講演情報

[PPS04-P13]熱進化した層構造を持つ氷微惑星の衝突破壊強度に関する実験的研究

*﨑村 達也1、保井 みなみ1、大川 初音1、柿木 玲亜1、大橋 拓磨1、荒川 政彦1、長谷川 直2、山本 裕也2 (1.神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2.宇宙航空研究開発機構(宇宙科学研究所))

キーワード:

衝突破壊、層構造

太陽系外縁部での氷微惑星の衝突進化過程を明らかにするためには、氷微惑星の衝突破壊強度を知る必要がある。衝突破壊を経た微惑星の生き残りである小惑星や彗星は、惑星形成の記録を未だ保持しており、それらの起源と進化を知ることは、惑星形成過程を紐解くために重要である。なかでも小惑星リュウグウは、有機物と粘土鉱物を豊富に含んだ衝突破片の再集積で形成されたラブルパイル天体である。そのことから、母天体は放射性熱源や衝突加熱による氷の融解を経験したと考えられている。融解した水とケイ酸塩鉱物が水質変成を経て含水ケイ酸塩鉱物となり、重力分離を起こして微惑星の中心に集まったと考えられる。その結果、粘土鉱物から成るコアと氷マントルの二層構造を持つ氷微惑星になったと推測されている。そのような層構造を持つ熱進化した氷微惑星の衝突破壊強度と衝突後に形成されるラブルパイル天体のコア破片とマントル破片の比を調べることは興味深い。

 これまでの衝突破壊実験では、均質構造天体の模擬試料を標的としたものが多かった。本研究では、熱進化したコア・マントル層構造を持つ氷微惑星の模擬試料への衝突実験を行い、層構造が衝突破壊に及ぼす影響を調べた。標的試料には、直径60mmのコア・マントル構造を持つ試料を用い、2種類のコアサイズ(直径30, 40mm)の層構造球を用意した。なお、氷の融解を経験した微惑星を模擬するため、マントル部分には空隙率40%の多孔質氷、コア部分にはベントナイト粉末とシリコンオイルからなる粘土を用いた。衝突実験には、神戸大学及び宇宙科学研究所の横型二段式軽ガス銃を使用した。衝突速度は1~7km/s、弾丸には直径2mm, 4.7mm, 7mmのポリカーボネート球を用いた。全ての実験は高速カメラによって撮影し、宇宙科学研究所での実験ではそれに加えて、フラッシュX線による標的内部の観測も行った。

 実験の結果、最大破片は、エネルギー密度の増加に伴い、(1)コア周囲にマントルが残存する破片、(2)コアがクレータリングを受けた破片、(3)コアが破砕した破片、と変化していくことがわかった。すなわち、最大破片はすべてコアから生じていることが分かった。また、規格化最大破片質量は、エネルギー密度と規格化マントル厚みtm/dp(マントル厚みを弾丸サイズで規格化)によって決まることがわかった。エネルギー密度が同程度の場合、規格化マントル厚みが大きくなるほど規格化最大破片質量は大きくなった。この結果は、弾丸がマントルに貫入した後、速度は急速に減衰し、コアに直接衝突する速度は低下する。その結果、コアを破砕することができなくなると思われる。

 そこでまず粘土球単体への衝突実験を行い粘土球の規格化最大破片とエネルギー密度の関係を決定した。次にマントルにより弾丸速度が減衰してコアに衝突することを仮定して、コアに与えられる運動エネルギーを計算し、コアの質量で割ることで有効エネルギー密度(Qc_eff)を定義した [1]。速度の減衰は、次の式のようにマントルの規格化距離で指数関数的に起こると仮定した。v=vi exp(-k(tm/dp))、ここでviは初期速度、tmはマントル厚さ、dpは弾丸直径、kは実験で決まる定数である。この式を用いてQc_effを導出すると次のようになる。
   
Qc_eff = Qc_0 exp[−k′(tm/dp)]. [1] 

k’が1の時、コアの規格化最大破片質量と有効エネルギー密度の関係を最も良く一つのべき乗則でスケーリングすることができた[2]。すなわち、Qc_effは、粘土単体と異なるマントル厚みを持つ層構造標的中のコアの破壊の程度をスケーリングできる。

ml_c / Mt_c = 10^(3.269±0.348) Qc_eff^(−1.149±0.103). [2]

微惑星衝突では天体の内部構造や衝突体サイズが多様であるので、層構造や弾丸サイズを考慮した本スケール則は、より現実的な衝突破壊過程の理解に重要である。

 またマントルの破壊に関して、規格化マントル最大破片質量は、反対点速度と非常に良い相関があることが分かった。反対点速度は、その場所で発生した衝突応力に比例するため、マントルの最大破片は、反対点応力と相関が強いことが分かる。この衝突応力をとすると次のべき乗によってスケーリングすることができる[3]。

ml_m / Mt_m = 10^(2.729±0.245) σLt^(−1.256±0.08). [3]