamy, N. et al, 2024, arXiv, arXiv:2407.04165.
