講演情報

[PPS04-P02]低温氷レゴリス上へのクレーター形成実験とスケール則の構築

*上坂 美月1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、大川 初音1、菊川 涼介1、野口 琴海1、﨑村 達也1 (1.国立大学法人神戸大学)

キーワード:

重力支配域、未焼結多孔質氷、レゴリス層

1. 背景と目的
 本研究では,H₂O氷レゴリス層模擬試料に対し重力支配域のクレーターを形成して,氷小天体表層の衝突クレーターを再現,πスケール則を構築した.
 衝突クレーターは,太陽系固体天体において普遍的な地質構造であり, 天体の形成過程や表層進化過程を記録している. その中で氷小天体は, 太陽系外縁部で形成されたため, H₂O氷が主構成物質である. そのような天体の表層は, 天体衝突で生じたH₂O氷のエジェクタが, その天体の脱出速度以下の放出速度であったために表層に降り積もることで, H₂O氷レゴリス層が形成されている. また,表層の温度が150K以下であるため, レゴリス層は未焼結の粉粒体である. 天体深部まで至らずH₂O氷レゴリス層で形成される衝突クレーターは, 従って重力支配域である.
 これまで, 岩石天体だけでなく氷小天体についても多数の衝突クレーター再現実験が行われてきた. しかし, それらは大抵氷地殻に対する衝突クレーターの再現, つまり強度支配域における研究であり, 重力支配域の研究はほとんどない. そのため, 今回は-80℃の氷レゴリスを模擬した未焼結多孔質氷を用いて, 自由落下によるクレーターを再現し, クレーターサイズに関するスケール則を構築する.

2. 実験手法
 模擬試料作製と実験及び実験後の解析は, -15℃の低温室内で行った. H₂O氷レゴリス模擬試料として, 氷ブロックを破砕し粒径125~710µmの氷粒子を準備した.この試料を断熱性容器内で液体窒素により冷却し, 実験前に-80~-100℃まで昇温して液体窒素を完全に昇華した後, 直径100mm, 高さ50mmの金属容器に充填した. その際,タッピングをして密度を上げ, その結果空隙率は53%となった.
 実験は, 室内の空気が流入し標的が焼結することを防ぐために, 簡易防塵ブース内で行った.衝突実験は金属容器に充填した未焼結多孔質氷に対し自由落下によりクレーターを形成した.使用した弾丸は直径3, 5, 7, 10, 及び15mmの5種類のガラスビーズ球を用いた.衝突速度は3.12~3.83ms-1で,衝突実験の様子は正面から高速カメラで撮影し,クレーター形成過程を観測した. 実験後は回収した標的で二次元レーザー変位計を用いてクレータープロファイルを取得した. 尚, 粒径500µmの砂で同様の手法で対照実験を行った.
 更に, 未焼結氷粒子の物性を調べるために注入法で安息角を計測した. この時, 事前に液体窒素で冷却した金属製の漏斗に, 漏斗内に氷粒子が溜まらないように注入し, 約10cmの高さから落下させて積もらせた. 斜面に積もった粒子は安息角に達すると崩壊角まで崩れるため, 崩れる前の角度を安息角, 崩れた後の角度を崩壊角として計測し, 粒径500µm及び100µmの石英砂, 粒径100µmのガラスビーズと比較した.

3. 実験結果
 まず未焼結多孔質氷の安息角は44°となり, 石英砂(40°)やガラスビーズ(24°)と比較して大きくなった. これはいびつな形状による氷粒子同士のかみ合いによるものだと考える.
 次に衝突実験は, リム及び深さの浅いお椀型クレーターが形成された. リム半径及びクレーター半径は弾丸の運動エネルギーの増加と共にべき関数的に増大した. 3mm弾丸を落下させた時は弾丸が埋まらず, 5, 7mmは埋もれる時と埋もれない時があり, 10, 15mmは常に弾丸が標的に埋もれた. エジェクタは, 焼結雪標的の時標的表面とエジェクタの間に間隙が生じる[1]のに対し, 本実験では標的表面から連続的にエジェクタカーテンが形成され, 未焼結であることが確認できた.
 クレーター半径に対するクレーターサイズスケール則は, 未焼結多孔質氷がπR=0.17π2-0.29, 500µm石英砂がπR=0.27π2-0.27となり, 重力支配域で形成されたことを示す結果となった. また, 未焼結多孔質氷の方が砂よりもπRが小さくなったが, これは安息角でも示されているように, 氷粒子間の摩擦が大きいため, クレーターが小さくなったと考えられる.

[1]Arakawa and Yasui, 2011