講演情報
[O12-P97]放射線測定器の性能に基づく検出エネルギーの評価
*髙橋 逞人1,2 (1. 福島県立福島高等学校、2. 加速キッチン)
キーワード:
放射線、シンチレータ
1.背景 現在の物質の放射能分析では、試料を採取し、大型の装置を用いて測定する方法がとられている。しかし私は、その場で測定と分析を行えないかと考えた。そのためには、放射線測定器からどのようなエネルギーをどう評価すればよいかを調べる必要がある。本研究では、放射線測定器が放射性核種を同定できる程度の性能(エネルギー分解能)をもっているかを調べた。
2.検出メカニズム 本研究では、シンチレーター内蔵の放射線検出器「Cosmic Watch」を用いた。シンチレーターは放射線が入射すると発光する。その後、光は半導体型光センサー(SiPM)で電気信号に変換され、非反転増幅回路で電気信号を増幅した後、Arduinoにて電気信号を0~1024のデジタル値であるADC値に変換する。ADC値は、電気信号の波高の相対的な強度を表す指標として保存される。また、非反転増幅回路内の抵抗値を変化させることでADC値を増幅させることができ、この時の割合を増幅率という。保存されたADC値はグラフ化し、エネルギーにおけるカウント数の分布を視覚化できる。中でも、カウント数が比較的多い部分をピークとし、信号が検出されたと判断する指標とした。
Cosmic Watchを用いるにあたって、先行研究:『秋田県における地上でのμ粒子検出頻度と天気ごとの地上気温、湿度、気圧との偏相関』より、装置内の半導体からの暗電流に由来する電気信号が検出されることが確認された。これにより、測定の際に放射線とノイズによる信号が混合するという問題が生じる。今回の実験では、実環境下で測定することを踏まえ、ノイズと放射線による電気信号を増幅率で区分けする手法をとった。
これらの仕組みを踏まえ、以下の2つの実験を行った。
①増幅率の変化による、宇宙線の検出の違い
②放射性物質を用いたエネルギーピークの検出
3.①の実験の目的と手法 回路の増幅率を変化させて測定を行い、宇宙線由来のエネルギーのピークの変動、ノイズの信号との混合、ノイズの増幅について検証する。なお、分析の際は1時間当たりの検出数に直して分析を行う。シンチレーターはCsIシンチレーターを用い、増幅率は1.5 1.8 2.0 3.0 4.0 の5種類で比較した。
4.結果 増幅率が1.5 1.8 2.0の場合、エネルギーのピークが見られ、3.0 4.0ではピークが見られなかった。また、この時の増幅率ではノイズによるピークもあわせて増幅された。
5.考察 増幅率によって、検出エネルギーも増幅されていることが分かった。しかし、宇宙線のエネルギーのピークは分布が広く、グラフでの波高が小さいため、判断が難しい。また、増幅率が一定値を超えると、ノイズによるADC値も増幅されることが分かった。これにより、増幅率2.0 3.0 4.0では、ノイズと宇宙線による信号が混合した可能性がある。
6.②の目的と手法 増幅率を2.0に固定し、放射性セシウムを含む土壌を用いて、エネルギーのピークの検出、ピークからの固有のエネルギーが検出可能かを検証する。なお、分析するにあたって、バックグラウンド処理を施した。
7.結果 結果は、バックグラウンドデータに比べ、全体的にカウント数が増加していた。中でもADC値500~1024までの範囲において検出数がより増加していた。
8.考察 放射性物質が出す放射線を検出することはできていた。しかし、エネルギー分布が広く放射性核種を同定するほどの正確性は確認できなかった。土壌のほかの放射性物質の影響も考えられるため、固有のエネルギーを持つ物質の放射能を分析するために、より精度の良い実験条件で行う必要がある。
9.まとめ 増幅率の変化における実験では、エネルギーやノイズによる信号のピークの分布が増減することが確認できた。土壌による固有のエネルギーでの計測では、エネルギーを検出することができた。今後の研究では、同定のためのピークを検出するための工夫を施すことが課題である。
引用・参考文献 『秋田県における地上でのμ粒子検出頻度と天気ごとの地上気温、湿度、気圧との偏相
関』https://www3.e-kenkyu.com/j-sci-eggs/uploads/manuscript/file/21/Vol.4-
2110004_2021.pdf 熊谷洸希et al., Journal of Science EGGS, 4, 2110004 (2021).
