講演情報

[O12-P99]有色鉱物の累帯構造を指標として岩石が形成された環境を推定する ―ニュージーランド南島北部の深成岩~変成岩について―

*西川 大貴1、*山口 歩珠1、*松岡 沙和1、*板家 有良1、辻本 ゆき乃1、藤本 知真1、関尾 悠起1、多田 悠希1、田路 倖太1、和田 知優1 (1. 兵庫県立姫路東高等学校)

キーワード:

波状累帯構造、組成累帯構造、マグマ分化末期、熱水残液、マイロナイト化、鉱染

筆者らは2024年度、オーストラリア南東部NSW州Bingi Bingi 複合深成岩体の露頭調査を行い、閃緑岩およびトーナル岩の角閃石から、1㎛程度の微細な帯が陽イオンを交代しながら数㎜の幅で波状に繰り返す微細構造(波状累帯構造)を発見した。EPMAによる角閃石の波状累帯構造と、共存する長石や酸化鉱物の化学分析から、鉱物温度計と圧力計を用いると、その平衡温度・圧力はともにサブソリダス環境を示し、角閃石の淡緑色リム部やそこに発達する波状累帯構造はサブソリダス過程における累進的酸化によって形成されたことを明らかにした1)
 この研究結果をAGUで発表したところ、以下のような課題が示された。(1)複鎖の角閃石の波状累帯構造がマグマ分化末期の環境を反映するのであれば、単鎖のケイ酸塩鉱物である輝石でも見られるのではないか。(2)異なる時代、異なる地域では見られるのか。(3)変成作用による波状累帯構造-深成岩の弱変成作用-深成岩の熱水残液によるイオン置換で形成される波状累帯構造は、同じ過程や条件によって引き起こされる連続的な現象なのか。それらは同様の波状累帯構造を形成するのか。
その課題の解決のために、筆者らはニュージーランド南島北部Nelson~Motueka地域の調査を行った。本調査地域には、構造的に複雑なテレーンの集合体であり、Midianバソリスの一部が露出している。一方、Nelson 南部にはシルル紀~オルドビス紀の変成作用を受けた結晶質石灰岩、藍閃石片岩、紅簾石片岩が分布し、これらに接してデボン紀〜白亜紀の深成岩類が帯状に貫入している。西側には斑レイ岩が分布しており、東側には白亜紀の閃緑岩が分布している2)。Motueka南部および北部、Nelson南部には砂岩層が分布しており、調査地域中央部のTasman Bayに面した地域には広く礫岩層が分布している2,3)。砂岩に含まれる礫の一部に閃緑岩の礫を含んでいることから、礫岩層は変成岩や深成岩、砂岩層の形成後に堆積したものと考えられる。
 採取した20点の岩石試料によると、斑レイ岩の比重は3.2g/cm³と高く、鉱染によって黄鉄鉱が大量に晶出している。閃緑岩にも黄鉄鉱の集合体がみられるが比重は2.7g/cm³でそれほど高くない。顕微鏡観察によると、斑レイ岩はマイロナイト化しており、残存する輝石や再結晶化して形成された角閃石に波状累帯構造は見られなかった。これは、沈み込みに伴う高温高圧環境で強い変成作用を受け2,3、熱水による鉱染を経て、鉱物が短時間で再結晶し、化学平衡に達したからと考えられる。
閃緑岩もマイロナイト化に至らないが弱い変成作用または変質の影響を受けている。半自形の角閃石のリム部には、マグマ分化末期に形成されたと考えられる波状累帯構造が残存しており、これはマグマ分化末期の熱水残液の循環や、その後の緩やかな変成作用・鉱染による再平衡によって形成された可能性がある。
 また、変成岩の角閃石には組成累帯構造が見られることがある4)。この構造は温度・圧力変化に応じた連続的な組成変化を記録するものだが、マグマ分化末期の熱水残液の循環によって形成される波状累帯構造とは形成過程が異なっている。

1)Kawakatsu,K., Matsuoka,S., Yamaguchi,A., Tsujimoto,Y., Nishikawa,D. and Fujimoto,K.. 2025. American Geophysical Union 2025, Lecture Abstract
2)Mortimer, M.(2004)New Zealand‘s Geological Foundations(Gondwana Research, Vol.7, No.1, 261-272)
3)Rattenbury, M.S.; Cooper, R.A.; Johnston, M.R. (compilers) 1998: Geology of the Nelson area: scale 1:250,000. Lower Hutt: Institute of Geological & Nuclear Sciences Limited. Institute of Geological & Nuclear Sciences 1:250,000 geological map 9. 67 p. + 1 folded map
4)竹下徹・八木公史・田上雅彦. 2001. 日本地質学会第108年学術大会講演要旨