講演情報

[PPS04-P07]多孔質小惑星の斜め衝突における角運動量輸送効率の標的強度依存性

*大西 彩華1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、大川 初音1、柿木 玲亜1、豊嶋 遥名1、菊川 涼介1、澤 みゆう1 (1.国立大学法人神戸大学)

キーワード:

小惑星、衝突実験、惑星科学、クレーター形成

近年多数発見されている地球近傍天体(NEO)の衝突リスクを回避するため、2022年、NASAにより、探査機を衝突させ軌道を変化させるDARTミッションが実証された。DARTの手法を他のNEOにも応用するためには、衝突により小惑星の軌道がどのように変化するのか、様々な衝突条件で調べることが重要である。小惑星の公転軌道には、ヤルコフスキー効果を通して自転周期や小惑星の形状の変化も影響する。先行研究では、岩石質の小惑星を模擬した標的に対する衝突実験が行われ、その衝突時の並進運動に関する運動量輸送効率や自転に関する角運動量輸送効率について調べられているのに対し、Ryuguのような低強度のラブルパイル天体を模擬した実験はほとんど行われていない。そこで本研究では、低強度の多孔質小惑星を模擬した標的に対し高速度衝突実験を行い、衝突による標的の並進運動、回転運動、そしてクレーター形成による形状の変化について標的強度依存性を調べた。

実験には神戸大学の横型二段式軽ガス銃を使用し、標的には粒径100μmの石英砂と石膏を混合した直径60mmの球(引張強度:59kPa,218kPa, 866kPa, 1.2MPa, 2.1MPa の5種類)を使用した。弾丸は直径2mmのポリカーボネート球、衝突速度は1km/sとし、衝突角度を正面衝突に近い2°から斜め衝突の80°まで変化させた。球標的は破片回収用のアクリルボックスに吊るし、任意の角度で衝突できるよう調整した。アクリルボックスは真空チャンバー内に設置し、チャンバー内の圧力を20Pa程度に引いたあと、衝突実験を実施した。すべての実験において、衝突の様子を水平方向・垂直方向の2方向から高速度カメラを用いて、10⁵fpsで撮影した。

実験の結果、弾丸進行方向の運動量輸送効率は正面衝突のとき、1.3から1.8へと強度が下がると増加した。また50°までの斜め衝突でも、強度が弱いほど効率は高かった。これは、低強度の標的ほど、衝突時に形成されるクレーターが大きく、放出されるエジェクタの量及び運動量が大きいからだと考えられる。例えば、59kPaの標的にできるクレーターのサイズは2.1MPaにできるものの3倍以上であった。従って、弾丸進行方向とは逆向きに大きな運動量を持ち、その反作用として標的を弾丸進行方向へより強く加速させたと考えられる。
衝突後の標的角速度は、衝突角度〜50°でピークを持ち、強度が下がるとそのピーク角度が正面衝突寄りに変化した。これは、低強度の標的では、高強度の標的よりもエジェクタカーテンの先端コーンの角度が大きく、より浅い衝突角度の段階からエジェクタが標的の回転と同じ向きに噴出する割合が多くなり、その分多くの角運動量を持ち去ったことが原因だと考えられる。
角運動量輸送効率は、運動量輸送効率とは反対に、浅い角度の斜め衝突である衝突角度15°では標的強度が下がると1 から0.6まで減少した。また、衝突後の角運動量輸送効率は、衝突角度15°から80°まで増えると単調にほぼ0まで減少した。強度が下がると角運動量輸送効率は全体的に減少するが、かすめるような衝突(>80°)では、すべての強度の標的で0に近づくように見えた。
実験後、標的を回収して表面に形成されたクレーターの形状の3次元形態をX線CTで調べた。その結果、球面上に形成されたクレーターは、標的強度が下がると半径・深さともに増加した。また、正面衝突に近いほど深いクレーターが形成された。しかしながら、クレーター半径については、1.2MPa, 2.1MPaの標的では、明確な衝突角度依存性は見られなかった。この2つの高強度の標的では、斜め衝突であっても衝突速度の標的表面に垂直な速度成分だけでなく、水平成分も重要な役割を果たすことが分かった。59kPaの標的では、正面衝突では最大半径とならずに、角度の増加と伴に衝突角度24°付近で最大半径を示した。その後、角度の増加と伴に半径は小さくなった。このようなクレーター半径の複雑な衝突角度依存性には、斜め衝突により発生するせん断応力がクレーター形成に重要な役割を果たしている可能性がある。