講演情報
[PPS04-P09]溶融玄武岩標的への衝突によるクレーター形成と液滴生成に関する実験的研究
*羽原 千就1、荒川 政彦1、保井 みなみ1、大川 初音1、生駒 杏1 (1.国立大学法人神戸大学)
キーワード:
マグマオーシャン、コンドリュール、クレーター、天体衝突
惑星科学の重要課題であるコンドリュール(数100 μmの球状粒子)の起源解明は,惑星形成の初期環境を知る鍵となる。このコンドリュールは,太陽系最古の固体(CAI)形成から100~400万年後の短期間に生じたとされるが(Pape et al., 2019),当時の原始太陽系星雲には26Al崩壊熱によって内部が溶融した微惑星が多数存在していたと考えられている。
スプラッシュモデルは,溶融した微惑星同士がそれらの脱出速度程度の低速で衝突し(約30-100m/s),飛び散ったマグマが表面張力により液滴化してコンドリュールになるという仮説である(Asphaug et al., 2011)。このモデルでは単純化した数値シミュレーションによる検証のみであり,詳細なモデル化や対応したマグマの衝突実験は行われていない。そのため,実際にコンドリュールサイズの固体球が生じるかどうかは疑問視されている。
そこで本研究では,溶融微惑星の内部マグマを模擬した溶融玄武岩標的への衝突実験を行った。そして,衝突速度および標的温度がクレーター形成とその緩和過程,ならびに液滴噴出にどのような影響を及ぼすのかを実験的に明らかにした。
標的試料には玄武岩質砂である富士砂(かさ密度1.18 g/cm3)を用いた。グラファイトるつぼ(外側は断熱用MgO管)に試料を入れ,誘導加熱装置により1200〜1250℃で完全溶融させた。標的温度は50℃刻みで変化させ,二色放射温度計を用いて表面温度を測定した。標的の粘性率はIshibashi & Amano (2017)の組成に基づき, Giordano et al. (2008)のモデルを用いて推定した。
衝突実験には神戸大学の縦型一段式火薬銃を用いた。実験チャンバー内に標的を設置し,大気圧下で低速(~50m/s)と中速(~300m/s)の衝突実験を行った。なお,真空下での実験はメルト内部の蒸気圧によりマグマがドーム型に変形したために断念した。弾丸は,低速では内部に鉄球(直径5mm)を含んだアルミニウム円柱(直径7mm,高さ10mm)を,中速ではポリカーボネート球(直径7mm)を用いた。衝突の様子は水平方向と斜め上方向から高速度カメラを用いて撮影をした。回収した噴出物を実体顕微鏡で観察して液滴の存在を調べた。
低速衝突では,標的表面温度が1350℃以上でリムがめくれ上がるクレーター地形が形成されたが,1300℃ではリムがなめらかな窪地地形ができた。これによって,1300~1350℃(粘性率21~11Pa・S)で窪地とクレーターの境界があることがわかった。中速衝突でも1200~1300℃(101~21Pa・S)で窪地ができたことから,1300℃以下では衝突エネルギーが10倍増加しても,粘性率の影響でクレーターとならずに窪地となることがわかった。
1300℃以上で形成されたクレーターは,その後,時間と伴に浅く,小さくなり,最終的には重力緩和により平面へと戻る。この緩和過程を調べるため,高速カメラの画像を解析して,緩和時間とクレーター直径の関係を調べた。その結果,クレーター直径Dは,D∝exp(-t/τ)の指数関数で表されることがわかった。緩和時間τは,1350℃では0.26s,1400℃では0.31sとなり,単純なクレーターの緩和過程モデルである, τ=η/ρgD (η:粘性率,ρ:密度,g:重力加速度)より一桁長くなった。このことから粘性率の過小評価が考えられ,組成(SiO2)の不一致や結晶析出の影響が考えられる。
衝突後のクレーター形成に伴う噴出物を回収して顕微鏡下で観察した。その結果,低速度では直径80~200μm,中速度では30~60μmのガラス玉が確認され,速度が速くなるとガラス玉の最大径が小さくなった。Pilch & Erdman (1987)により提案された空気抵抗による液体の分裂と液滴の形成を表す理論式を用いると,粘性率が一定の場合(試料温度が一定),速度と伴に液滴のサイズは小さくなることが示されている。したがって,今回回収したガラス玉は,クレーター形成に伴うエジェクタカーテンが空的抵抗により分裂して生じたと考えると矛盾しない結果となった。この結果は,溶融した内部を持つ微惑星が,相互衝突によりマグマのエジェクタカーテンが発生した時,星雲ガスによる動圧でコンドリュールサイズの液滴の生成が期待されるというスプラッシュモデルを排除しないことが分かった。
参考文献: Pape et al. (2019) Geoch. Cosmo. Acta 244, 416–436; Asphaug et al. (2011) Planet. Sci. J. 2, 200; Giordano et al. (2008) EPSL 271, 123–134; Ishibashi & Amano (2017) report (Shizuoka Univ.), 44, 17–29; Pilch & Erdman (1987) Int. J. Multi. Flow, 13, 741–757.
