講演情報

[PPS04-P14]内海を持つ氷衛星に形成される貫通クレーターに関する実験的研究

*菊川 涼介1、保井 みなみ1、大川 初音1、荒川 政彦1 (1.神戸大学)

キーワード:

衝突実験、氷衛星、クレーター

太陽系には、エウロパやエンセラダスのような内海を有する氷衛星が存在すると言われており、この内海は生命の起源に関連する化学進化が起こりうる重要な環境であるため、ハビタブル惑星として大きな注目を集めている。
これらの氷衛星上には様々な表面地形が見られるが、その一種であるクレーターの深さ/直径比は内部構造の影響を受けると考えられている。また、特徴的な表面地形として知られるカオス地形は、小天体の衝突による氷地殻の貫通が形成した地形である可能性が指摘されている。以上のように、内海を覆う氷地殻上の地形を検討する上では、小天体の衝突により生まれるクレーターとそれに伴う貫通の有無に関して理解することが重要である。
そこで、本研究では、内海を模擬した物質(シリコンオイル、15%食塩水)を覆う氷板への高速度衝突実験を行い、氷板へのクレーター形成に対する内海(液体)の影響と弾丸が氷板を貫通する境界条件を調べた。全ての実験は、-15℃の低温室内で実施した。ここで、内海模擬物質としてシリコンオイルと15%食塩水を使用したのは、-15℃の低温室内で凍結しない液体を用いるためである。実験では、内海模擬物質を覆う氷の厚みと衝突速度、及び内海模擬物質の温度を変化させた。また、比較のために液体を持たない氷板単体への衝突実験も行った。
衝突実験は神戸大学の横型2段式軽ガス銃を用いて行った。標的は氷板単体標的と氷-液体層構造標的の2種類を準備した。氷-液体層構造標的は氷板をアクリルボックスに固定した後、アクリルボックス内を液体で満たして作成した。氷板の厚みは2.4~20.1mmで、弾丸は直径1mmのアルミ球、衝突速度は1km/s、2km/sで実験を行った。
実験の結果、氷板単体標的、氷-液体層構造標的の表側スポール直径の間にはほとんど差異はないことが分かった。また、氷-液体層構造標的では、表側スポール直径は内海模擬物質の温度増加に伴い増加することが分かった。一方、氷-液体層構造標的における裏側スポール直径は、同速度では氷板単体標的より小さくなることが分かった。
衝突速度1km/sでの氷板単体標的と氷-液体層構造標的の貫通-非貫通境界の氷板厚みを比較すると、氷板単体標的の方がより厚い氷を貫通することが可能であることが分かった。この差異は、裏側スポール直径の違いに起因すると考えられる。弾丸の衝突による衝撃波を三角波で仮定すると、氷板単体標的では、氷-真空の境界面において入射波と等しい大きさの引張の波が反射することで裏側スポール直径が大きく成長するため、より深い所まで掘削される。そのため、氷板単体標的における貫通-非貫通境界の氷板厚みはより厚くなると思われる。一方、氷-液体層構造標的では、氷板背面の液体の存在により、氷板裏面において反射する引張の波は弱まり、裏側におけるスポレーションが抑えられ、貫通-非貫通境界の氷板厚みはより薄くなる。
ここまでの実験の結果、貫通-非貫通境界での反対点圧力は86.7〜126MPaであることが分かった。一方、内海模擬物質の温度がより高い場合には、貫通可能な氷板厚みはより厚くなった。従って、実際の氷衛星においては、内海と氷地殻の境界面が0℃に近いことを考えると、貫通-非貫通境界にあたる反対点圧力は今回算出したものより小さくなり、より厚い氷地殻や低エネルギーの衝突でも貫通可能である可能性が示唆された。