講演情報
[PPS04-P05]多孔質氷・岩石混合天体の衝突破壊強度に関する実験的研究
*末田 空良1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、大川 初音1、﨑村 達也1、野口 琴海1 (1.国立大学法人神戸大学)
キーワード:
氷天体、衝突物理学、衝突過程、氷岩石混合物、多孔質標的
要約:本研究では,融解を経験していない始原的な多孔質氷天体を模した球状氷・岩石混合標的に対して衝突速度1~6 km/sで衝突実験を行い,多孔質氷天体の衝突破壊強度に対する岩石混合の影響をその混合率が30 wt%の場合について明らかにした.
1. 背景
氷天体は原始太陽系外縁部で形成された始原的な天体であり,主にH2O氷と岩石によって構成される.熱進化段階に応じて内部構造や空隙率が異なることが知られており,十分な熱進化を経験していない天体は圧縮焼結が進行せず,多孔質で均質な内部構造を有する.一方で,十分な熱進化を経験した天体は焼結コアや融解に伴う重力分離を経験して層構造を形成すると考えられている.
惑星形成過程では,多数の微惑星が衝突破壊と再集積を繰り返すことでラブルパイル天体が形成されると考えられている.このことから,現在存在する氷天体は,様々な熱進化段階を経た天体の破壊・再集積の結果として形成された可能性が高い.したがって,氷天体模擬試料を用いた衝突破壊実験は,氷天体の衝突進化過程を理解するうえで重要である.
本研究では,多孔質で均質な内部構造を有する氷天体を模擬した球状の氷・岩石混合試料に対して一連の衝突実験を実施し,岩石の混合が衝突破壊強度に与える影響を定量的に評価した.衝突破壊強度Q*は,最大破片質量が標的質量の半分となるときのエネルギー密度Qによって定義される.エネルギー密度Qは,弾丸の運動エネルギーを弾丸と標的の合計質量で割ったもので定義される.一方,Nakamura et al. (2024)による多孔質氷の衝突破壊実験では,この衝突破壊強度に明確な衝突速度依存性があることが発見されているため,今回は,この衝突破壊強度の速度依存性をスケール則を用いて解析し,多孔質氷標的の結果と比較することで岩石の混合による影響を検討した.
2. 実験手法
2.1 標的
標的の作成および実験後の解析は神戸大学の-15℃の低温室内で行った.氷天体模擬試料として直径60 mmの球形試料を用いた.試料は710 μm以下の氷粒子とモンモリロナイト粉末を岩石混合率30 wt%となるよう均一に混合し,球形のジグに詰めて圧縮して作成した.圧縮後,試料は冷凍庫で2~3日焼結させた.実験直前に測定した質量と直径から計算すると,試料の空隙率は44.6%であった.
2.2 衝突実験
衝突実験は神戸大学および宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃を用いて行った.神戸大学では直径2 mmおよび4.7 mmのポリカーボネート球を弾丸として用い,衝突速度を0.97~6.17 km/s の範囲で系統的に変化させて実験を行った.弾丸は,真空チャンバー内につるされた標的に対して正衝突させた.衝突破壊の様子は,弾道に対して垂直に設置した2つの高速カメラ(1.0×105 fps)で標的の真上と真横から観測した.宇宙科学研究所では直径7 mmのポリカーボネート球の弾丸を用い,衝突速度約1.2 km/s で実験を行った.衝突破壊の様子は,高速カメラ(5.0×105 fps)に加えてフラッシュX線による撮影も行った.チャンバー内に4枚のイメージングプレートを設置し,X線の照射時刻を変化させることで衝突破壊時の内部の様子を可視化した.
3. 実験結果
フラッシュX線の撮影画像から,すべての速度において,弾丸が標的の内部へ潜り込んだ後,標的全体へ亀裂が広がる様子が観測された.
規格化最大破片質量ml/Mtとエネルギー密度の関係から,衝突破壊強度はQ*~136 J/kg と求められた.ここでmlとMtは,それぞれ最大破片と標的初期質量である.しかし,衝突速度1 km/s 付近のデータが他のデータから系統的に外れていたことから,低速度領域では規格化最大破片質量とエネルギー密度の関係に衝突速度依存性が存在すると考えられた.そこでNakamura et al. (2024)と同様の手法により再解析を行った結果,すべてのデータを単一のべき乗則で良くフィッティングすることが可能であった.この解析により,任意の衝突速度における衝突破壊強度の推定が可能となった.そこで衝突速度領域(1~6 km/s)において,本研究の氷・岩石混合標的とNakamura et al. (2024)における多孔質氷標的の衝突破壊強度を比較した.その結果,岩石混合率30 wt%の氷・岩石混合試料は,多孔質氷標的と比べて約30%低い衝突破壊強度を示した.すなわち,岩石が混合されることにより破壊されやすくなることが明らかとなった.また,エネルギー密度の増加とともに最大破片が小さくなりやすいということが明らかになった.