スプラッシュモデルは,溶融した微惑星同士がそれらの脱出速度程度の低速で衝突し(約30-100m/s),飛び散ったマグマが表面張力により液滴化してコンドリュールになるという仮説である(Asphaug et al., 2011)。このモデルでは単純化した数値シミュレーションによる検証のみであり,詳細なモデル化や対応したマグマの衝突実験は行われていない。そのため,実際にコンドリュールサイズの固体球が生じるかどうかは疑問視されている。
そこで本研究では,溶融微惑星の内部マグマを模擬した溶融玄武岩標的への衝突実験を行った。そして,衝突速度および標的温度がクレーター形成とその緩和過程,ならびに液滴噴出にどのような影響を及ぼすのかを実験的に明らかにした。
標的試料には玄武岩質砂である富士砂(かさ密度1.18 g/cm3)を用いた。グラファイトるつぼ(外側は断熱用MgO管)に試料を入れ,誘導加熱装置により1200〜1250℃で完全溶融させた。標的温度は50℃刻みで変化させ,二色放射温度計を用いて表面温度を測定した。標的の粘性率はIshibashi & Amano (2017)の組成に基づき, Giordano et al. (2008)のモデルを用いて推定した。
衝突実験には神戸大学の縦型一段式火薬銃を用いた。実験チャンバー内に標的を設置し,大気圧下で低速(~50m/s)と中速(~300m/s)の衝突実験を行った。なお,真空下での実験はメルト内部の蒸気圧によりマグマがドーム型に変形したために断念した。弾丸は,低速では内部に鉄球(直径5mm)を含んだアルミニウム円柱(直径7mm,高さ10mm)を,中速ではポリカーボネート球(直径7mm)を用いた。衝突の様子は水平方向と斜め上方向から高速度カメラを用いて撮影をした。回収した噴出物を実体顕微鏡で観察して液滴の存在を調べた。
低速衝突では,標的表面温度が1350℃以上でリムがめくれ上がるクレーター地形が形成されたが,1300℃ではリムがなめらかな窪地地形ができた。これによって,1300~1350℃(粘性率21~11Pa・S)で窪地とクレーターの境界があることがわかった。中速衝突でも1200~1300℃(101~21Pa・S)で窪地ができたことから,1300℃以下では衝突エネルギーが10倍増加しても,粘性率の影響でクレーターとならずに窪地となることがわかった。
1300℃以上で形成されたクレーターは,その後,時間と伴に浅く,小さくなり,最終的には重力緩和により平面へと戻る。この緩和過程を調べるため,高速カメラの画像を解析して,緩和時間とクレーター直径の関係を調べた。その結果,クレーター直径Dは,D∝exp(-t/τ)の指数関数で表されることがわかった。緩和時間τは,1350℃では0.26s,1400℃では0.31sとなり,単純なクレーターの緩和過程モデルである, τ=η/ρgD (η:粘性率,ρ:密度,g:重力加速度)より一桁長くなった。このことから粘性率の過小評価が考えられ,組成(SiO2)の不一致や結晶析出の影響が考えられる。
衝突後のクレーター形成に伴う噴出物を回収して顕微鏡下で観察した。その結果,低速度では直径80~200μm,中速度では30~60μmのガラス玉が確認され,速度が速くなるとガラス玉の最大径が小さくなった。Pilch & Erdman (1987)により提案された空気抵抗による液体の分裂と液滴の形成を表す理論式を用いると,粘性率が一定の場合(試料温度が一定),速度と伴に液滴のサイズは小さくなることが示されている。したがって,今回回収したガラス玉は,クレーター形成に伴うエジェクタカーテンが空的抵抗により分裂して生じたと考えると矛盾しない結果となった。この結果は,溶融した内部を持つ微惑星が,相互衝突によりマグマのエジェクタカーテンが発生した時,星雲ガスによる動圧でコンドリュールサイズの液滴の生成が期待されるというスプラッシュモデルを排除しないことが分かった。
参考文献: Pape et al. (2019) Geoch. Cosmo. Acta 244, 416–436; Asphaug et al. (2011) Planet. Sci. J. 2, 200; Giordano et al. (2008) EPSL 271, 123–134; Ishibashi & Amano (2017) report (Shizuoka Univ.), 44, 17–29; Pilch & Erdman (1987) Int. J. Multi. Flow, 13, 741–757.
