講演情報

[PPS04-P04]破砕性粉体ターゲットに対する衝突時の応力伝播と内部挙動の解析

*北 和真1、坂田 大典1、髙田 智史1 (1.東京農工大学)

キーワード:

衝突、小惑星、クレーター

宇宙空間における衝突現象では,被衝突物の衝突後における内部応力伝播とその伝播速度の解析が重要であり,内部挙動の時間的・空間的発展の理解を深めることで,衝突前後における衝突天体の軌道予測を行うことができる.近年では,地球に接近する天体に対し人工的な衝突を起こすことで軌道を修正し,地球衝突を防ぐ研究が行われており,実際にNASAによるDART試験では,小惑星ディモルフォスに人工衛星「DART」を衝突させることにより,公転周期を変化させることに成功しており,人為的衝突による軌道変更の有用性が実証された.衝突前後の標的天体に対する運動量輸送・天体の軌道予測の重要性は増してきており,これらの衝突前後の各パラメータについては,標的全体の挙動の理解とパラメータに関わる要素の解明が重要である.要素の一部として,衝突時の標的天体表層の粒子層やそれを構成する粒子パラメータ,空隙率などが存在する.特に空隙率は応力伝播や応力経路,エネルギー散逸挙動に大きく影響を与える要素と考えられている.
 本研究では,標的天体モデルと衝突物モデルを作成し,標的天体の応力伝播と内部挙動の可視化を行うことで,運動量輸送や構成粒子挙動,クレーター形成を中心に解析を行い,衝突前後に関わるパラメータへの影響の理解を深めることを目的とする.本研究は離散要素法のシミュレータであるLAMMPSを用いて行い,標的天体を破砕性粉体,衝突物を破砕性粉体および非破砕性粉体と仮定することで,粒子の集合体である粉粒体による衝突シミュレーションを行った.本シミュレーションでは,各モデルを構成する粒子に対し,運動方程式を逐次的に解くことで系の時間発展を計算しており,より現実的な運動挙動を示すように設定した.粒子間の接触には弾性力,摩擦力を考慮するHertz-Mindlinモデルに対して,表面エネルギーによる凝着力を加えたJKR(Johnson-Kendall-Roberts)モデルを相互作用として用いており,構成粒子の接触・剥離挙動の再現を行い,実際の地表粒子に近い挙動を設定した.シミュレーション条件について,標的天体の空隙率は68%,55%,48%の3条件を設定した.また,標的天体に対する衝突物の衝突角度を0º,15º,30º,45º,60ºの条件に変化させた.
 結果,衝突による標的天体内部での応力伝播と運動量損失の可視化から,空隙率の減少に伴い応力伝播が促進され,運動量損失は減少傾向にあることがわかった.応力伝播の速度が増加することで応力散逸が促進され,標的天体がやわらかい性質を示したと考える.衝突角度変化による応力伝播の変化は,角度に対する進行方向や円周近傍の応力が上昇し,応力散逸も少なく,局所的な応力集中が発生していることを確認した.また,標的天体全体のモデルに対し,局所的な衝突点近傍の地表に対して詳細な解析を行うため,地表面に絞ったモデルによるシミュレーションも行った.地表粒子をHertz-Mindlinモデル,JKRモデルおよび凝着力それぞれでの相互作用に設定し,地表面での層の強固さ・空隙率を再現した.標的天体地表を模した粒子層に対し,衝突物構成粒子の混合具合・密度分布を調査することで,応力伝播と関連した衝突・クレーター形成に関わる粒子挙動の可視化も行った.衝突速度や空隙率などの各条件に対して,衝突物が地表粒子層に突入した後の挙動は変化を示しており,地表面でのクレーター形状および標的天体地表内部においても衝突物モデルの拡大について変化を示した.本発表では,衝突現象に対してこれら2つのシミュレーションモデルを用い,衝突前後における応力伝播と各モデルの内部挙動について報告する.