講演情報

[PPS03-P06]はやぶさ2によるTorifuneフライバイ観測における3次元形状復元手法の事前検討

*黒岩 和貴1、平田 成1 (1.公立大学法人会津大学)

キーワード:

小惑星、はやぶさ2、lightcurve inversion、rim profiling

小惑星の3次元形状モデルは天体の表面地形や内部構造を推定するため,探査の初期段階で作成されるべき重要な成果物である.2026年に日本の小惑星探査機はやぶさ2が小惑星トリフネのフライバイ観測を行う.フライバイは対象天体の近傍を探査機が高速で通過しながら観測する手法であり,その性質上得られるデータが限られる.限られたデータから正確なモデルを復元するためには入念な事前準備が重要である.筆者らはこれらの一環として,フライバイ運用時に想定される観測条件と、その条件下で得られるデータへの既存の形状モデリング手法の適用性について検証を行っている.現在検証対象としているモデリング手法は, Shape-from-Motion; SfM, Stereophotoclinometry (SPC), rim profiling (aka Shape-from-Silhouette; SfS), lightcurve inversionである.本稿では,SfM と SPC による形状復元に関係する視差の最大量の推定,lightcurve inversionとrim profilingによる形状復元に関する予備的な結果を述べる.
先に挙げた検討手法のうち,SfMとSPCはステレオ視の原理を使用している.ステレオ視は対象物に対して複数の異なる位置から撮影を行った際の視差から立体形状を復元する手法である.視差量は形状復元の成否や精度に直結するが,今回のフライバイ観測では探査機指向方向を変えることができないため,カメラの視野より大きい視差を得ることができない。また、フライバイ観測ではステレオペア間の解像度の差が大きいため,解像度が悪い側の画像での画素単位での視差量が重要になる.そこで,実際の観測条件において達成可能な画素単位での視差量の見積もりを行なった.
lightcurve inversionは天体の自転に伴い反射輝度が変化することを利用して形状を推定する手法である.すでに地上観測データを用いて,lightcurve inversionによりトリフネの形状推定が試みられている.フライバイ観測においても,近接観測の前に高精度のlightcurve 観測を行うことができるので,ステレオ視が困難な状況でもlightcurve inversionは適用可能であると想定されている.lightcurve inversionを可能とするソフトウェアはいくつか存在しているが,そのうちADAMおよびKaasalainenが開発したツールの二種類について,フライバイ観測で得られるlightcurveデータを想定した検証を行った.
rim profilingは画像中の小惑星の輪郭を用いて形状を推定する手法である.フライバイ観測ではほぼ一方向のみから見た輪郭しか得ることができないが,ステレオ視が困難な状況でも適用可能であること,またlightcurve inversionより直接的な形状に関する制約を与えることができる点で有用である.SPCにはrim profilingを行う機能も備わっているため,フライバイ観測で得られる画像データを想定した検証を行った.