講演情報
[PPS03-P14]Comet Interceptorミッションに向けた探査機姿勢データを用いた彗星周囲のダスト質量分布の推定手法の開発
*渡邉 紀輪1、笠原 慧1、佐々木 貴広2、尾崎 直哉3 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構 研究開発部門、3.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)
キーワード:
彗星、Comet Interceptor、ダスト、姿勢制御、質量推定
Comet Interceptorは、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で進める、長周期彗星をターゲットとする世界初の探査ミッションである。本ミッションでは、1つの親機と2つの子機が連携してフライバイ観測を行う計画であり、2029年の打ち上げを目指している。彗星近傍のダスト環境の解明は、彗星の活動・進化メカニズムや彗星核本体の物質構成、さらには惑星形成プロセスを理解する上で重要である。また、高速フライバイ時におけるダスト衝突リスクを評価し、ミッションの安全性を担保するためにも不可欠な情報である。本ミッションの探査機子機B1には、リソースの制約上、専用のダスト計測器が搭載されていない。同様にダスト計測器を持たなかったハレー彗星探査機「すいせい」においては、ダスト衝突による姿勢変化とスピン速度変化を解析することで、衝突ダストの質量の下限値を推定できることが示されている。本ミッションの探査機子機B1は、「すいせい」とは異なり直方体に近い形状であり、制御方式も三軸姿勢制御であるが、ダスト衝突による角運動量変化を捉えるという基本原理は共通している。そのような先行研究のアプローチを参考にしつつ、B1の機体形状および制御則に即した推定モデルを構築する必要がある。そこで本研究では、ダスト衝突によって探査機に生じる姿勢変化や角速度変化に着目し、三軸姿勢制御系のデータを用いてダストの質量や分布を推定する手法の開発と検討を行うことを目的とする。探査機がダストコマを高速で通過する際、多数のダスト粒子が機体に衝突するが、この衝突により探査機に外乱トルクが作用し、機体の姿勢変化が生じる。探査機の姿勢制御系は、この姿勢変化を打ち消して姿勢を維持するためにリアクションホイールを駆動させる。本研究では、このリアクションホイールの応答が含まれた姿勢変化データから衝突したダストの質量を推定することを目指し、Comet Interceptorの機体モデルおよび想定されるフライバイ条件に基づき、ダスト衝突シミュレーションを行った。ダストのサイズ分布や空間分布を仮定した上で、モンテカルロ・シミュレーションにより探査機への衝突イベントを生成し、それに応答する姿勢制御系の挙動を再現した。得られた時系列データを用い、衝突した個々のダスト粒子の質量の推定を試みた。シミュレーションの結果、比較的質量の大きなダスト粒子の衝突については、姿勢データの急激な変動として検出可能である見通しが得られた。また、ダストの衝突位置の不確定性が質量の推定精度に与える影響についても評価を行った。本発表では、開発した推定アルゴリズムの概要、および本手法における推定精度と検出限界について議論する。本手法が確立されれば、ダストカウンターを持たない探査機であっても、機体の姿勢データを活用することで彗星周囲のダストの質量分布を推定することが可能となり、将来の惑星探査ミッションにおいても広範な応用が期待される。