高速カメラとフラッシュX線の画像から,標的上で衝突点の対蹠点にあたる反対点から放出される破片の速度を計測した.この反対点速度と規格化最大破片質量の関係を調べると,規格化最大破片は,反対点速度の増加に伴い,べき関数的に減少した.反対点速度は,その付近の衝突応力に比例することが知られているので,規格化最大破片は反対点応力と良い相関があることが分かった.
1. 背景
氷天体は原始太陽系外縁部で形成された始原的な天体であり,主にH2O氷と岩石によって構成される.熱進化段階に応じて内部構造や空隙率が異なることが知られており,十分な熱進化を経験していない天体は圧縮焼結が進行せず,多孔質で均質な内部構造を有する.一方で,十分な熱進化を経験した天体は焼結コアや融解に伴う重力分離を経験して層構造を形成すると考えられている.
惑星形成過程では,多数の微惑星が衝突破壊と再集積を繰り返すことでラブルパイル天体が形成されると考えられている.このことから,現在存在する氷天体は,様々な熱進化段階を経た天体の破壊・再集積の結果として形成された可能性が高い.したがって,氷天体模擬試料を用いた衝突破壊実験は,氷天体の衝突進化過程を理解するうえで重要である.
本研究では,多孔質で均質な内部構造を有する氷天体を模擬した球状の氷・岩石混合試料に対して一連の衝突実験を実施し,岩石の混合が衝突破壊強度に与える影響を定量的に評価した.衝突破壊強度Q*は,最大破片質量が標的質量の半分となるときのエネルギー密度Qによって定義される.エネルギー密度Qは,弾丸の運動エネルギーを弾丸と標的の合計質量で割ったもので定義される.一方,Nakamura et al. (2024)による多孔質氷の衝突破壊実験では,この衝突破壊強度に明確な衝突速度依存性があることが発見されているため,今回は,この衝突破壊強度の速度依存性をスケール則を用いて解析し,多孔質氷標的の結果と比較することで岩石の混合による影響を検討した.
2. 実験手法
2.1 標的
標的の作成および実験後の解析は神戸大学の-15℃の低温室内で行った.氷天体模擬試料として直径60 mmの球形試料を用いた.試料は710 μm以下の氷粒子とモンモリロナイト粉末を岩石混合率30 wt%となるよう均一に混合し,球形のジグに詰めて圧縮して作成した.圧縮後,試料は冷凍庫で2~3日焼結させた.実験直前に測定した質量と直径から計算すると,試料の空隙率は44.6%であった.
2.2 衝突実験
衝突実験は神戸大学および宇宙科学研究所の二段式軽ガス銃を用いて行った.神戸大学では直径2 mmおよび4.7 mmのポリカーボネート球を弾丸として用い,衝突速度を0.97~6.17 km/s の範囲で系統的に変化させて実験を行った.弾丸は,真空チャンバー内につるされた標的に対して正衝突させた.衝突破壊の様子は,弾道に対して垂直に設置した2つの高速カメラ(1.0×105 fps)で標的の真上と真横から観測した.宇宙科学研究所では直径7 mmのポリカーボネート球の弾丸を用い,衝突速度約1.2 km/s で実験を行った.衝突破壊の様子は,高速カメラ(5.0×105 fps)に加えてフラッシュX線による撮影も行った.チャンバー内に4枚のイメージングプレートを設置し,X線の照射時刻を変化させることで衝突破壊時の内部の様子を可視化した.
3. 実験結果
フラッシュX線の撮影画像から,すべての速度において,弾丸が標的の内部へ潜り込んだ後,標的全体へ亀裂が広がる様子が観測された.
規格化最大破片質量ml/Mtとエネルギー密度の関係から,衝突破壊強度はQ*~136 J/kg と求められた.ここでmlとMtは,それぞれ最大破片と標的初期質量である.しかし,衝突速度1 km/s 付近のデータが他のデータから系統的に外れていたことから,低速度領域では規格化最大破片質量とエネルギー密度の関係に衝突速度依存性が存在すると考えられた.そこでNakamura et al. (2024)と同様の手法により再解析を行った結果,すべてのデータを単一のべき乗則で良くフィッティングすることが可能であった.この解析により,任意の衝突速度における衝突破壊強度の推定が可能となった.そこで衝突速度領域(1~6 km/s)において,本研究の氷・岩石混合標的とNakamura et al. (2024)における多孔質氷標的の衝突破壊強度を比較した.その結果,岩石混合率30 wt%の氷・岩石混合試料は,多孔質氷標的と比べて約30%低い衝突破壊強度を示した.すなわち,岩石が混合されることにより破壊されやすくなることが明らかとなった.また,エネルギー密度の増加とともに最大破片が小さくなりやすいということが明らかになった.
高速カメラとフラッシュX線の画像から,標的上で衝突点の対蹠点にあたる反対点から放出される破片の速度を計測した.この反対点速度と規格化最大破片質量の関係を調べると,規格化最大破片は,反対点速度の増加に伴い,べき関数的に減少した.反対点速度は,その付近の衝突応力に比例することが知られているので,規格化最大破片は反対点応力と良い相関があることが分かった.