謝辞 今回の研究にてご協力をしてくださった、「加速キッチン」の田中香津生先生(早稲田大学理工学術院総合研究所主任研究員、加速キッチン合同会社代表)や齋藤隆太さん(東北大学、加速キッチン合同会社)、その他メンターの方々に感謝申し上げます。
今回の研究にてご指導、ご助言してくださった福島県立福島高等学校の菊池啓一郎先生に感謝申し上げます。
2.検出メカニズム 本研究では、シンチレーター内蔵の放射線検出器「Cosmic Watch」を用いた。シンチレーターは放射線が入射すると発光する。その後、光は半導体型光センサー(SiPM)で電気信号に変換され、非反転増幅回路で電気信号を増幅した後、Arduinoにて電気信号を0~1024のデジタル値であるADC値に変換する。ADC値は、電気信号の波高の相対的な強度を表す指標として保存される。また、非反転増幅回路内の抵抗値を変化させることでADC値を増幅させることができ、この時の割合を増幅率という。保存されたADC値はグラフ化し、エネルギーにおけるカウント数の分布を視覚化できる。中でも、カウント数が比較的多い部分をピークとし、信号が検出されたと判断する指標とした。
Cosmic Watchを用いるにあたって、先行研究:『秋田県における地上でのμ粒子検出頻度と天気ごとの地上気温、湿度、気圧との偏相関』より、装置内の半導体からの暗電流に由来する電気信号が検出されることが確認された。これにより、測定の際に放射線とノイズによる信号が混合するという問題が生じる。今回の実験では、実環境下で測定することを踏まえ、ノイズと放射線による電気信号を増幅率で区分けする手法をとった。
これらの仕組みを踏まえ、以下の2つの実験を行った。
①増幅率の変化による、宇宙線の検出の違い
②放射性物質を用いたエネルギーピークの検出
3.①の実験の目的と手法 回路の増幅率を変化させて測定を行い、宇宙線由来のエネルギーのピークの変動、ノイズの信号との混合、ノイズの増幅について検証する。なお、分析の際は1時間当たりの検出数に直して分析を行う。シンチレーターはCsIシンチレーターを用い、増幅率は1.5 1.8 2.0 3.0 4.0 の5種類で比較した。
4.結果 増幅率が1.5 1.8 2.0の場合、エネルギーのピークが見られ、3.0 4.0ではピークが見られなかった。また、この時の増幅率ではノイズによるピークもあわせて増幅された。
5.考察 増幅率によって、検出エネルギーも増幅されていることが分かった。しかし、宇宙線のエネルギーのピークは分布が広く、グラフでの波高が小さいため、判断が難しい。また、増幅率が一定値を超えると、ノイズによるADC値も増幅されることが分かった。これにより、増幅率2.0 3.0 4.0では、ノイズと宇宙線による信号が混合した可能性がある。
6.②の目的と手法 増幅率を2.0に固定し、放射性セシウムを含む土壌を用いて、エネルギーのピークの検出、ピークからの固有のエネルギーが検出可能かを検証する。なお、分析するにあたって、バックグラウンド処理を施した。
7.結果 結果は、バックグラウンドデータに比べ、全体的にカウント数が増加していた。中でもADC値500~1024までの範囲において検出数がより増加していた。
8.考察 放射性物質が出す放射線を検出することはできていた。しかし、エネルギー分布が広く放射性核種を同定するほどの正確性は確認できなかった。土壌のほかの放射性物質の影響も考えられるため、固有のエネルギーを持つ物質の放射能を分析するために、より精度の良い実験条件で行う必要がある。
9.まとめ 増幅率の変化における実験では、エネルギーやノイズによる信号のピークの分布が増減することが確認できた。土壌による固有のエネルギーでの計測では、エネルギーを検出することができた。今後の研究では、同定のためのピークを検出するための工夫を施すことが課題である。
引用・参考文献 『秋田県における地上でのμ粒子検出頻度と天気ごとの地上気温、湿度、気圧との偏相
関』https://www3.e-kenkyu.com/j-sci-eggs/uploads/manuscript/file/21/Vol.4-
2110004_2021.pdf 熊谷洸希et al., Journal of Science EGGS, 4, 2110004 (2021).
謝辞 今回の研究にてご協力をしてくださった、「加速キッチン」の田中香津生先生(早稲田大学理工学術院総合研究所主任研究員、加速キッチン合同会社代表)や齋藤隆太さん(東北大学、加速キッチン合同会社)、その他メンターの方々に感謝申し上げます。
今回の研究にてご指導、ご助言してくださった福島県立福島高等学校の菊池啓一郎先生に感謝申し上げます。
